今日は二十四節気の『霜降』、文字通り朝晩冷え込みが増してきました。
先月からお天気の良い日に、夏物のお手入れを少しずつ済ませ(木綿や麻、化繊素材は、基本自分でやっています)、今月はいよいよ袷(あわせ)の着物に衣替えです。
夏物はやはり涼し気な白や紺、青色系が多くなりますが、秋冬となると急に私の着物類に紫系が増えます。
着物や袱紗、風呂敷など、和の世界でこんなに紫が多用されていることについて、やはりこの色と日本人との長い歴史を考えざるを得ません。
パっと思いつくだけでも万葉集の額田王の歌や聖徳太子の冠位十二階、源氏物語に紫衣事件(ちょっとマニアック!?)など、たくさんありますね。
『紫草』と書いて「むらさき」と読むそうです。
紫草:紫色の染料になる紫草はムラサキ科の多年草で毎年6月頃に白い可憐な花をつける。土の中にある黒味がかった根に、紫色の色素が含まれている。
(「きもののたのしみ 改訂版」一般社団法人全日本きもの振興会 編 世界文化社 より引用)
現在、日本で栽培されているものはごくわずかで、草木染をする場合は輸入品がメインとなると、いくつかの書籍やウェブサイトで知りました。
そもそも、紫草の根を掘り起こし乾燥させて染料にするまでも大変な労力がかかるので、古代から一部の高貴な人々のみが身に着けられる特別な色であったということに納得です。
その後、「桔梗色」(青みのにぶい紫)、「藤紫」(青みのあざやかな紫)、「蒲萄(えびぞめ)」(赤みの深い紫)、「濃紫(こきむらさき)」(青みの深い紫)、「半色(はしたいろ)」(あざやかな紫)、「二藍(ふたあい)」(紫みのにぶい青紫)など、他の植物染料を使った代用染や交染を含め、様々なバリエーションが生まれました。
カバー写真は中央が茶道の袱紗(ふくさ)、他は左から時計回りに、仕立て直し中の縞柄の紬(袖部分)、無地の名古屋帯、袖口布(裏地)です。
「日本の傳統色 その色名と色調」(長崎 盛輝 著 京都書院)の色票に照らしてみると、
ざっくりですが下記の色に近いかな、と思います。
袱紗→「桔梗色」 紬→「蒲萄」 名古屋帯→「濃紫」 袖口布→「
半色」
(注:写真の袱紗等はすべて現代の化学染料で染められていますので参考まで)
江戸時代には「京紫」と「江戸紫」という紫の色名が現れました。
諸説ありますが、いくつかの書籍によると、「京紫」は赤みの紫、「江戸紫」は青みの紫、という解釈になっていることが多いです。(真逆の説もあります)
このページを開設するにあたり、やはり和風の名前がいいよね~と考えていた時、ちょうど家の朝顔の紫の花がきれいだったのと、京都で生まれ育ったけれど関東にルーツがあって、東京で着物やお茶を本格的に学び始めた自分に「しっくり」くる気がして、名付けさせていただきました。
関西の「はんなり」も関東の「粋」もどちらも素敵だなあ、と思いながら、これからも着物を愛好していきたいと思います。
長くなりましたが、最後までお読みくださり誠にありがとうございました!
(次回は七五三の着物について書かせていただく予定です)
今月の授業は二重太鼓の帯結びと留袖の着付けがメインです。
写真は練習用で濃い紫色の色無地(一つ紋)と袋帯です。