最終章 帰国と世界の混乱
翌日、大荷物を持って新居へ。ロシア人の婦人が住む一軒家の地下に2室あり、その一室に住むことになっていた。隠れ家感はあるのだが、申し訳程度に設置された小さな窓は当然開くことはなく、日は差すものの、空気は基本的に淀んでいた。まあ住めば都であろう、だし、ビザ終了が2ヶ月後に迫っていたので少しいるだけだから大丈夫と思っていた。仕事は残り2ヶ月のビザしか無い者を雇ってくれるところはあるわけなく、いわゆる日雇いでお金を稼いでいた。
仕事の無い日は家の近くの大きなスーパーマーケットでピアノを弾いていた。2階にあるフードコートにグランドピアノが一台置いてあった。店の中だったので、賽銭箱は置かず、ただグランドピアノを楽しんでいた。一階のショッピングエリアは吹き抜けになっているので、一階にいてもピアノの音は聞こえていた。ある時RadioheadのCreepを弾いた時は一階から誰か拍手してくれていたし、フードコートにいた人も声をかけてくれたりした。しかしそんな中、未だに忘れられない2人の“観客”がいる。続きはその二人についてと、未曾有のコロナ混乱の中、帰国する様について書く。