富太郎の『ちょこプレ』2024.4.7

記事
コラム
富太郎が、気の向くままに、「ちょこっとプレゼン」させていただきます。
誰かのお役に立てば、幸いです。

今回のお題「未成年者との契約」

 通信販売の購買申込書等で、『未成年者の方のお申込みには、保護者の署名
と印が必要です。』との文言があるのをご存じかと思います。

 これは、未成年者を一律に「制限行為能力者」として、『法定代理人の同意
のない行為』は取り消すことができると定めて、未成年者を保護する規定が
あるためです。

 民法5条 【未成年者の法律行為】
① 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければ
 ならない。ただし、単に権利を得(注:例えば、負担のない贈与を受ける
 こと)、又は義務を免れる法律行為(注:例えば、債務の援助を受けること)
 については、この限りではない。
② 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
③ 第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産
 (注:例えば、学費)は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分
 することができる。目的を定めないで処分を許した財産(注:例えば小遣い)
 を処分するときも、同様とする。

 なお、未成年者が単独でした取消しは、法定代理人の同意を得ていなかった
としても、完全に有効な取り消しとなり、当該取り消しを取り消すことはでき
ません。
 また、法定代理人も未成年者がした取消しのできる行為を、取り消すことが
できます。(民法120条)

 それでは、未成年者が「親の同意を得ている」として、勝手に『保護者署名
押印欄』に記名・押印していた場合は、どうなるのでしょうか?

 民法21条 【制限行為能力者の詐術】
 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるために詐術を用いた
ときは、その行為を取り消すことができない。
 この「詐術を用いたこと」には、法定代理人の同意を得ていると偽った場合
も含まれます。 そして、「制限行為能力者である」ことを理由に、取り消す
ことは、できなくなります。

 また、法定代理人の同意を得ずに未成年者と取引をするリスクとして、司法
書士試験に次のような過去問があります。

 民法 平成19-6-ア
問 未成年者が買主としてした高価な絵画の売買契約を取り消した場合におい
 て、その絵画が取り消し前に天災により滅失していたときは、当該未成年者
 は、売り主から代金の返還を受けることができるが、絵画の代金相当額を
 売主に返還する必要はない。
答 〇 契約は取り消されると遡及的に無効となるため、無効な行為に基づく
 債務の履行として給付を受けたものは、相手方を現状に復させる義務を負い
 ます。(民法121条の2第1項)。 したがって、本肢の未成年者は取消し
 により売主から代金の返還を受けることができます。 一方、未成年者は、
 絵画の代金相当額を売主に返還する必要はありません。 制限行為能力者は
 現存利益の限度で返還の義務を負いますが(121条の2第3項)、絵画が
 取り消し前に天災により滅失しているので、現存利益はないからです。

 不公平な感じがしますが、事程左様に、未成年者は取引上保護されている
のです。

今回は、以上です。 過去のブログも、ぜひご覧ください。   富太郎

★リーガルリテラシーとは、
「自身の身や権利を守るための、最低限の法知識」
 です。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す