【機胡録(水滸伝+α)制作メモ 003】呉用

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※補足1:生成画像は全てDALL-E(Ver.4o)を利用している。
※補足2:メモ情報は百度百科及び中国の関連文献等を整理したものである。
※補足3:主要な固有名詞は日本訓読みと中国拼音を各箇所に当てている。

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『水滸伝(水滸伝/shuǐ hǔ zhuàn)』の概要とあらすじ:中国の明王朝の時代に編纂された、宋王朝の時代を題材とした歴史エンターテイメント物語。政治腐敗によって疲弊した社会の中で、様々な才能・良識・美徳を有する英傑たちが数奇な運命に導かれながら続々と梁山泊(りょうざんぱく/liáng shān bó:山東省西部)に結集。この集団が各地の勢力と対峙しながら、やがて宋江(そうこう/sòng jiāng)を指導者とした108名の頭目を主軸とする数万人規模の勢力へと成長。宋王朝との衝突後に招安(しょうあん/zhāo ān:罪の帳消しと王朝軍への帰属)を受けた後、国内の反乱分子や国外の異民族の制圧に繰り出す。『水滸伝』は一種の悲劇性を帯びた物語として幕を閉じる。物語が爆発的な人気を博した事から、別の作者による様々な続編も製作された。例えば、『水滸後伝(すいここうでん/shuǐ hǔ hòu zhuàn)』は梁山泊軍の生存者に焦点を当てた快刀乱麻の活劇を、『蕩寇志(とうこうし/dàng kòu zhì)』は朝廷側に焦点を当てた梁山泊軍壊滅の悲劇を描いた。
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呉用(ごよう/wú yòng)
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<三元論に基づく個性判定>
18番 **強い生存欲求**、**とても強い知的欲求**、**強い存在欲求** - **「戦略的思考者」** - 知識と戦略を駆使して目標を達成し、他者と協力しながら計画を実行する。

<概要>
字(あざな)は「学究(がくきゅう/xué jiū)」、綽名は「智多星(ちどうせい/zhì duō xīng)」、道号は「加亮先生(かりょうせんせい/jiā liàng xiān shēng)」。山東省济州郓城县东溪村の私塾の先生でありながら、武芸にも戦略にも精通。地元の顔役である晁盖(ちょうがい/cháo gài)と幼少時からの親交あり。北京大名府の留守(地方政府の長官)である梁中書(りょうちゅうしょ/liáng zhōng shū)が媚を売る目的で、東京(とうけい/dōng jīng:当時の首都)の宮中にいる蔡京(さいけい/cài jīng)に生辰綱(誕生日のお祝い)を用意したが、これは全て民からの増税で賄った不義の財。晁盖(ちょうがい/cháo gài)がこれを奪還する計画を立てた際、呉用(ごよう/wú yòng)がこれに協力して智取(智恵を用いて何かを得る事)に導いた。晁盖(ちょうがい/cháo gài)たちと共に梁山泊勢力に入った後もその才能を遺憾なく発揮。林冲(りんちゅう/lín chōng)の鼓舞して、梁山泊勢力の当時の力の無い頭領であった王倫(おうりん/wáng lún)の政権交代劇を演出。対立関係に発展した集落勢力の祝家庄(しゅくかそう/zhù jiā zhuāng)との戦いでは本格的に軍師としての才能を発揮した。晁盖(ちょうがい/cháo gài)の戦死後は梁山泊勢力の首領を忠義の気に満ち溢れた宋江(そうこう/sòng jiāng)に据える為に奔走。集落勢力の曾頭市(そうとうし/céng tóu shì)を攻め落とす際も彼の存在が不可欠であった。梁山泊勢力の拡大にも寄与し、宋江(そうこう/sòng jiāng)と共に朝廷の討伐軍を勝利に導く。「単なる諸生風情がここまで活躍出来たのは全て梁山泊と宋江のお陰」として、どのような状況でも我を示さずに勝利と団結の事だけを考え続けた。招安後の南征北戦でも多分な功績を上げ、戦後は武勝軍承宣使に任命。宋江(そうこう/sòng jiāng)が宮中の奸臣たちによって毒殺された事を知ると、共に果てるべく彼が埋葬されてる蓼児洼(りゅうじか/liǎo ér wā)へ向かう。現地では梁山泊勢力時代の中間である花栄(かえい/huā róng)と遭遇。忠義を示して共に果てるべく、二人は宋江の墓前で自縊(首を吊って自殺する事)した。彼らの亡骸は宋江(そうこう/sòng jiāng)の墓の左側に厚く葬られた。

<外見>
学者のような装いをしており、眉を覆う桶子様の頭巾をかぶり、縁が黒い麻布の広い上着を着て、茶褐色の帯を締め、絹の靴と清潔な靴下を履いている。眉が清く目が秀麗で、顔が白くひげが長い。(『水滸伝』第十四回 赤発鬼醉卧灵官殿 晁天王认义东溪村より)

<人物の性格>
- 呉用(ごよう/wú yòng)は知恵の化身として描かれ、彼の英雄的な才能が生き生きと描かれている。単なる頭でっかちの英雄として描くのではなく、非常に現実的な判断にも優れた様子が見受けられる。当時の知識人にありがちだった社会改善に対する消極性やへりくだった従属的な気質は持たず、学究者として自分の才能を役に立てようとする気概が見受けられる。ただし彼には世を救う才能があるが、世を救う志には欠けており、その欠けた部分を梁山泊勢力や宋江(そうこう/sòng jiāng)に依存していたと言える。

- 彼は天才的ではあるが超人ではない。『三国志演義』で想起される諸葛亮孔明のような完璧さは持たず、その知恵に限界がある事が示されてる。例えば、烏龍嶺の戦いにおいて、策略の失敗によって晁盖(ちょうがい/cháo gài)率いる梁山泊勢力が破滅的な末路を辿り始めた時、彼はその動きを統制する事が出来なかった。作者がこうした失敗を敢えて描いたのは、人間の知恵がどれだけ超越していても、時には俗世から逃れられず、人類を困難から救う事が出来ない現実を示唆している。

- 彼の性格は忠君、寛仁、義を重んじるが、原則を軽んじる傾向がある。例えば、彼は宋江(そうこう/sòng jiāng)の規範に反する大胆な計画に異議を唱える事も多かったが、「言う事とする事は別」として基本的には宋江(そうこう/sòng jiāng)の考えを反映した戦略を講じていた。特に梁山泊勢力の運命を決定付ける重大な招安の問題では、多くの好漢たちが反対の声を挙げる中、彼は宋江(そうこう/sòng jiāng)の考えにそのまま従った。

- 仲間たちと和やかに過ごす事を何よりも尊び、大局を重んじる彼にとって、この招安は紛れもなく不穏な種を落とすものであった。彼はこの先にある数々の問題を見通していたはずであるが、敢えて宋江(そうこう/sòng jiāng)と議論をしなかった。これは彼の義を重んじる性格を示していると言えるが、それと同時に封建的な忠義意識から逃れられない事も示している。当時の学究者の限界がここに表れていると言える。

<原型>
呉用(ごよう/wú yòng)は『宣和遗事』において「呉加亮(ごかりょう/wú jiā liàng)」という名前で記されている。龚圣の『宋江三十六赞』では、吴用は「智多星吴学究」として記されており、彼の知恵を称えているが、ここでも「呉用」という名前は登場しない。これらの作品は『水滸伝』の雛形や原型と考えられている。『明史·杨维桢传』では、陆居仁(呉用の原型と見られる人物)が、杨维桢、钱惟善の死後に隣り合って葬られ、墓は「三高士墓」と讃えられた。これは『水滸伝』の結末で呉用(ごよう/wú yòng)と花栄(かえい/huā róng)が宋江の墓前で自縊した情節との類似が見受けられる。陆居仁のその事件が物語に引用された可能性が高い。

<人物評価>
- 明代の文学者である李卓吾は、彼を「権謀術数に長けた奸詐(策略によって人を貶める事)に満ちた人物」と評しており、その評価は否定的である。

- 明末清初の評論家である金聖歎は、彼を「上上人物(非常に優れた人物)」とし、彼の奸猾さは宋江(そうこう/sòng jiāng)と類似する点があるものの、性根が真っ直ぐで筋が通っていて正しい人物だと述べている。これは作家の張恨水も同じ内容の肯定的な評価を行なっている。

- また金聖歎は、宋江が自分が吴用を支配していると思っている一方で、実際には吴用が宋江を支配しているという関係性についても指摘をしている。野心の無い有能な部下がカリスマ性のある人物のもとで、その人物の動きを水面化で指導するという関係性は現実でもよく存在するものである。

<三元論に基づく特殊技能設定>
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※イメージ画像

#### 具術(ぐじゅつ/jù shù)
**「知略の書」**
この具術は、呉用が戦略書や地図、道具を用いて戦略を練る際に活用される。知識と情報を最大限に活かし、敵の弱点を見つけ出す能力を示している。
- **効果**:
  - **道具性(濃い)**:この具術は戦略書、地図、情報収集の道具に依存し、呉用の知識と洞察力を引き出す。
  - **思考性(濃い)**:深い思考と分析力が必要で、敵の動きを予測し、最適な戦略を立案する能力を重視する。
  - **関係性(薄い)**:個別の戦略立案に重点を置くため、直接的な人間関係の影響は少ない。

#### 心術(しんじゅつ/xīn shù)
**「策謀の陣」**
この心術は、呉用が高度な戦術を駆使して戦場での勝利を収める技です。敵の心理を読み、巧妙な罠や策を巡らせる能力を示している。
- **効果**:
  - **道具性(薄い)**:この心術は物理的な道具に依存せず、呉用の戦術的な思考力に基づく。
  - **思考性(とても濃い)**:戦術の立案や心理戦において高度な思考力が求められ、敵の意図を見抜く洞察力を強化する。
  - **関係性(濃い)**:戦術の遂行において、仲間との協力や連携が重要であり、戦場でのコミュニケーションを強化する。

#### 導術(どうじゅつ/dǎo shù)
**「智略の灯」**
この導術は、呉用がリーダーとして仲間を導き、士気を高める技である。仲間たちの信頼を得て、共に戦う意志を強固にする。
- **効果**:
  - **道具性(薄い)**:この導術は物理的な道具に依存せず、呉用のカリスマ性と指導力に基づく。
  - **思考性(濃い)**:仲間の心理を読み取り、適切な指導と助言を行うための洞察力が必要である。
  - **関係性(とても濃い)**:仲間との信頼関係を強化し、集団としての結束力を高めることが主な目的である。

### 総括
呉用は、具術、心術、導術を駆使して戦略を立案し、仲間を導く優れた軍師である。彼の持つ「知略の書」「策謀の陣」「智略の灯」は、それぞれ彼の能力を引き出し、物語の中で彼が果たす役割を豊かで多面的なものとする。

※編集協力:彩文華
※画像:DALL-E
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