王子さまの恋みくじ♡(その1) :くまのボンザ

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昨日までの雨が止み、朝からウキウキしていた。

ぼくのおしごとは、朝いちばんに、床をモップでふき掃除。
うさぎのパネラは、朝ごはんの支度。

お師匠さんは、今やとなり村に行ったっきり。
そのおかげでパンケーキにメープルシロップをかけ放題なのだ。ケチでうるさいお師匠さんがしばらくいないせいで、ぼくはいつもより太ってしまった。
パネラがにんじんサラダばかり作るのもいけないと思う。味気がないからパンケーキを余計に食べたくなってしまうのだ。

そんなパネラが、新しい情報を聞きこんできた。
立派な馬車が村の向うの山の坂を下っているのを、かっこうがさっき見たという。

もしかしたら、と僕らは察した。
お師匠さんに会いに来るのかも?
お師匠さんはここいらじゃ有名、但し、町まで行くとほぼ無名に等しい、なまけ者のタロット占い師なのだ。

それでも、きれいなお姉さんが恋占いにやってくる。そして、そのきれいなお姉さんを目当てにお兄さんもコーヒーを飲みにやってくる。

ここは、森の入口にある喫茶店、名前は《花きゃべつ》だ。
お師匠さんは、自分の占いにひかれてお客が来ると思っているが、はっきり言って、ちょっと違うかもしれない。
この人、パンケーキを焼くのが上手なのだ。そして、ぼくは二番目に上手。パネラは、全般的になんでも上手でしっかり者。
だからぼくは、お師匠さんの古くさい占いよりも、パンケーキのおかげで店が繁盛していると思っている。 圧倒的に注文が多いんだもの。

僕らが期待していた通り、馬車はお店の前で止まった。
「いらっしゃいませ」×2。
パネラの高音とぼくの低音のハーモニーがきれいに揃った。ここだけは相性ばっちり。

降りてきたのは、きちんとした50歳くらいのおじさま。
王子さまの花嫁選びの相談にやってきたと言う。

「占いは、ご本人様からのご依頼じゃないとお受けできませんので」
と、パネラが冷たく言う。
え、偉い人みたいなのにそんなこと言っちゃうの?
と、ぼくはおたおたしたままだ。

「もちろん、殿下直々のご依頼だ。して、花きゃべつと申すものはどこに?」
「あ、あの、今はちょっととなり村の魔女の館に、」
とぼくは言いかけたが、パネラが
「囚われたまま、帰ってきません。当店、残念ながら休業中でございます」
と言ってしまった。ぼくはお口あんぐりだった。でも、お師匠さんがおるすなのは間違いない。

「な、なんと!」
と絶句した、そのたぶん偉い人は馬車の方へ戻っていってしまった。
ぼくは小声でパネラに
「ねぇ、なんてこと言うのさ、これ、ほのぼの系童話として書き始めたんだぜ?」
と文句を言った。
パネラは
「馬鹿ね、『王子さまの魔女退治』っぽい話の方がウケるかもしれないわよ?
 それにね」
と、にやりと笑う。

「今は休業補償でナントカ給付金がもらえるらしいのよ。
メープルシロップの瓶の他、もものかんづめもたくさん買えるわよ、これからの季節は、シャーベットが売れるわ!」
と言ったので、ぼくはとりあえず黙っておくことにした。 もものシャーベットが食べたいに決まっている。

偉い人が店先に戻ってきて、
「王子殿下のお出まし!」
と言った。
ぼくとパネラは、慌てて外に出てお出迎えをした。

陽の光を浴びてキラリと光る金の髪を持つ王子さまは、うわさ通りかなりのイケメンだった。
店の外にはやじ馬がたくさん、それでも兵士たちが怖いらしくて近所の雑貨屋のたぬきとか、魚屋のビーバーじいさんばあさんが遠巻きにしているのがちらりと見えた。

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※ 童話風。
※ もちろん、フィクション小説です。登場人物、設定全てにおいてでたらめです。
※ アマチュアなので大目に見てくださいませ。気まぐれ更新します。
※ タイトル『おるすばんにっき:くまのボンザ』から、『王子さまの恋みくじ♡ :くまのボンザ』に変更いたしましたm(__)m。


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