それでも、まだ生きてる。~第1話~

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【序章】 ~ココカラ~


2020年。10月。


世界はコロナ禍で、右も左も後ろも前も、
マスク、マスク、マスク。

「日本人の良いとこは、順応性が高いとこだな・・・」
と、コーヒーショップでパソコンをいじりながら、
倫也が言った。

「うーん・・・そうだね~・・」
私は、色とりどりのマスクの波に、目をやって応えた。

「それで?どうなん?・・・体調は?」
倫也はパソコンの手を休めず、チラッとメガネ越しに、
私を見て尋ねた。

「あー・・・、まあまあかな・・?」

「ふっ!・・・まあまあって。」
倫也は少し吹き出し続けた。

「死にかけてんのに、まあまあ、ねぇ~・・・」
今度はちょっと呆れたように、ため息をついた。

まあ、それも仕方がない。
私はついこの間、死にかけた。

この時期に、
「私、死にかけました!」
と手を挙げれば、
きっと、今現在も、人類の命を
脅かすコロナウィルス感染者だと
思われるに違いない。


が、それは全く関係がない。


その原因は、
話せば長くなるけれど、そろそろ、
アウトプットも必要だと、
『上の方たち』も言うし、順をおって、
話していこうかと思う。





私は、この3年間で、3回、死にかけた。





スクランブル交差点上の大型ビジョンから、
人気お笑い芸人の声が聞こえる。


『時を戻そう!』




そう、、、ね。・・・時を戻そう!










2017年。8月。


私は、真っ暗な闇の中にいた。

あたり一面、暗闇で、
自分がそこにいるのか?さえ
解らず、手を伸ばしてみる。

暗闇と同化して、
溶けているように感じる。

まるで、存在していないような、、、



「そうか!入れ物(カラダ)が、ココにないんだ!」

段々、自分の置かれている状況が、
飲み込めて来た。

「なんなんだろう?・・この感覚は・・」

暗闇に押しつぶされそうな恐怖が
急に襲ってきた。


「何?これ! こわい!こわい!誰か!!!」

「誰か!なんでもするから!お願い助けて!」


暗闇の中で、粒子状に自分の存在が、
消えてなるなりそうになる感覚が、
なんとも堪え難く、
胎児のように丸まると、
遠くの方から声が聞こえてきた。

声がする方に、目をやると、
針ほどの穴から、光が差し込んでいた。

目をこらして、光の中を覗くと
私の最愛たちが、泣きながら、
「ママ!ママ!」
と、私(カラダ)に、しがみついている。


「ああ、キーくん、ケイちゃん・・・」


なんでこんなことに!
どこで間違った?!・・どこで・・・?

私は一体、何をしたんだろう・・・?
それさえ、わからない。

悔しさと、歯がゆさで苦しい。


戻りたい!戻りたい!戻りたい!


何か、やってはいけない事を、
やったんだ!

何をした・・・?


記憶を蘇らせようと、
思考を巡らすが思い出せない。



「ママー!ママー!」

泣き叫ぶ、子供たちに手を伸ばすが、
私のカラダはピクリとも動かない。


帰りたい!帰らなきゃ!あそこへ!
帰りたい!!!お願い!神さま!!!


必死の思いで祈った。


すると、パラパラと暗闇に、
散りばめられていた、自分の一部たちが、
吸い寄せられるように、一気に、
胸に帰ってくるのを感じた。

と同時に、
自分が光の方へ、猛スピードで向かっていく。

すごい引力と、後ろから押される力で、
暗闇から、光へと・・・








「う゛っ!? ま、まぶしい!!!う゛っ!ゴホッ、ゴホゴホ!」

急にカラダに戻ってきた衝撃で、
目がくらむし、息が苦しい!

ゆっくり、呼吸を調え、静かに目を開けると、
目の前には、ハトがマメ鉄砲を食らったような、
面々が並んでいた。


その面々の中に、倫也もいた。




「ママ!」
「萌音!」

家族や友達が、一斉に、私の名前を呼ぶなか、
私はカラダの中に戻る瞬間を思い出していた。


最後に聞こえた言葉・・・

『約束は護るのだぞ。』




「・・・・・・」


はて、私は何を約束したのだろう・・・?


で?・・・誰!?


第2話へ   つづく。






















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