影の声

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小学校の帰り道、
ガチャポンのカプセルを寺田川に架かる温泉橋から一斉に落として誰が一番早いか競争をした。
「いでゆ橋まで競走だ」
赤と透明のカプセルがK君、白と透明のカプセルがA君、青と透明のカプセルがY君、黄と透明のカプセルが僕だ
カプセルは一斉にスタート、川の中島を二手に分かれて、赤が草むらにひっかかる。
川の流れが変わるとまたコースに戻る。
滝つぼに嵌ると浮いたり沈んだり抜け出せなくなる。
川の流れは複雑で毎日、誰かが交代で優勝できた、勝った人が誰かを指名してカバン持ちをさせることができる罰ゲーム付きだった。
A君が「ぷくぷく大戦争」と名付けた多いい時には10人で競走したこともある。
今日の勝ちは青のY君だった。
Y君は僕にランドセルを渡した。とても重かった。
Y君が今日は、下流の大川橋まで行こうよ。第二レーススタート。
川は寺田側から大川の本流に流れ込んだ、川幅も広くカモやアヒルがカプセルの行く手を阻んだ。
カプセルは大川端の下差し掛かった。
今度はK君の勝ち、K君は自分のランドセルの上に僕のランドセルにY君のランドセルを肩ベルトで連結してY君に背負わせた。
そしてみんな帰ることにした。100m位歩くとY君は目に涙を浮かべていた。
「K君もうカバン持ち終わりにしようよ」
と僕は叫んだ。
「おう、」
Y君にランドセルを返すとY君は何も言わずに走り出した。
夕日が沈むころ、残された3人の影が、銀行の白い壁に長く映し出されていた。
走り出すY君には影が無いように見えた。
次の日学校に行くと担任の先生から、Y君が家庭の事情で転校したと聞かされた。
今日も何時もの仲間で学校の帰りにぷくぷく大戦争をやった。
昨日と同じ大川橋まで競走をした。
Y君の代わりに青と透明のカプセルも用意して一緒に流した。
黄色と透明の僕のカプセルが勝った。
銀行の白い壁に長く映し出されていた影は4人に見えた。
影が云った「またいつか会おうぜ」
Y君の声が聞こえた。

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