ドテンシステム考

上昇トレンドから一転、下降トレンドに陥った時、ドテンは有効な戦略の一つであると考えられてきました。それまで買い建て戦略で上手くいっていたトレードが、買い建てで損失を出すようになった時、売り建てに転じれば、その後の損失を利益に変えることができます。まるで魔法のような話です。

しかし、事はそう簡単には運びません。ドテンの難しさはそのタイミングの捉え方にあり、タイミングを間違えると、取り返しの付かない損失を被る場合が少なくありません。

そのため、裁量トレードではともかくとして、システムトレードにおいては、ドテンの導入には細心の注意を図る必要がありました。

今、買い建てベースの投資システムがあったとします。このシステムは、上昇トレンド時には大きな利益を上げるかもしれません。しかし、株価が下落に転じると、なかなか利益が上がらなくなり、そして損失が拡大していくことになるでしょう。

そのような場合、私たちはどのような手段を取るべきでしょうか。

一番真っ先に考えることが、トレードの休止（システムからのExit）です。これは、それ以降の損失を完全になくすことが出来る代わりに、それ以降の利益もまた得ることが出来ません。

その後株価が落ち着いて、トレードを再開（システムへの再Entry）した時に、休止期間中の仮想損益がマイナスであればExitは奏功したことになりますが、プラスであった場合には機会損失を被ったことになってしまいます。ただし、この場合は単に儲け損なったというだけであり、資産が減少するわけではありません。

一方、もう一つの選択肢としてドテンを行った場合には、その後の資産の動きには大きな違いが出てきます。

ドテンを行いその後再ドテンを行うまでに、ドテンを行わなかったとした場合の仮想損益がマイナスであれば、ドテンは奏功したことになり、実資産は増加します。しかし、仮想損益がプラスであった場合、実資産は減少してしまいます。

当たり前の話ですが、Exitでは機会損失だけだったのに対し、ドテンの場合は実損失となってしまうのです。

そのため、バックテスト等によって収益増加が見込めることを確認することなしに、ドテンを導入すべきではありません。

Exitの場合は一種の保険であり、機会損失が生じても実資産が減らなければ良しとすべきです。その代わり、何回かに一回訪れるかもしれない大暴落を防いでくれれば良いのです。利益の伸びは鈍化するかもしれませんが、資産の減少を最小限に留め、資産を着実に増やすために必要な手段でしょう。

他方、ドテンの場合は保険という意味合いは全くありません。あくまで、資産の効率的な増加を追求するための手段であり、運用を間違えた場合には大きな損失を被ることになります。

ドテンをしなければ得られていたはずの利益が、そのまま損失となって跳ね返ってくるため、ダメージは2倍となってしまいます。ドテンの失敗は致命傷となりかねないのです。

Exitは保険であり、そのために多少の費用を計上しても構いません。それは、機会損失という形で計上されます。そのため、Exitを導入するルール作りは比較的容易です。

多くの場合は、損失が直近最大資産の5%以上になったらExitする、などというように、損失額を基準に決める場合が多いかもしれません。これをシステムトレードで実現しようとすること自体は、さほど困難ではないでしょう。

しかし、このルールをそのままドテンにまで拡張すると、多くの場合で損失を被ることになってしまいます。これは取りも直さず、損失額を基準とするExitの多くは、再Entryの段階で機会損失を被っていることを意味します。

裁量トレードはともかくとして、システムトレードにおいては、資産の増減を基準とした場合に再Entryのタイミングが極めて難しいのです。

ただし、それが不可能であるという訳ではありません。例えば、ＫＦシステムクリエイターにおける追加システムは、正にこの考え方で性能向上を図っています。

しかし、そのためには厳密な検証をクリアしなければならないことは、言うまでもないことでしょう。

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