富太郎が、気の向くままに、「ちょこっとプレゼン」させていただきます。
誰かのお役に立てば、幸いです。
今回のお題「虚偽告訴の罪」
昨今、芸能人やスポーツ選手への告訴が、テレビや週刊誌を賑わせて
いますが、告訴された側から、告訴した側に対して、事実無根と
「逆告訴」がなされたという事案が報道されました。
刑法172条 【虚偽告訴等】
人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の
申告をした者は、3月以上10年以下の懲役に処する。
この罪の『保護法益』は「被告訴者の私生活の平穏」は第二次的なもので、
第一次的には「国家の審判作用」なので、被害者の承諾があっても成立する
との判例があります。(大判大1.12.20)
慰謝料の請求とか、損害賠償を求めて、被害者が原告となる民事訴訟とは
異なり、『公訴(訴えの提起)は検察官がこれを行う(国家訴追主義)』と
刑事訴訟法(司法書士試験では科目外)で定められています。
つまり、警察の調査に基づき、検察が訴追をした場合には、検察官(公益
代表)が当事者となります。
最近は、一定の犯罪について、「公判期日に出席」「証人尋問」
「被告人質問」等をする権利が認められる『被害者参加制度』もできた
ようです。
刑法の条文にあるように、この罪が成立するための要件は、
① 人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で
② 虚偽の告訴、告発その他の申告をした ことです。
「虚偽」というのは、『客観的事実に反する事実を申告すること』との
判例があります。(最決昭33.7.31)
宣誓をした証人の記憶に反する陳述が「国家の司法作用を誤らせる抽象的
危険を含む」として『偽証罪』が成立するのに対し、記憶とは異なる内容の
告訴でも、真実と合致している事実であれば、「国家の捜査権・調査権を
侵害することにはならない」ので、虚偽告訴罪は成立しません。
「申告」というのは、『特定の犯罪行為又は職務規律違反の行為があると
具体的に申告することを必要とし、抽象的な事実の申告だけでは足りない。』
との判例があります。(大判大4.3.9)
いずれにしても、事件の結論は、検察・裁判所の判断に委ねられます。
ちなみに、「虚偽告訴」に関して、司法書士試験での出題実績はありません。
それにしても、100年前の判例が今でも生きているということに、
法律の世界の奥深さを感じます。
今回は、以上です。 過去のブログも、ぜひご覧ください。 富太郎