『祈理狐』との出会い③

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1ヶ月後、祖父のもとに一通の電報が届きました。あの兵士の家族からでした。
普通、戦地に電報が届くことはそうありません。ましてや垢の他人からの電報なんて。

そこには兵士の死と、祖父への感謝が述べられていました。

その後、祖父は戦地で『祈理狐』の力を身近な人のために使いました。
一番多かったのは家族や友人の安否だったそうです。中には国に残した恋人の浮気の心配をする兵士もいたそうです。
噂は少しずつ広まり、信じない人もいたけれど軍の中では有名になってしまいました。
このままでは面倒なことになりそうだな、と思ったこと運良く終戦しました。

物資も枯渇してしまい、『祈理狐』を呼びたくても供物もままならない時代でしたので、しばらく召喚することはなかったといいます。

そうして高度経済成長を迎え、必死に働いていくうちに『祈理狐』の存在もなかったようになって。
で、ふとした時、『祈理狐』のことを思い出した祖父は『祈理狐』を呼び出しました。
久しぶりでした。そして特に知りたいこともなかった祖父は、思いつくままにその日の競艇レース結果を教えてくれ、と『祈理狐』に言いました。
すると『祈理狐』はすっと消えてその後は出てくることはなかったそうです。

祖父の話はこれで終わりでした。

ときはうつり、今から12年前、祖父が他界しました。
ちょっとボケてきた祖父でしたが、私は帰省する度に祖父に会いに行きました。

そろそろヤバそうだ、家族から連絡が入ったので私は祖父に会いに行きました。
奇しくもその翌日、祖父は他界しました。

少し遅い時間になってしまったので先に家族は帰っていました。
1人で祖父を見舞うと、祖父は真剣な眼差しで背筋を伸ばし、ベッドの上に座していました。

どこがヤバそうなんだ?と私が思うほど、その目は力強く、まっすぐ私を見据えました。

「よく来た。座ってくれ。」

ボケた老人とは思えない張りのある声で私に話しました。
『祈理狐』の話でした。祖父の昔話では賭け事に『祈理狐』を使おうとしたので力を失ってしまった、そういうことでしたが、それは嘘だったようで、実際に『祈理狐』は今も祖父の前にいりというのです。
信じない私に、『祈理狐』の力を借りた祖父がSNSにも上げていないようなことを次々と言い当てました。秘め事までをも言い当てようとしてくるので、遮って信じることにしました。
次に『祈理狐』は一子相伝であること、その力を私に譲るというのです。
一通り儀式の方法を祖父に習い、試してみましたがうまくいきません。
祖父は私に笑顔で「明日にはできるようになるさ」と言い、疲れたように眠りました。

バカバカしいとは思いつつも、祖父の力を見せつけられた私は気になって眠れず夜通し教わった儀式を続けました。
夜が白みだした頃、『祈理狐』を呼び出すことに成功しました。そこで初めて『祈理狐』と対話したとき、『祈理狐』を譲り渡すときの『代償』とは何なのかを知りました。
祖父はその朝に亡くなりました。
『一子相伝』 能力は1人だけです。『祈理狐』を宿すものも、この世で1人だけなのでした。

私はしばらく誰とも分かち合えない『祈理狐』について悩みました。
しかしどうせなら祖父のように親しい人のために、役立つことだけに使おう、と考えるようになりました。

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