「絆の証―自動車整備工が見た、命と優しさの絶妙な融合 パート2」

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美容・ファッション
義男はこの自動車修理工に入社してから早五年の歳月が流れていた。
午前中にトラックの車検の為の整備を終えて昼飯を食べていた。
整備工場と言っても小ぢんまりとした工場で社長の奥さんが事務をしている。
社員は義男の2歳上の先輩が一人居るだけだ。
のんびりとした雰囲気のせいかママチャリの人達が時々修理を頼みに来る。
自転車の修理はしませんと言ってもイイじゃないのと言って厚かましく頼み込む主婦連中。
気がイイ社長は快く修理をしてあげる。
修理と言ってブレーキの締めやタイヤの空気の補充などだ。だからお金は取らない。

義男たちが休憩室で昼飯を食べ終わって横になっていると社長が入って来た。
昼から陸運事務所に行ってトラックの車検に行ってくれと義男に言った。
このトラックの故障は点火をコントロールする電子機器が故障していましたね。其処の原因にたどり着くまで苦労しましたよと義男の先輩が言った。
そうだな。
最近の車は電子機器の塊のような物になった。
俺が少年で修業時代の頃は、車に電子機器なんて載っていなかったよ。
俺よりも一時代前では車にシェルモーターが無いから人力でエンジンを掛けていたんだ。
点火装置だってポイントと言うパーツで数万ボルトの電気をデストリビュータという振り分け器で点火プラグに高電圧を送っていたのだ。全てアナログでメカだった。随分と車も変わったよ。
今は、走るコンピュータ自動車だ。

それで話だが二人とも明日から一週間の休みを遣る。五月の連休の時も出て来て呉れたからな。その分の埋め合わせだ。
俺達夫婦も華厳の滝の見物旅行に行くからな。
温泉にも浸かるぞ。
そう言って社長は休憩室から出て行った。

義男はその時、釣りに行こうと心に決めた。
義男は釣りが趣味なのだ。
それに、念願のカローラスポーツハイブリッド車の納車の日が明日だ。その新車を駆って釣りにいくのだ。
義男の心は華やいだ。
義男には彼女が居ない。
しかし、気になる女性がいるのだ。
義男が勤める自動車整備工場の隣に美容室が有る。
そこの美容師だが、まだ見習いのような感じだ。歳の頃は義男よりも二つ位若いかもしれない。
ふっくらとした顔だちで、色も白くいつも笑っているような雰囲気の女性だ。スタイルも良く安産型の尻の体型も義男の好みだ。
経営者の女性から、かずちゃんと呼ばれているから和美なのか和子なのか何なのか分からない。
和ちゃんが仕事をしているのを、たまたま入口のガラス越しに見た時、キビナのような美しい指で客の髪を梳かしていた。美しい指だなぁと義男は思った。
義男は釣りが趣味だから何でも魚に例えるクセがある。
あの娘(こ)好きだなぁ。俺の彼女になってくれたら何という幸福だろう。
あの綺麗な指で俺の頬を撫でて呉れたら何という幸福だろうなぁ。
明日納車のカローラスポーツハイブリッドで一緒に、かずちゃんとドライブできたらなぁ。
しかし、俺はエンジンオイルまみれで手だっていつも汚れているし。
かずちゃんは芳香漂う清潔な職場でシャンプーやリンスのうっとりするような良い匂いのなかで仕事をしている。
釣り合わないよなぁ。
車検を無事終えて今日の仕事は終わった。
服を着替えながらそんな事をぼんやりと考えながら帰路につく義男だった。
つづく

義男から一言
最後まで読んでくれて有難う(^^♪
続きは後日報告します。
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