みどり壮の人々⑫

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今、我々にとっては緊急事態が起きたようです。
この事態の解決を図らないといけませんから皆で智慧を出し合って最良の善後策を考えましょうと大宮が言った。

明日、連中はこのアパートを重機で解体する計画ですが人間が現に住んで居る状態で建物を壊す事は出来ないでしょう、そんな事をしたら障害事件になります、そんなバカな事はしないでしょうから善後策としては退去しないで物理的に工事着手させない方法は効果的な策ではないだろうかと橋田が言った。

それは、良い方法ではあるが所有権などの法的根拠は向こう側に有るからなぁ裁判所の令状で強制退去を命じられたら我々に対抗策は無いなぁと佐々木が言った。

法的根拠を示されても、こちらも詐欺に遭っているのだ。
905万も詐欺られたのだ。
空き家を勝手に占拠して不法入居している訳ではない。
以前からずっと家賃を払って住んで居た不動産をお金払って買ったのだ。
だから、その辺んの事情を裁判所は汲んで呉れると思うがなぁ、法律は人間の常識の上に建てられた規範だと思うよと大宮が言ったので山田の奥さんは私もそう思うと言った。

翌日、最初に来た男達が現場作業員や重機を伴って来たが住民は誰一人として退去などしていない事実を見て怒りを露わにした。
早くどかないと強制執行の手続きに入るぞと声を荒げて言った。
日中に在宅しているのは大宮と西村老夫婦のニート息子だけだ。

大宮は窓から連中を見下ろして言った。
俺達が室内に居る状態でこのアパートを重機で壊せるのか?
僅かでも我々に怪我させたら傷害で即、警察に通報するからなと言った。
図星を突かれた連中は動きが止った。
なにやら連中はヒソヒソを話をしていたが、やがて現場作業員に向かって今日は撤収だと叫んだ。
連中は帰って行った。

その夜、みんな集まって大宮から昼間の事の報告を聞いた。
今日の所は大人しく帰って行ったが、今度はどんな手で来るか分からない。
会社の上層部と作戦を練って抜き差しならない締め付けで追い出すだろう。
そうなったら、我々に勝ち目はない。
みんな今の内に引っ越し先を見つけていた方が良いかもしれないなぁと大宮が言った。




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