結晶にいたるまでの物語 第2稿

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とある深夜のこと。手つかずのキャンバスに向かいながら、
窓の外の暗闇を眺めていると、
寝静まった街のあかりのはるか先に、ぼんやりと浮かぶ何かを見つけた。

ふわふわ光るそのあかりを、重いふたつのまぶたを
パチパチさせてよく見れば、
それは、私が25年のあいだ夢に描き続けてきた、
南の島のホテルのようであった。

古い友達にばったり会ったようで、
すこしおどろき、すこしわくわくしていると
南の島は私の目の前でどんどん大きくなり、
すっぽりと私を飲みこんでしまった。

33 Crystals

神々の結晶を巡る物語

気が付くと私はちいさな小舟の上にいて、
目の前には暗闇に光る南の島があった。
あたたかな夜風に押されて、舟は岸辺にながされていく。
そのとき、足元で何かはねた。

タコだ。深海に住むはずのメンダコが暗い水面をはねて、
ふわりと宙に浮かんでいた。
気持ちよさそうに8本の足をひろげて、
小舟の舳先でゆっくりと回転している。

息をすることも忘れて、その小さな生き物を見つめていると、
ふいに、目が合った。
タコは一瞬、私の目をまっすぐに見つめて、
そのままひらりと島の方へと流れていく。

私は誘われるように、あとを追いかけて舟を漕いだ。
船底が浅瀬の砂に触れたとき、
頭上に何か強い光が走った。
それはしだれ花火のように舞い降る、数多の結晶であった。

島中に降る光に見惚れる私をのこして、
タコはビーチをこえ、ヤシの木陰に消えた。
急いで舟をおり、奇妙な葉っぱが茂る小道を追いかけると、
その先に小さな祠があった。

祠はからっぽだった。私はそこに腰をおろした。
タコは静かにあたりを浮遊している。
遠くから聴こえる波の音と熱帯特有の甘い香りに、
私は睡魔とともに包まれていった。

夢の中に出てきたのは、島を覆うように夜空にそびえ立つ、
両腕を広げた水晶の巨神で、
私に何かを伝えようとしているようであった。
そのうち結晶はくずれ、光となって島中に散らばった。

その光景を私はどこかで見たはずだった。
落ちていく光の欠片を探しに行くようにと、
脳内でだれかの声がこだまする。
忘れていた子どもの頃の感覚がよみがえってくる。。

目が覚めると、またタコと目が合った。
その瞬間、夢の出来事を鮮明に思い出した。
タコがスイっと向きを変えて、明るい朝の日差しの中へ泳ぎ出す。
私もそれを追う。

光の結晶は木漏れ日をうけて___のなかにあった。
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