NL恋愛小説男性目線サンプル

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芹澤朋也は自宅のおんぼろアパートに不似合いな真っ赤なスポーツカーで帰宅したところだった。
「は〜、やれやれ。とんだ目に遭ったぜ」
ひとりごちながらリビングに落ち着き、缶ビールを開ける。なんだか最近、災難続きだ。先週は女子高生と熟女を車に乗せたばかりに徹夜明けに岩手まで走らされ、愛車は土手から転がり落ち、ロードサービスを呼ぶ羽目になった。今日は高校の同級生、西園寺うららに怒鳴りつけられデートをばっくれられた。女難の相が出ているのかもしれない。
まー先週のあれは楽しかったから良かったけどね。元々車の運転は好きだし、なかなか面白いドライブだった。草太も見つかったし。草太から借りた2万はまだ返してないけれど。
そのドライブの所為で芹澤の愛車はドアが取れるほどの故障をしたわけだが、芹澤は余り気にしていなかった。時には雑すぎるとも言われるおおらかな性格は彼の長所だった。
でも、今日のあれは楽しくなかった。折角の月に2回のデートが台無しだ。
そもそも、西園寺うららは良いやつである。容姿端麗、成績優秀なのに高校では浮いていた。よく怖い、不良っぽいと言われて偏見を持たれがちな自分としてはなんだか似ているものを感じて、話しかけてみた。話してみると、周囲からの評判とは違って楽しく話せる女性だった。引っ込み思案で自分に自信の無い節はあるが、音楽の趣味は悪くなかった。面倒見の良い芹澤はなんとなく放っておけないものを感じ、高校を卒業した今でも友情は続いている。
「はー、だっる」
芹澤は溜息を吐いた。
(あいつ、なんか俺のこと誤解してんだよな、多分)
時々うららはこうなってしまう。なんでも俺に言えばいいのによ。まぁ、今日のうららはよく喋ってくれた方だった。これで、もう会わないとか言いださないでほしいもんだよな。芹澤はうららのことがいまいちよくわからない。高校の頃から続くCDの貸し借りの習慣があるからかろうじてうららは芹澤に会ってくれているが、本来ならあんな美人のお嬢様と芹澤が釣り合うわけが無い。うららがもし恋人を作る気になれば、きっと引く手数多だろう。だから、俺は音楽の趣味の合う時々会う友達でいい、と芹澤は考える。
付き合いたい、なんて大それたこと考えない。うららみたいなかわいくて話しやすい女の子と恋人同士として一緒にいられたら楽しいだろうな、とは思う。うららにそのうち恋人ができたら、俺は寂しくなるだろうな、とも思う。でも、こんな状態で告白なんてできないだろう。大学に入ったばかりの頃は自棄になって身を持ち崩す生活をしていた。ホストの体入をしたこともある。きっとうららの両親は芹澤に良い顔をしない。それでも、俺が卒業して教師になるまで待っていてくれるなら、一縷の望みがあるのだが。そう思っても、そんなことは言えやしない。だから自分の好きな曲にのせて気持ちを伝えるのが精一杯。
「はぁ、しょーがねーな。まぁ、次会った時話せばうららちゃんもわかるっしょ」
次回はどのCDを持って行こうかと、芹澤は自分のコレクションを見回す。
「『翼の折れたエンジェル』・・・違うな、『愛は勝つ』。これも違う。あぁ、これがいいな。『マイ・ピュア・レディ』。あいつにぴったりだよ」
誰よりも傷つきやすくて、誰よりもいたいけで、誰よりも純粋。西園寺うららのことだ。
「うららちゃん、尾崎亜美を気に入ってくれるかね。たったい〜ま、恋をしそう〜♪」
芹澤は鼻歌を歌いながらビールを飲み干した。
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