王子さまの恋みくじ♡(その2) :くまのボンザ

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「花きゃべつどのが、となり村の魔女の館に囚われたまま、帰ってきていないというのは、まことなのか?」 
 と王子さまは開口一番、真剣におたずねになられた。

 開口一番と言ってもずいぶんと経ってからだけど。

 さすがは王子さま。
 お行儀がいいみたいで、パンケーキ(モーニングサービス)をもぐもぐしたままの状態では何もお話にならなかったので、ぼくたちはドキドキワクワクしながら、ずっとお言葉を待っていたのだけれど。
 ちなみに本日のモーニングサービスのメニューは、甘くないパンケーキとリヨネーズポテトとにんじんサラダとチーズ、それからブルーベリーソースがけのヨーグルトだった。
 どれもお気に召したご様子で召し上がったので、ぼくたちはほっとして、そもそもの王子さまのご用件のことと、お師匠さんのことをすっかり忘れていた。

 それで、その質問はちょっとした不意打ちになった。
「あ、ええ、まあ」
「はい、間違いなく」

 ぼくたちの声は、あまりそろっていなかった、残念ながら。
 実は、これにはちょっとしたお師匠さんの秘密が関係しているのだが、それはまたのちほど。

「となり村というのは、どこにあるのか?」
「この森の奥を抜けて、ドラゴンの支配する深い谷を越え、天に届くような岩山(そこには獰猛なワシがいっぱいいる)を抜けたところの先にございます」
 と、ぼくは大真面目に説明をした。

 王子さまは腰に細身の剣を佩いておられるが、後ろに控えた部下がドラゴンソード級の槍を持っているのを、ぼくはちゃんと見ておいた。
 かっこいい! 他にどんな武器があるのかな?
 この後、王子さまの冒険譚が始まる!きっと!(ほのぼの系童話よりずっと面白くなるかも?)
 王子さまは、一個連隊を率いて、となりの村に攻めていくかもしれない。魔女と王子さまはどっちが強いのかな?
 と思いっきり妄想して期待してみたが、王子さまはふう~っとため息をついて言った。
「・・・そんなに遠いのか、残念だな。まずはご無事を祈っておこう、ごちそうさま」

 あ、この人、うちのお師匠さんと似た人種だ。なまけものだ。
 もちろん本物の動物のなまけものではない、人間族なまけもの科に属する種だ。
「残念だな、いろいろと相談にのってもらおうと思っていたのだが」
 と、おっしゃられて終わりにされた。

「花きゃべつどのがご不在なら、なんでサービスを出品停止にしておらんのだ。こんな田舎くんだりまで出向いてこられたのに、」
 と、偉い人、たぶん王子さまの側近の人がクレームを言う。

「あのう、ご安心ください。最近こんな感じでお仕事をこなしておられるんです。
 実際、なんとか連絡はつきますんで」
 とぼくはのんびりと言った。

「そうなのか?」
「それはよろしゅうございますね、」
 と、側近の人もほっとしたようだった。

 ぼくは壁際の、天使様の絵の方を指し示した。ちなみにこの絵はココ村のあかつきひな先生の描き下ろしなのだ。エッヘン♪
 その絵の前に、一応本物の紫色の幻影水晶が飾られてある。

「このココ村の流儀でして。実際に対面しなくても大丈夫にしてあるんです。
 あの、あそこに紫っぽい水晶玉があるんですが、あれに呼び掛けておくとお返事がきます」
「は?」
 良く飲み込めなかったみたいだった。

 パネラが助け舟を出して後をつづけてくれる。
「つまり、リモートでテレワーク、みたいなもんですよねぇ。まだスカイプとかチャットとかそういうのはしていないんですが。お師匠さんは耳が悪いので電話サービスもしていませんし、でも、」
 と立て板に水で話したのだが、たぶん用語が少々混乱している、と思う。

 ぼくは、あわててパネラをさえぎった。
「ねぇ、なんてこと言うのさ、これほのぼの系童話として書き始めたんだぜ?」
 と小声で文句を言う、これで2度目だ。
 まぁぼくも、冒険譚にしたかった気持ちは、まだまだ残っているけれど。
 王子さま、側近の皆さまは、みな聞こえなかったふりをしてくださっている。

 パネラがええと、とすまして言った。
「つまり、魔法の力です」
「そ、そうなんです。ココ村の魔法なんです」
 と、ぼくもそれで押し通した。
「ああ、なるほどですね」
「それならば、とりあえず連絡してみてくれたまえ」

「はい、」
 ぼくはお返事をして、紫の宝珠に向かってお祈りをして呼び掛ける。

『お師匠さま、王子さまがいらっしゃいました』
『おお~、よろしくお伝えしてください』

 ぼくはすぐにお伝えした。
「あ、我々も今、なんとなく一緒に聞こえたようです」
「返事、意外と早いな」
 パネラが嬉しそうに言った。
「ただいま、ログインしていたようですね、タイミングが良かったです」
「へ?」
 パネラが再度言った。
「つまり、たまたま、玉の向こう側にちゃんといた。とにかく、魔法の力なのです」
 今後、これでゴリゴリ押し通すと思う(笑)。
 めんどくさくなったのか、側近の人がずいと出てきて宝珠に向かって直接話しかけ始めた。
「殿下が{恋みくじ}をやりたいと申されての、聞こえているかな、もしもし?
 つ・ま・り、今は恋人がおられないっ!」
 と叫んだので、王子さまが見る見るうちに赤くなった。
 紫色の宝珠がどこまで音を拾うかわからなかったみたいで、ちょっと大声になってしまったようだ。
 これでは、外のやじ馬にもプライバシー、筒抜けじゃんね。

「かしこまりました! ありがとうございます!」
とお師匠さんも声を張った。
「も、申し訳ございません。殿下、わたくし、つい・・・」
と側近の人も気まずそうにしていた。

 パネラもぼくも、どうフォローしたものかわからないので、
「ええ、いえ、大切なことですよ、、、」
「まぁ、その、お名前とお誕生日さえわかれば鑑定できると申しております」
 と手もみしながら、あいまいな笑顔を浮かべた。
 王子さまが顔を赤くしたまま、小声で言った。
「そろそろ将来を考えなくてはならないようだし。
 仕方ないじゃないか、いつも城の者に取り囲まれてさ、出会いも自由も無いんだもの」
「もちろん、その通りでございますとも」
 側近の人があわててとりなした。
「持ち込まれるご縁談が無くはないのだが、ご自分で納得されたいとおっしゃられたので、一度試してみることをお勧めした次第、」 
 パネラがにこにこする。パネラは恋バナ、大好物なのだ。もちろん、にんじんの次に。 (ちなみに、その次が、お金、それからカレシだとか)

「ありがとうございます。
 それはもう、運命の赤い糸の方をお探しにならないと、ですよ。
 ええと、少々お待ちいただくことになりますが、リモートでやらせていただきます。
 最近は対面鑑定より、SNSの発達で、そういうのが多いのです。
 3日後に、鑑定結果の送信を致しますが、お城にパソコンは?」
「は?、これこれ、この話は童話だと私どももお聞きしましたぞ。城にあやしげな魔法のものなんてない!」
と、側近の人が困った顔をした。

 パネラはすまして答え直した。
「あ、そうでした、失礼いたしました。
 それでは、ここがとーくるーむになります。鑑定結果は3日後になりますが、とーくるーむが開いている間は、何度でもいらしてくださいませ。当店自慢のパンケーキも割引サービスになります。
 鑑定結果は秘密厳守ですので、王子さまだけに内緒でお伝えいたしましょうか?」
「そうしてくれたまえ、」
 と王子さまが言った。

 側近の人は一緒に聞きたそうだったのだが、王子さまはちょっとそれに気づかないふりをして澄ましていた。
 絶対にその方がいいと思う。
 側近の人、悪い人じゃなさそうだけど、また大事なところで大きな声でなんか邪魔しそうな感じだから。 とりあえず、まずは・・・。

 こんぐらっつ♪


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※ この小説は、あざとくもCM用の童話風の物語です。
※ もちろん、フィクション小説です。登場人物、設定全てにおいてでたらめです。
※ アマチュアなので、手作り感満載ですが、お許しくださいませ。気まぐれ不定期更新します。
※ タイトル『おるすばんにっき:くまのボンザ』から、『王子さまの恋みくじ♡ :くまのボンザ』に変更いたしましたm(__)m。
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