弁財天を巡る旅のはじまり

江ノ島の風は、僕の心をさっと洗い流すような涼しさだった。弁財天の神社は静寂に包まれ、それが僕の心に安らぎをもたらしてくれた。思い悩んでいた日々が、この神聖な場所に足を踏み入れることで少し軽くなったような気がした。

手を合わせ、僕は弁財天に向かって静かに願いを告げた。

「弁財天さま、どうかお力をお貸しください。僕は進むべき道を模索しています。どうか、導いてください」

すると、神社の奥からほのかな光が差し込み、それが弁財天の像に集まっていくように見えた。光が集まると、像が動き出したかのように思えた。心の中で話しかけるような感覚で、弁財天との対話が始まった。

弁財天の声が僕の心に響いた。「子よ、迷いながらもこの場所に足を運んだことは、心の声を感じ取った証です。心の声が導く道を信じ、それに従ってください。」

僕は驚きながらも、弁財天の声に従って問いかけた。「でも、どのようにして心の声を感じ取ればいいのでしょうか？」

弁財天は優しく微笑んで語った。「心の声は、思考や感情ではなく、深い内なる静けさの中にあるものです。日々の喧騒を離れ、心を静めてみてください。そこに答えがあります。」

僕は弁財天の言葉を心に刻み込んだ。静かに座り、深呼吸を繰り返すことで心を整えると、心の奥底から湧き上がる感覚に気付いた。それは言葉ではなく、ただの存在感だったが、確かに心に導くものだと感じた。

弁財天の声が再び響いた。「それが心の声です。それに従いなさい。道は決して簡単なものではないかもしれない。しかし、自分自身を信じ、心の声に耳を傾けることで、進むべき道が見えてくるでしょう。」

僕は頭を下げて感謝を述べた。「ありがとうございます。弁財天さま、僕は心の声に向き合います。」

光が再び弁財天の像に戻り、その存在感は静かに消えていった。しかし、僕の心には弁財天からのメッセージが深く刻まれていた。

江ノ島の風がまた僕の頬を撫でる。迷いながらも、僕は心の声に耳を傾け、自分自身を信じる旅を始める決意を固めたのであった。