デザインという職能の価値を拡張したデザイナー川崎和男先生に学んだこと

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デザイン・イラスト
たかがデザイナー、されどデザイナー。
その職能の限界を超えて、デザインが果たす役割や責務を拡大し、デザインの価値を最大まで高めたデザイナー川崎和男先生の事を是非皆さんにも知ってもらいたくてこの記事を書くことを決意しました。

特別な思いがあります。私の大学時代の恩師です。

「発想・表現・伝達」の統一感の取れた内容は、社会の理解を深め、プレゼンテーターである企業に対して、信頼感のある感情移入を促すことにもなるのだ。

「プレゼンテーションの極意」川崎和男

僕はこの本をプレゼンテーションの教科書のように何度も読んできました。思いつきから思いこみへ、そして思いやりのあるデザインを、自分のわがままさと対峙して、二人称のあなたに届けるというプレゼンの本質論がここにあると感じています。デザイン思考や人間中心設計とは全く視点が違う方法論です。誰もこのような発想は提唱していないでしょう。リサーチ至上主義にあって、デザイナーの主観や直観に頼るということはタブーであるとされていると思いますが、僕はずっと川崎和男という一人のデザイナーの姿を追いかけてきたので、否定するわけには行きません。なんとか自分も一人称、二人称の、そして思いやりのあるデザインを世の中に生み出していきたいと考えています。

Design Gambit 新手の予知能力
デザイナーは先手を思いつくこと。そのためにはデザインガンビット=先手を討っていくことが大切です。恩師は心臓病を患っていたので、その手術の治療方法である「シシリアン・ガンビット」から、「デザインガンビット」という発想を思いついたそうです。

※シシリアン・ガンビットとは、心臓に薬で負担を与えて人工的に心拍をコントロールすることを指す。

デザインは戦略であり、策略である。まさしく「先手を討っていくこと」につながっているのだ。

「デザインという先手」川崎和男

恩師はデザインは戦略であると断言していました。

デザイナーという職能を選んだのなら、どういう先手を思いつくのか、
その先手を討つためにはどうやっていくべきなのかを十分に感じ取れる能力が必要である

「デザインという先手」川崎和男
十分なる「先手」

デザインは受け身でやるものではなく、まず社会の情勢や状況から、何が求められているのかを把握し、分析した上で、デザイナーが思い描く理想像を描くところから始まります。

では、先手は如何に思いつくのでしょうか?

私が学生の時にも、デザイナーとしての才能と修練によって、デザインスキルを最高峰まで高めていくことが求められました。葉っぱを64枚描くこと、アイデアは100案出すこと、レンダリングは専門の道具を使って綺麗に実寸サイズで描写すること、コンピューターは最新のMacを使うことなどを教わりました。

僕はどちらかというと落ちこぼれで、周りの学生と比べると授業に出ないで単位取得もギリギリ。部活ばかりやっている飲んだくれ。ギャンブルばかりやっている、体たらくな人間だと思われていて、実際そうだったと思います。ですが、川崎和男先生の実習だけは一所懸命やっていたと自負しています。川崎和男先生とその研究生の先輩や後輩は今では非常に優秀で第一線で活躍されていますが、私は最も最下層の落ちこぼれなので、先生のことを書くことなんて、恐れ多くて今までは出来ませんでした。

では何故、今書き記すことにしたのかというと、
それは、日本のデザイン業界や、企業内のデザインに必要な論点や視点がたくさんあるとわかっているからです。将来のデザインの役割や、今後のデザインの展望は、デザインガンビットの視点で見ていく必要があります。

デザインの過去の歴史と、デザインの言葉の原意や意味を正確に理解した上で、僕らデザイナーは地球規模で起きている危機に立ち向かい、問題解決を図って行かなければいけないと感じています。

デザインのことば デザインボキャブラリーの再定義
このWEBサイトにはデザインの言葉が50音順に記述されています。デザイン言語の原意から歴史、デザイン領域での活用のされた方まで詳細に論理的に記されています。私は何かに迷った時には、いつもこの「デザインのことば」を羅針盤として、教科書にしています。デザイン雑誌AXISにて先生が連載されていました。

大学時代のエピソード
私は研究室のドアをノックするだけも緊張していました。デザインストロークの実習、色彩論、製品デザイン論などの講義に関しては、当時では最先端の学習環境だったと自負しています。スピードシェイプ、ユビキタスコンピューター、音具、動具、店舗空間、医療空間におけるデザイン、折り畳み自転車のデザイン、高齢者向けのシルバーカートなどの実習テーマでした。

徹夜して大学に泊まり込み、実習に励んでいたことを今でも思い出します。当時としては最先端のMac環境が揃い、A0ボードでプレゼンテーション資料を出力し、実寸図面や実寸モックを持って、3分のプレゼンテーションを実施していました。第一線で活躍しているデザイナー陣から直接指導を受けられる環境は本当に恵まれていたと思います。途中経過のアイデアスケッチを壁一面に貼り出し、その場でどういった背景でどのような意図でアイデアを考案したのかをプレゼンします。PM Padにコピックマーカーでスケッチ訓練をしました。何度も描いてはダメだしを喰らいながらも、絵を描くことへの抵抗は全くなかったので、アイデアの数はたくさん出していたと記憶しています。

人の感情やユーザーの使い勝手、好ましさや望ましさを、定性的に、感性的に評価をしていただけていました。デザイナーは手に起電力が宿るということを著書の中でも仰っています。

現代であればフィジカルなプロダクトだけでなく、デジタルプロダクト、UIUX、社会実装のためのデザインなどが実習テーマとして加わることは確実です。
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