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車を運転していると、「あれっ、新しい道ができたのね~」と気づくことがあります。新しい道路ができることで遠回りすることなく、最短距離で移動できるようになり、便利さを実感する一方で、これまでそこにあった自然が破壊され、動物たちの住処をまた奪ってしまったという申し訳のなさをいつも感じています。人間にとって利益のあることが、動物たちにとっては命に関わる重大事態につながることもあります。

ここで、人間側の視点に立つのか、動物側の視点に立つのかで物の見方が変わります。仏教のいのちの教えの中に、命の悲しさがあります。私たちは他の命を奪ってしか生きられない命の悲しさを持っています。金子みすゞさんの「大漁」という詩をご存知でしょうか?

「大漁」  金子みすゞ
朝焼小焼だ大漁だ 大場鰮(オオバイワシ)の大漁だ
浜は祭りのようだけど
海の中では何萬の鰮のとむらいするだろう

人間側は浜で大漁だということで祭りのように喜んでいるけれど、鰮の側は海の中でたくさんの仲間の死の弔いをして悲しんでいるという対照的な光景を詩に読んでいます。これは、どこに、誰に、どのように視点を置くかによって、物の見方は変わってくることを示唆しています。

例えば、家族関係や対人関係で悩んでいらっしゃるとしましょう。その場合、自分だけの視点で物事を見ていると、「どうしてわかってくれないの?」「何故あなたはいつもそうなの?」と相手を責めてしまうことが多くなるかもしれません。一方で、相手の視点から物事を眺めてみると、違った景色や想いが見えてくることもあります。また、二人の関係を上から俯瞰して見ると、さらに客観的にその関係性を捉えることができそうです。

サリヴァンの「関与しながらの観察」という言葉があります。元々は患者さんと生活をする中で見えてくることがあるという意味でしたが、現在では臨床場面においてカウンセラーとクライエントの苦悩や葛藤に共感的に関わりながら、状況を客観的に観察する態度が必要であるという意味で使われることが多くなっています。この時の観察をする視点が、カウンセラー側、クライエント側、それから二人の相互交流を俯瞰して見る地点など、様々に視点を変えながら、クライエントに共感して傾聴することができるのがカウンセラーだと言われています。

人を理解することはとても難しいことですが、どこに、誰に、どのように視点を置くかによって、その理解の深さが変わってくることがありますので、自分の視点を意識しながら人と接してみると新たな発見があるかもしれませんね。

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