古いビルでの火災など

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20年以上前に大阪梅田のビル管理会社に勤務していました。
当時に考えられる最新設備を搭載した30階建てのビルを中心に、
10階建て程度のビルや商業施設、美術館やマンション等の設備管理を
していました。そのときの地味な経験が今、役に立っています。

大阪、北新地付近での放火と思われる火災は、酷い結果になりました。
ニュース等でも色々と報じられています。
最も悪いのは加害者です。

その後は、建物について言われ始めました。
スプリンクラーがないこと、などです。
既存不適格ビル、です。
法令上は適法な物件でした。
間違いではない、が正しいかもしれません。

消防の関係者は費用については一切、考慮しないことが多いです。
所有者は極めて厄介な問題になります。
スプリンクラーをつければいい、という安易な答えにはできないからです。

消火設備=スプリンクラーではありません。
仮に今回のビルにスプリンクラーが設置されていたとします。
スプリンクラー、面倒なのでSPと略します。
SPから何が出てくるのか、が大切になります。

ただの火事、可燃物が燃えている場合であれば、SPから「水」が出てくる
ので消火可能になることが多くなります。
しかし、今回は熱源が違います。
おそらくガソリンです。
黒煙の出方から、ガソリンを強く疑うことができます。

もし、ガソリンを室内で放火された場合、SPから「水」が噴射されると
どうなるのか、です。非常に危険なことになります。
消化できない、むしろ悪化することが考えられます。

可燃性の液体の場合、水での消化は危険です。
ビル管理会社に勤務していた時、駐車場では可燃性の液体を考慮して
「ハロン」または二酸化炭素が消火剤として使用されていました。
年に1回は作動試験があります。
安全を確保して、一定の場所だけ噴射させます。
消化能力は高いです。
ただし、酸欠による人体への被害は深刻です。
避難ができてから使用する消火剤です。

今回の火災では、最も厄介な内容がありました。
避難場所です。
今は義務化されていますので、建築関係者だけではなく、多くの人が
常識として知っている内容です。
「二方向」避難です。

今回のビルは、これがありませんでした。
致命的な内容です。
適法ですが、致命傷になりました。
逃げ場がない、となりました。

バルコニーがある場合、まだ避難できた可能性があります。
バルコニーは、正しくは「避難」バルコニーです。

このビルの窓に、避難バルコニーが作られていれば、内容によっては
救えた人がいると思います。

今回のビルは、一か所しかない出入り口、避難バルコニーもない、という
最悪な条件が揃っていました。逃げようがありません。

今のビルであれば、二方向に避難できるので、助かる可能性は高まります。
SPの中身が水であれば、危険性はありますが、熱源以外には効果が期待できます。防火シャッターがあれば、延焼を防いだり、時間を稼ぐこともできます。
逃げる時間を多く確保できるのが、新しい建物には備わっています。

外部階段さえあれば、大きく結果は変わっていたと感じます。
今回の加害者は、相当に計算された卑怯な犯罪者と思います。

建物内部に、「屋内消火栓」があれば、大きな効果を得られる場合があります。大きなビルでは一人では使用できないタイプが基本になりますが、小さなビルであれば、一人で使用できるタイプがあります。

熱源の温度を下げる、遠ざけることができます。
圧力が高いので、初めて使う人の場合、注意が必要です。
可燃性の液体の場合、消火器が有効です。
ただし、時間が十数秒しか噴射できません。
どこに噴射するかで、効果が変わってきます。

屋内の場合、やはり消火器を一定程度は設置すべきと思います。
極めて初期段階であれば、効果があります。
これは義務化すべきと思います。
設置の義務ではなく、「使用訓練」の義務化です。
実際に使用した経験があること、が大事です。

今回の事故により、おそらく何らかの法改正がされると思います。
自分が関係する建物の構造について、ある程度は知る努力が必要と
思います。
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