【短編小説】返品したい

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 美弥子はこれまで何人もの男に振られてきた。
そんな美弥子は1年前、せめてもの思いであるものを購入した。だか、それはとんだ欠陥商品だったのだ。

 その日も美弥子は販売元に電話をした。
「もしもし、〇〇会社ですか。お客様窓口の田中さんをお願いします…。
 田中さん。昨日電話した鈴木です。昨日のこと検討してもらったったのでしょうか。何をってあなた。返品する件ですよ。あんな欠陥商品を売りつけといて何言っているんですか。私、あれを購入するために、相当の借金をしたんですよ。そんな高いもの、返品できてもいいではないですか。いえ、でもね。金を返せと言うつもりはないんですよ。ただ、返品したいだけなのですから。選択したのはお客様だからって、何言っているんですか。すべてのファクターのセレクトは、そちらにお任せしたんじゃあありませんか。なのにどうして、返品できないんですか。契約書。ええ、読みましたけど購入の際のことは詳しく書かれていましたけど、購入後のことについては何も書かれていませんでしたよ。常識的に考えってね、田中さん。そんな世間の常識を持ち出すのなら、半分はお宅の会社にも責任がある訳でしょう。だったら、返品できてもいいんじゃないですか」
 美弥子は、受話器を耳から離して、ため息をついた。すると、困惑している田中の声が漏れ聞こえてきた。
「そうは、言われてもね。わが社がお客様に優秀な精子をお売りしたのは確かにそうですが、それで生まれた子供が気に入らないと言う理由で、子供を返品すると言われても…」
                                  完


《蛇足》
 以前、ネット上で公開していた拙作オンライン小説です。

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