富太郎の『ちょこプレ』2024.3.3

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コラム
富太郎が、気の向くままに、「ちょこっとプレゼン」させていただきます。
誰かのお役に立てば、幸いです。

今回のお題「民事訴訟の基本原則」

 犯罪行為を受けたと警察・検察に訴えたり、その告訴は虚偽であると
訴え返したりするのは、「刑事訴訟(裁判)」です。 

 虚偽の訴えによって、「5億円の損害を受けたから賠償金を支払え」
と裁判所に訴え出るのが『民事訴訟(裁判)』です。

 この『民事訴訟』には、基本的な原則があります。
(1) 「訴訟の開始、訴訟物(内容)の特定、訴訟の終了を、当事者(原告と
  被告)の権能とする。」 ⇒ 『処分権主義』といいます。
 ・ 当事者の申し出で、裁判は開始し、裁判の内容も当事者が決め、
  「判決」によらずに、裁判を終わらせることも、当事者はできます。
 ・ 裁判は、当事者の申立事項の範囲でのみ行われ、申立てない事項、
   また、申立事項を超えて裁判をすることは、許されません。
 ・ 裁判所は、頼んだ訴訟物以外について審理してはいけないし、
   頼んだ範囲を超えて、判決を出すことも、できません。
 ・ 「損害賠償は認めない。」という判決は出せますが、5億円の請求に 
   「6億円の損害賠償金を支払え」との判決は、出せないのです。

(2) 「裁判の基礎となる訴訟資料の提出は、当事者の権能かつ責任
  とする。」 ⇒ 『弁論主義』といいます。
 ・ 第1原則:「主張責任」~裁判所は、当事者が主張していない主要事実
    (注)を、裁判所は認定してはならない。 (民事訴訟法246条)
 ・ 第2原則:「自白の裁判所拘束力」~裁判所は、当事者間に争いのない
    主要事実は、証拠調べなしに、そのまま認定しなければならない。
 ・ 第3原則:「職権証拠調べの禁止」~当事者間で争いのある主要事実に
    について証拠調べをするには、原則として、当事者が申し出た証拠に
    よらなければならない。

(注)『主要事実』というのは、「権利の発生・消滅・抑止等の法律効果を定め
  る法規の要件に該当する事実をいいます。『弁論主義』の対象は、この
 『主要事実』のみであり、「間接事実(主要事実の存否を推認させる事実)」
  や、「補助事実(証拠の信用性[証拠力]に影響を与える事実)」は、『弁論
  主義』の対象にはならず、当事者の主張がなくても、裁判官は認定できま
  す。

司法書士試験では、この件に関して次のような出題実績があります。
民事訴訟法 平成11-2
(2) 当事者の申立てがないのに、職権で、当事者本人を尋問することは、
  弁論主義に反する。
 答 × 事件の事実関係については当事者がもっとも熟知しており、事実
  認定に極めて重要な役割を演ずることも少なくないので、(「証人尋問」
  と異なり)当事者の申立てがなくても、職権で当事者本人を尋問すること
  は、弁論主義(第3原則「職権証拠調べ」)に反しない。
(4) 当事者が、ある法規について一致した解釈をしているのに、これと異な
  る解釈に立って判決することは、弁論主義に反する。
 答 × 法解釈については、裁判所の専権事項であって、弁論主義(第2原則
  「自白の裁判所拘束力」)に反しない。
(5) 証拠調べの結果に基づき、いずれの当事者も主張していない主要事実を
  認定することは、弁論主義に反する。
 答 〇 弁論主義の第1原則(「主張責任」)
   例えば、当事者から「時効」の主張がなければ、裁判所は時効と
  わかっていても時効を認定できません。

 このように、「民事訴訟」においては、裁判所は『受け身』の存在であり、
基本、当事者の主張によって裁判の結論は決まっていきます。

今回は、以上です。 過去のブログも、ぜひご覧ください。   富太郎

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