広く深いフトコロに抱かれる*追悼の意を込めて

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本日7月19日は、私が尊敬する河合隼雄氏の命日です。
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河合 隼雄(かわい はやお、1928年〈昭和3年〉6月23日 - 2007年〈平成19年〉7月19日)は、日本の心理学者。教育学博士(京都大学)。京都大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。文化功労者。元文化庁長官。国行政改革会議委員。
専門は分析心理学(ユング心理学)、臨床心理学、日本文化。
兵庫県多紀郡篠山町(現:丹波篠山市)出身。
日本人として初めてユング研究所にてユング派分析家の資格を取得し、日本における分析心理学の普及・実践に貢献した。また、箱庭療法を日本へ初めて導入した。臨床心理学・分析心理学の立場から1988年に日本臨床心理士資格認定協会を設立し、臨床心理士の資格整備にも貢献した。霊長類学者の河合雅雄は兄(三男)。7人兄弟で、長男が仁(外科医)、次男は公(篠山市西紀町の内科医)、3番目が雅雄、4番目が迪雄(歯科医)、5番目が隼雄、6番目が逸雄。

                                                                                         ーWikipediaより引用

河合隼雄さんの本を読んでる、と話題にすると、
「あぁ、読みやすいもんねぇ。」
と言われます。
その返事に、ん~確かにそうなのだけど…、
と胸の中がモヤモヤします。


読みやすさもありますが、その内容、
人柄や思考に惹かれてしまいます。


とにかく優しさに溢れています。
慈愛の精神を兼ね備え、驕り高ぶらず、
心の痛みに寄り添って生き続けておられた。


ココナラDMにて、数人の方と河合先生の話を少しばかりしました。
同じ気持ちの方がいらっしゃり、嬉しかったのを思い出します。




泣き虫でもあったそうです。
幼い頃は、幼稚園の先生がやめると聞いては泣き、
童謡に出てくるどんぐりの行方を案じては泣いてしまう。
老齢になっても、臨床の場(カウンセリングの場)では泣かずとも、
講演会ではカウンセリングの話をしながら
多くの聴衆を前にこらえきれず涙を流した…、
という逸話があります。
そんなところも失礼ながら愛しく思います。




著名人との対談も多数。
・村上春樹
・茂木健一郎
・吉本ばなな
・谷川俊太郎
・小川洋子
・遠藤周作
・山田太一
etc.


対談された方は、深い心に触れ、
安心して自分の言葉を、心を、さらけ出したことでしょう。




白洲正子(1910-1998)随筆家。白洲次郎の配偶者。
歴史に名を遺す、格好の良い女性です。
凛として強く、とてもセンスが良い。
生け花も素晴らしく、私も参考にさせて頂きました。


白洲正子さんが新聞のコラムに、
「私の小さな秘密」という内容の記事を綴りました。

〝長年自分の身の回りの世話をしてくれた乳母が高齢で亡くなった時、人が死んだ悲しみより、戦時中のことで、これでイースト菌を調達する者がいなくなって、パンが食べられなくなると思った〟

白州さんは
『なんて私はイヤらしい人間なのだろう』
と自己嫌悪を催し、ずっとその気持ちを隠して生きてきた。
数十年後、これをコラムに書いたのです。

これを読まれた河合先生は雑誌で取り上げ、

「人はあまり大きなショックをうけた時には、
それから逃れるために極く些細なことや、
つまらないことを考えるものだ」

と言葉を添えました。
白洲正子さんは嬉しさのあまり、夢に河合先生が登場したそうです。
夢の中で河合先生に「明恵上人が弥勒菩薩に抱かれて、ゆうゆうと空を飛んでいる感じ」といったように、抱(いだ)かれていた…。
芯から心救われたことが分かります。



数ある河合先生の名言の中に、

視野を広げるために一番大事なものは、「道草、ゆとり、遊び」。

という言葉があります。
「ゆっくりと寄り道をすればいい。道草の途中には、きっと小さな幸せが落ちています。」
焦りや不安が生まれたら、そっと温かく包んでくれます。




「真面目も休み休み言え。」
著書の中に時々出てくる言葉です。
冗談好きの方で、日本ウソツキクラブ会長を自称されていました。
私も加入したい^^


裏腹に、一方では真摯に真面目な方だったろうと思います。


小泉純一郎氏に頼まれ、2002年、文化庁長官に就任。
2006年、高松塚古墳にカビが生えたという文化庁の不始末を詫びるために、あちこちに頭を下げることに。
本来、河合先生の本性とは関わりのないところで文化庁の隠ぺいが行われ、しかしその責任はトップに重くのしかかる。
河合氏はその事件に強く胸を痛められ、
給与を一部返金し、迅速に詫びて回られました。


お亡くなりになられたのはその翌年です。
脳梗塞でした。享年79歳。


旧友である養老孟司さんが河合先生の死を悼んで、
こう言葉を寄せています。


「なぜ、文化庁長官なんか、長いことやらせたのか。
河合さんは名伯楽で、それを上手に使うメタ伯楽はたぶんいない。
日本の世間はそういう世間である。
河合さんのワガママを誰が聞いてあげただろうか。
ふとそう思ったりした。
もったいないなあ。
この世間は本当にもったいない人の使い方をする。
河合さんの訃報を聞いて、私はもっとワガママをしようと思った。」
 ※名伯楽…後進の育成に優れた指導者のこと。



私はブログで何度も言っていますが、
先生が生きておられたならば、とてもお会いしたかった。
何としてでも会いたい、言葉を交わしたい。
私にとってそう思う人物は河合隼雄先生です。
もうこの世では叶わないのが悲しい。


きっと天国でも多くの方が、
先生の懐で安心して気持ちを吐き出していることでしょう。




謹んで心よりご冥福をお祈り申し上げます
2021年7月19日


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