富太郎の『ちょこプレ』2024.2.25

記事
コラム
富太郎が、気の向くままに、「ちょこっとプレゼン」させていただきます。
誰かのお役に立てば、幸いです。

今回のお題「家賃の受領拒否」

 先日、新聞の記事で、京都大学が入居学生を訴えた、キャンパス内にある
現存する日本最古の学生寮1913年(大正2年)築の「吉田寮旧棟」の建物明渡
請求訴訟に関して、京都地裁が「17人中14人の入居継続を認める」という、
請求一部棄却判決が出たと報道されていました。

 勝訴したとはいえ、家賃を払わなければ、債務不履行になるし、払おうと
しても、大学側は受け取らないでしょうし・・・。 法律的には、

民法492条 [弁済の提供の効果]
 債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき
責任を免れる。

民法493条 [弁済提供の方法]
弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。 ただし、
債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を
要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば
足りる。

民法494条 [供託]
① 弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託する
 ことができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は
 消滅する。
 一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
 二 債権者が弁済を受領することができないとき。
② 弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。
 ただし、弁済者に過失があるときは、この限りではない。

入居学生は、大学が家賃を受け取らなくても、『供託』すれば、債務不履行に
ならなくて済みそうです。

実は『供託』法は、司法書士試験の試験科目で、過去に何度かこの件に関する
問題が出題されています。

供託法 平成30-10-4
問 建物賃貸借契約の賃借人が賃貸人から建物明渡請求訴訟を提起されると
 ともに、今後は賃料を受領しない旨をあらかじめ告げられた場合には、
 賃借人は、その後に弁済期の到来した賃料について、現実の提供又は口頭の
 提供をすることなく供託をすることができる。
答 〇 債権者があらかじめ受領を拒んでいるときでも、原則として、まず
 口頭の提供をしなければ、供託をすることができない。 しかし、債権者の
受領しない意思が明確であるような場合においては、口頭の提供をしないで
直ちに供託することができる。 この点、建物の明渡請求があった 場合に
 おいて、あらかじめ賃貸人から賃料の受領を拒否され、目下係争中で ある
 ようなときは、債権者の不受領意思が明確といえる。
 (昭和37.5.31-1485)

供託法 平成17-11-イ
問 供託原因の記載により債権者が受領しないことが明らかな場合であっても
 弁済期を経過した後に弁済供託をするときは、債務者は弁済期から供託の
 日までの遅延損害金を加えて供託しなければならない。
答 × 債務者があらかじめ弁済の受領を拒絶し、その拒絶の意思が強固で、
 たとえ弁済の提供をしても受領しないことが明らかな場合、債務者は弁済の
 提供をすることなく直ちに弁済供託をすることができる(大判大11.10.25)
 そして、このように債権者が受領しないことが明確である場合には、遅延
 損害金を加えて供託する必要はない。(昭和37.5.25-1444) 

震度6で倒壊の危険がある建物とのことですが、何かが起きた時の、責任の
所在が気になるところではあります。

今回は、以上です。 過去のブログも、ぜひご覧ください。   富太郎

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