心の闇の除菌ジェル・土台作り編3【人生の予測できないこと】

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◆ サルが“身寄り”だった果樹園経営の男性 ◆

自分が小さい頃、こんなことがありました。祖父母が田舎で農業を営んでおり、幼いながら彼らの農作業をよく手伝っていました。雑草抜きやら収穫やら肥料や土を運ぶ作業やら。畑の裏山には果樹園があり、手伝いをしているとクルマに乗ったカップルから窓ガラス越しに「果樹園はどこですかー?」とよく聞かれました。

決しておいしい果物を育てているわけではなく、ジャムにする程度の味の果樹園でしたが、田舎なのでこれといった娯楽もないため、手軽なデートスポットとして使われていたのでしょう。聞かれるたびに、農作業の手伝いの手を止め、果樹園のほうを指さして「あっち!」とカップルに教えたものでした。

果樹園は赤ら顔の40代くらいの男性が経営していました。独身で果樹園に置いた檻(おり)で飼っていたサルが、彼にとっての数少ない”身寄り”でした。無口で不器用ですが実直な方でした。自分が手にしていたおもちゃを檻から手を伸ばしてきたサルに取り上げられてしまったことがあったのですが、果樹園の男性は「ぼく、ごめんねえ、ごめん、本当に」と何度も謝ってくれました。

◆ 同窓会で運命の再会、そして山中での二人の死 ◆

それから何年かして、自分が中学生になった時、この男性が亡くなったことを母親から聞かされました。そして亡くなった原因を聞いて驚きました。

男性は何十年かぶりに中学の同窓会に出たそうですが、そこで同じクラスメートだった女性と再会しました。その女性には夫も子どももいました。

それからしばらくして、果樹園の男性と同級生の女性の遺体が、別の県の山道のレンタカーの中で見つかりました。死因は二人とも農薬を飲んだことによるものでした。女性の夫と息子さんは女性の遺体の引き取りを拒んだそうです。二人の再会は、来る日も来る日も同じ日常の繰り返しだったお互いにとって、まさに衝撃的な“運命の再会”だったのかもしれません。

はたして二人が添い遂げたことが、お互いにとってもっとも幸せだったのかどうかは、他人にうかがい知ることはできません。ただ、誰の日常においても予想しない出来事が起きるということは頭の片隅に置いておいたほうがよいのかもしれません、良いことも、そして悪いことも。
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