アカデミック考察(その10)トービンのq理論での最適投資額の決定方法とは?

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トービンのq理論は、投資理論で用いる現在の概念であるqを求める投資の決定理論です。

qは、現在投資を増やした時に現在から将来に渡って得られる投資の限界収入の割引現在価値を、投資を増やすことでかかる設備投資コスト(投資の限界費用)で割ることによって求めます。式に表すと、下記のようになります。

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引用:山上秀文、吉野直行『金融経済 第3版』慶應義塾大学出版会(2017年)

qは、投資の限界収入の割引現在価値が投資の限界費用より大きい場合に1より大きくなる一方、投資の限界収入の割引現在価値が投資の限界費用を下回る場合に1より小さくなります。1より大きければ、保有する資本ストックを増加させて生産する方が将来的に得られる限界収入が大きくなるため、企業は新たな投資を行います。対して、1より小さければ、資本ストックの増加は負債としてのしかかり限界収入が減るため、企業は資本ストックを減らすようなマイナスの投資を行うことになります。

他方で、qが1の場合は、投資の限界収入の割引現在価値と投資の限界費用が均衡している状態です。投資の限界収入の割引現在価値から投資の限界費用を引いたものがちょうど0になる均衡状態は、利潤が極大化している点であるほか、トービンのq理論での最適投資額と定義されます。この最適投資額を図に表すと、次のようになります。原点に対して凸の曲線が投資の限界収入の割引現在価値を表す曲線Pf’(kt)/r、x軸のItが投資数量、y軸のPtが投資の限界費用、x軸に対して水平の直線が投資の限界費用の曲線です。

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引用:山上秀文、吉野直行『金融経済 第3版』慶應義塾大学出版会(2017年)

図をみると、投資の限界収入の割引現在価値を表す曲線と、投資の限界費用曲線の交点がq=1であることがわかります。したがって、最適投資額は、交点での限界費用P1と、交点から真下に降ろしたI1の掛け算によって決まります。

上記のように、アカデミックレポートの例文制作を手掛けています。経済学を中心に対応いたしますので、お気軽にお声がけください。

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