逆指値の設定基準(その3)

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マネー・副業
前回までは、損切りの実態や一般的な手法について述べてきました。
今回は、株価の値動きを表す指標であるボラティリティを用いることにより、損切りの基準値を決定できるのではないかとの仮定に立ち、話を進めることにいたします。

さて、一口にボラティリティと言いましても、その定義や表記方法には様々なものがあります。 
ここでは、短中期投資の場合を前提として、日々の変化を基準としたボラティリティを用いることにします。

例えば、当日株価をa、前日株価をbとすると、当日のボラティリティは、
(a-b)/b%ということになります。 
このボラティリティの推移を解析することで、損切り基準、すなわち逆指値の設定基準を決定するわけです。

ここで注意しなければならないのは、どのような投資手法を用いるかによって、ボラティリティの導出の元になるデータが異なってくることです。 

オーソドックスな例としては、終値を基準とした判断が考えられるでしょう。 
この場合は、当日の立会いが終了した時点でボラティリティが求められ、その値が基準値を割り込んだ場合に、翌寄付きで決済するということになります。

これは特に逆指値などは必要なく、単純に、翌寄付きで成行き売りを出しておけばよいだけです。 
ただし、当然スリッページが発生することになり、損切り基準からやや外れた価格で決済される場合が少なくないでしょう。

出来るだけスリッページをなくすためには、あらかじめ逆指値注文を出しておいて、その価格を割り込んだら、場中であっても強制的に成行き売りを仕掛けるようにするしかありません。 
ただし、注意しなければならないのは、その場合の損切り基準は寄付き決済の場合と異なる、ということです。

寄付き決済の場合は、前日比のボラティリティを求め、それらの標準偏差を元に損切り基準を決定することが出来ます。 
これも、順張りと逆張りとで考え方が異なるかもしれませんが、以下では順張りの場合について考えることにいたします。

順張り投資の場合は、そもそも株式を購入した時点で、株価が上昇トレンドに乗ることを想定しているのであり、もし上昇トレンドが終わってしまった可能性が高いと判断した場合は、ただちに損切りを行なうことになります。 

では、どのタイミングで上昇トレンドが終わったと判断すべきでしょうか。 
逆に言うと、どこまでの下落なら単なる揺らぎであり、上昇トレンドが終わったとは判断できない、と言えるのでしょうか。
そのポイントとなるのが、ボラティリティの標準偏差ということになります。

この値が大きいほど株価の揺らぎが大きく、従って損切り基準を緩めにしないと、すぐにノイズに引っ掛かってしまうことになると考えるのは、自然なことでしょう。 
では、損切り基準を具体的に標準偏差の何倍にすればよいのでしょうか。
これを決定するには、ある種の割り切りのようなものが必要になります。

株式を購入した翌日に急落した場合、これを持ってただちに上昇トレンドが終わったと判断することは難しいことです。 
せめて2日ほどは様子を見たいところかと思いますが、2日続落すれば諦めもつくというものでしょう。

したがって、損切り基準としては、1日でここまで下がることはほとんどあり得ない、といった水準に設定することが妥当なのではないかと考えます。 
すなわち、ボラティリティの標準偏差の3倍を損切り基準に設定すれば、1日でこの基準を下回る可能性は極めて小さいと判断できるわけです。

ちなみに、かなり古いデータで恐縮ですが、トヨタ自動車の場合は、1995年11月1日から2006年8月2日までで考えると、この間の前日比のボラティリティの標準偏差は1.94%であり、損切り基準はおよそ6%に設定すればよいことになります。 

また、値動きが激しい銘柄としてフェイス(4295)を考えると、2002年9月10日から2006年8月2日までの間の前日比のボラティリティの標準偏差は3.50%であり、当時であれば損切り基準はおよそ10%に設定すればよかったことになるでしょう。 

一方、短中期投資の場合は1日毎のボラティリティを基準にすればよいでしょうが、中長期投資の場合はもう少し大きな時間単位で見てやる必要があるかもしれません。 
また、上述したように、前日比以外の基準で投資判断を行なう場合は、ボラティリティの求め方も変えてやる必要があります。

また、逆張りの場合は損切り基準の判断が異なると考えられますし、あるいは、ボラティリティがプラスの場合とマイナスの場合とで、標準偏差等の指標に差がある可能性も考えられます。 
これらの点については、機会がありましたら考えていきたいと思います。

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