アパートの売却が難しい売主など

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投資対象としてアパートのような不動産、賃貸収入を得ようと考える人は一定数います。単に貸主として所有し、入金管理等を不動産会社に依頼しているケースであれば、そのまま売却できます。

貸主と借主との賃貸借契約、管理委託契約のみだからです。
管理を引き継ぐかどうかは、新所有者と管理会社との問題であり、売主には関係がありません。

通常の売却ができる場合、現在の賃料収入等の収益の総額から、支出する費用を控除した純粋な収益から逆算して購入金額を決めることになります。
収益還元法(DCF)です。
俗にレントロールと呼ばれる資料を基に判断していきます。
あとは利回り等が買主の希望条件に合致するかどうか、です。

ただし、このレントロールも注意が必要な場合が多いです。
見せかけの収支を繕っているケースが多々あるからです。
実際の契約内容を知り、正しく検討する必要があります。

その検討以前の問題になる事例があります。
サブリース(転貸借)契約の場合です。

聞こえの良い言葉が流行りました。
一括借り上げ、30年間家賃保証、などです。
数年前に法改正が実施されたことで、CM等では全く聞かなくなりました。
法改正前までは、不動産投資用の本も多数ありました。

面倒な契約手続きもなく、家賃保証付きだから安心だ、のような表現です。
今は、聞くことがありません。
当時、言いたい放題言っていた著者たちは、いまごろ何を思っているのでしょうか。

不動産投資で最も重要なことを忘れているからです。
保有すること、ではありません。
相続でもありません。

「適正価格で売れるかどうか」です。

最終出口、売却ができるかどうか、が非常に重要になります。
今日も相談者が来られました。
相談内容は、夫が建てたアパートを売りたい、でした。

普通なら売却依頼を受けます。
必要な調査に入ります。

しかし、初めに尋ねました。
サブリース契約ではないか、についてです。
聞いた理由は、建物がCMで知られている会社だったからです。

やはりサブリース契約でした。
相談者は、契約内容を全く理解していないようでした。
一括借り上げ、サブリースでも簡単に売却できると思っていたようです。

管理を委託しているのではなく、その会社が借主となり転貸借をしています。
借主なので、借地借家法が適用になります。
このせいで、普通の売却が難しくなります。

サブリースの内容を引き継がないといけないからです。

転借人が転貸人に支払う賃料の、よくて8割が賃貸人の賃料になることが多いです。しかも、賃料は減額が普通に通ります。

家賃保証と言えば聞こえは良いですが、単なる賃料の中抜きです。
しかも賃借人の地位を得ているので、法律上は強く保護されます。
法という錦の御旗を持った盗賊とも言えます。

減額された賃料を基に、収益還元法で価格を出すことになります。
売れる利回りでないと、見向きもされません。
すると、ただでさえ低い収入を、高い利率で計算しないといけなくなります。
結果、売却できそうな価格は、かなり低くなります。

ここに借り入れがあった場合、売れたとしても赤字になる可能性もあります。
残債務に売却金額が足りない場合、補填しないといけません。
できない場合、抵当権を抹消できません。

サブリース契約を解除し、転借人の賃料を満額得ることができれば、売却価格は上がります。
しかし、サブリース会社は「解約できない、解約する場合、高額の立退料を求める」ことが常です。
だから私は、錦の御旗を掲げた盗賊と思っています。

売りたくても、売れない。
法によって正当事由が必須になります。
これが非常に厄介です。

多数のアパートが存在しています。
CMで聞いたことがある会社の場合、サブリースになっていることが多いです。
すると、一定の年齢等になり、売却しようと考えたときに苦労が始まります。
本当に良かったと思うケースは、相当に少ないと感じます。

サブリースの条件として強制的な改装工事が必須になっていることがあります。しかも指定業者のみ、です。
やっと収益になるかと思った時に、根こそぎ持って行かれるケースがあります。
建てたことを後悔する事例です。

特に地方の場合、農地を転用して建てることが多いです。
売るときに、ようやく気付く人もいます。
土地活用どころか、先祖からの土地も失うことにです。

何も建てなかった土地のほうが、普通に売却できます。
建物があることで、苦しむことがあります。
解体すればいい、ではありません。
入居者が一人でもいれば、壊せません。
しかもサブリースであれば、全ての住戸の借主となるので、全住戸分の退去費用を求められることもあり得ます。

壊すに壊せない。
売るに売れない。
この危険がサブリース契約にはあります。

相続の場合も重要になります。
相続人が共有を選んだ場合、さらに悲惨になることがあります。
目先の収益しか見ない人が共有者になると、ロクなことはありません。

このような内容について、学ぶ機会を義務教育レベルから行うべきと思います。教員が知らない、分からない分野なので、生徒に相談されても回答不能でしょう。

突然、相続は発生します。
アパートを相続した、収益が入ってくる、という良い点だけであれば構いません。しかし、実際は激辛です。

相続してから、「やっぱりいりません、放棄します」はできません。
しかも3か月以内に答えを出す必要があります。
今の法律では、過酷な状況になりやすいと思います。

しかし、事前に一定レベルの学習をしている場合、判断はしやすくなるはずです。相続して良いのかどうか、いつの日か売却可能かどうか、を知っておくことができれば憂いを減らすことができます。

土地活用と言う甘い言葉で建てた場合、売れるかどうかを知るべきです。
売るための事前準備は何か、も必須です。
自分で何もしない、考えない人の場合、必然的にサブリースを選びます。
数年経過してから賃料の減額が始まり、気づき始めます。
赤字になってから売ろうと決心します。
しかし、できません。

こうならないように、学ぶ必要があります。
特殊な算数(高校では数学と言われる内容)、社会では二度と使わないような受験用の知識、これらに多大な費用と労力を割くよりも、実益となる学習をすべきと思います。

家賃保証、一括借り上げが横行した時期の物件が、売却を検討する時期になってきます。築年数が20年以上になると、銀行の融資も厳しくなってきます。
どうやって売るのか、処分するのか、悩む人たちが出てくるはずです。

今の法律を大幅に改正し、賃借人保護を見直すことが必須と思います。




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