『森での迷子』※吸血鬼もの。無料で読める短編ホラーです。

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 俺達が中学校に通う途中の道には“迷いの森”と呼ばれている、雑木林と沼地に覆われた場所がある。

 俺は小学校以来の友人である、美果理(みかり)と雅広(まさひろ)の三名で、その“迷いの森”に向かう事になった。きっかけは、俺がクラスメイトに馬鹿にされた事だった。当時、俺は中学二年になっても童顔で身長も低く、朝礼の時など、先頭から数えて二番目くらいに来るような背丈だった。ちなみに一番身長が低い奴はチビを売りにしていて、クラスの人気者だった。身長がどうとかではなく、俺は要領が悪かったのだと思う。

 そんな俺を見かねて、小学校以来の友人である雅広は何かと俺を助けてくれた。雅広は身体も大きく、中学に入ってからは空手部に所属していた。
「お前をイジメている奴らを見返してやろうぜ」
 そう雅広は気さくに言う。

「いや、別に俺はイジメられてない、って……」
「いやいや、イジめられてるだろ。なんか、お前、クラスの連中にムリヤリ制服脱がされそうになっていただろ、どんな貧相な身体なんだ、ってさ。和哉(かずや)、男を見せろよ、男を見せれば、連中に馬鹿にされないって」
 そう言いながら、雅広はまるで他人事のように笑う。

「なんだよ、俺はその…………」
「だからさ。例の“迷いの森”に行って、その奥にある廃屋の洋館から何か取ってこれば、お前、連中に馬鹿にされる事は無いって」
 そういうわけで、俺は度胸試しをする事になって、迷いの森に向かう事になった。

 当初は、俺と雅広だけで向かうつもりだったが、同じく小学校以来の友人である美果理も付いてくる事になった。美果理は女子達の仲でも、少し浮いていて、男子と遊ぶ事が多かった。少し男勝りな性格だが、中学生になって彼女はどんどん美人になっていった。そんな美果理だったが、バレンタインの時は、俺にチョコレートをくれた。一応、本命らしい。本命と言いながら、彼女は雅広にも同じチョコを渡したのだが。

「私、二人共、大好きだから選べないよ。だから、三人一緒に付き合おう。小学校の頃の時みたいにさ」
「はあ、俺は美果理の彼氏で、美果理は和哉の彼氏でもある、ってわけ?」
 雅広は露骨に、微妙そうな顔をしていた。
「うん、そういう事。いいじゃない、小学校を卒業する時に言ったじゃない。男女の差はあっても、中学生になっても、みんな仲良くしよう、って」
「はあ…………。なんか、かつがれている気がするなあ。俺か和哉、どっちか選べよ」
「そうしたら、どっちかを捨てる事になるじゃない。私は二人共、大好きなの」
 そんな事を美果理は無邪気に言っていた。

 そんなわけで、美果理は中学校になっても、俺と雅広によく絡んできた。周りの眼なんて気にもしていなかった。
 だから“迷いの森”に彼女が付いてくるのも、それは必然的な事だった。
 そして、俺達三人は迷いの森に入って、奥にある洋館を目指す事にした。
 洋館はいわく付きで、昔、殺人現場になっただとか、お金持ちの家族が無理心中をしたと色々な噂が立てられている。けれども、真偽の程は分からない。よく暴走族が溜まり場にしていて、スプレー缶で落書きをしているが、その暴走族の中から洋館に行った者は酷い事故を起こしたり、行方不明になった者が多いという噂も流れていた。

 だから、度胸試しには最適だった。

 ちなみに学校一のヤンキーグループの連中も、迷いの森には近付かないらしい。ヤンキーグループと行っても、髪を染めたり煙草を吸ったりして群れているだけで、実際は小心者の集まりだった。一人一人は喧嘩も弱く、強くやり返してくる相手には手を出さないような連中だった。
 雅広はそんなヤンキー達が大嫌いだった。
 格闘技を習い始めて、ますます嫌いになったらしい。

 クラスメイトからの、俺に対するイジメを止めさせる、というのは口実で、雅広が一番、度胸試しをしたかったのだろう。俺は彼の事をよく知っているから何を考えているのか分かるのだ。

「じゃあ、明後日の土曜日に、迷いの森に集合な、和哉、逃げるんじゃねぇえぞ」
「私も絶対に付いていくからね」
 美果理は頑なに言う。
 そして土曜日になった。
 時刻は午後二時を少し過ぎた頃だった。
 三人で迷いの森の入り口がある、小さな公園の前に集合した。
 森の入り口は小道にもなっており、近隣住民のランニングコースになっている。途中、自動販売機なども置かれていた。また、公園の前には昔ながらの駄菓子屋があった。

“迷いの森”に入る前に、俺達三人は駄菓子屋によって色々なお菓子を買った。その中で、俺は何を思ったのか、色取り取りのおはじきを購入した。多分、物珍しさだったからだろう。

 駄菓子屋から出ると、俺達三人の探検は始まった。
 小道を進んでいくと、急斜面のようなものが見える。
 俺達はその斜面を登った。
 本格的に森の中へと入り込んでいく。
 遠くでは、カラスの鳴き声のような音が聞こえた。
 森の中は明るくても、とても不気味だった。
 木々には、奇妙な形の毛虫が這っている。

「なんか、気持ちの悪い場所だな、此処」
 雅広は誘っておきながら、そんな事を言い始める。
「じゃあ、どうするんだよ、今から帰るってのか? 行こうって言ったの、マサだろ」
 俺は逆に意気込んで、前に進んでいった。
「ああ、だよな。それにしても、ここ、なんか広くないか? ちょっと、目印とか無いのかな?」
 俺はふと、駄菓子屋で買った色取り取りのおはじきを取り出す。
 そして、何かの童話でパンクズを落として帰り道を覚える、という話があった事を想い出す。俺は大きな一本の杉の木の近くに、おはじきを一個置いた。杉の木からは遠くに公園が見えた。
 しばらく俺達は森の深くへと進み続けた。

 途中、美果理が転んで足を擦りむいたりしていたが、大した怪我では無く消毒液を吹き付けたハンカチでさっと吹いて終わった。

 森の奥に進むに連れて、空は日差しが照って明るいにも関わらず、何故か暗い闇の底に沈んでいくような感覚に捕らわれた。やはり、遠くから色々な生き物の鳴き声が聞こえる。それは鳥だったり、虫だったり、正体不明の動物だったりした。

 進むにつれて、樹木の方も奇怪にねじまがり、ガジュマルと思われる木々が他の木に浸食して枝や幹を捻じ曲げていた。大量の樹木の根っこが地面を這っていた。
 目立つ場所に、俺はなるべくおはじきを投げ落としていく。
 迷いの森と近隣住民達から呼ばれているのは誇張なんかではない。
 既に、俺達は自分達が何処をどう歩いたのか分からなくなっていた。

「あれ、洋館なんじゃない?」
 美果理が何かを指差す。
 確かに、それは洋館だった。
 俺達は洋館を目指して向かう。
 洋館に向かう途中、かなり気持ちの悪いものが地面にあった。
 それは、腐った野犬の死体だった。
 沢山の蛆や蟻が競って野犬の身体を這っており、おそらく死骸の身体に迷路を作っている。俺達三名はそれを見なかった事にする。
 それから、更に迷いながらも、俺達三名は洋館の入り口に辿り着く。
 壁には、びっしりと、暴走族が書いたと思われるラクガキがあった。

「こんな事して呪われないのかな」
 美果理は呟く。
「呪われたんじゃないのか? なんかさ、俺、聞いたんだけど、先月、ある暴走族の連中がこの森に入り込んでいるのを見たって聞いたんだけどさ。その族の連中の何名かが、この森から出た次の日に、酷い交通事故を起こしたらしいぜ。何でも、二人、死んだんだってさ」
 雅広はそんなとんでもない事を軽く口にする。

「もう、怖がらせないでしょね。冗談でしょ?」
「…………、ははっ、それが冗談じゃないんだよ。事故にあったのは、俺の兄貴の知り合いのチームだったらしい。この森に入って、洋館の中で何かしたか、ってのは定かで無いけどな」
 雅広の兄も格闘技をしており、素行不良は無かったが、暴走族の友人達も結構、多かったらしい。意外にも族に入る者達は格闘技を習っている人間が多いそうだ。うちの学校のヤンキー達とは大違いだな、と思った。
 真っ先に洋館の中へと足を踏み入れたのは、美果理だった。
 彼女はリュックサックの中から、懐中電灯を取り出して洋館の中を照らす。
「なんだろう。普通の家にも見えるね」
 美果理の言うように、洋館は外装こそ西洋風だったが、中に入ってみると、元は家の中は普通の一般家庭の民家に見えた。
 ただ、やはり、とても汚く、虫が這っていたり、苔やカビがそこらへんに浸食している。洋館は大きく四階まであり、屋上に行く事も出来るという話だった。
「取り合えず、屋上まで進んでみようぜ。そこで記念写真を撮ろう」
 雅広は率先して、中へと入っていく。
 階段を見つけて、俺と美果理を誘導した。
 屋上にはすぐに辿り着く事が出来た。
 まるで、道標(みちしるべ)のように、途中にゴミが投げ捨てられていたり、壁にラクガキが書かれていたからだ。
 俺達三名は屋上に辿り着く。
 屋上から見える景色は中々のものだった。
 植木鉢の残骸が大量に転がっている。昔、住んでいた住民が屋上で育てていたのだろう。
 雅広は記念撮影をしようと言って携帯を取り出す。
 まず、俺と美果理が雅広の携帯で撮影された。
 次に、俺と雅広が美果理の携帯で撮影された。
 その次に、俺が美果理と雅広を撮影した。
 最後に、雅広は携帯を高く掲げて三人一緒にくっ付き、全員を撮影した。
「なんか、変わったものが写っているといいな」
 そう言って雅広は笑う。
 時刻は夕方の五時を過ぎていて、自分達は随分、長い間、森の中を彷徨い、洋館に辿り着いた事を理解する。
「じゃ、そろそろ、帰るか」
 俺達三名は、洋館を出て、迷いの森から帰る事になった。
 季節は秋で、日がもうすぐ沈もうとしていた。
 洋館の階段を降りている途中の事だった。
 雅広は首筋を押さえていた。

「どうした? マサ?」
 俺は訊ねる。
「なんか噛まれたんだ。……もし、蛇とかだったらどうしよう…………」
 美果理は雅広の口筋を見る。
 そこには、牙のような痕があった。

「毒蛇だったらやばいね……。私、傷の吸い出し方とか分からない……。口で吸って大丈夫かな?」
「止めておけって。もし、美果理の口の中に傷とかあったら、傷口を口で吸って毒を出すとかってヤバいって聞いた事あるぜ。たたたた、毒蛇じゃないといいんだけどな…………」
 雅広は少し笑った。
 美果理は消毒液を垂らしたハンカチで、雅広の首筋を拭う。
 森を出たら、すぐに病院に行こうという話になった。
 それから、俺達は迷いの森を出る事にした。
 辺りはすっかり暗くなっていて、昼間なのに暗かった場所は夜になって一層暗くなり、辺りが見えなくなっていた。懐中電灯の明かりで何とか前に進む事が出来た。
 …………帰り道が分からない。
 すぐに俺達三人はそう悟った。
 一応、目印として落としていったおはじきを頼りに、俺達は帰る事にした。
 懐中電灯のか細い明かりに照らされながら、俺達三名は森の中を進んでいく。おはじきを置いた場所は見つかり、なんとか目印の役割を果たせたみたいだった。

「なんか、寒い…………」
 雅広はそんな事を呟いた。
 俺と美果理はぎょっとする。彼は首を何かに噛まれた……、本来は急いで病院に行かないといけない筈だ。
 落とした、おはじきを頼りに、何とか俺達三名は森の途中まで戻る事が出来た。だが…………。

「確かに、ここの木におはじきを置いた筈なんだけど無い…………」
 俺は項垂れる。
 他の二人は少しがっかりした顔をした。

「まあ、仕方ないな。動物がくわえて運んでいったかもしれない」
 雅広は俺と美果理を落ち着かせようと、そんな事を言う。だが、彼は明らかに憔悴していた。全身から、だらだらと冷や汗が流れていた。
 俺の記憶では、この木の辺りにおはじきを落とした筈だ。
 要は道標(みちしるべ)が無くなったとしても、帰れれば何も問題無い。俺はこれより前におはじきを置いた場所に二人を誘導する事にした。
 ふと、木の根をよく見てみる。
 木の根は絡み合っていて、木の根の底に何かが埋まっていた。……何故、昼間、気が付かなかったのだろう……。それは、明らかに人間の姿をしていた。
 年老いた男の人だった。
 ホームレスのおじいさんなのだろうか……?
 おじいさんの半ば白骨化した死体が木の根の底に沈んでいた。俺達は三名とも悲鳴を上げていたと思う。死体は所々、肉が付いていたが、奇妙な事に死体の上に木の根が這っている。つまり、木の根が這う程に時間が経過した死体であるにも関わらず、こんな生物のひしめく森の中で、顔の原型が分かる程に腐ったり、肉を喰われていない部分が存在しているという事だ。

「帰ったら、警察にも電話した方がいいな」
 雅広の息は荒くなっていた。
「とにかく、帰ろう。なんとかして、出よう」
 雅広は弱弱しく告げる。
 遠くで野犬の遠吠えが聞こえた。
 ぐるぐる、ぐるぐる、と、俺達は歩き回っていた。
 おはじきを置いた場所が見つからない…………。
 また、昼と違って、夜の森はまるで景色が変わったような別世界に感じられた。
 あのホームレスらしき人間の死相が顔に焼き付いて離れない。
 野犬の遠吠えは気のせいか、近付いてきているような気がした。うぉーん、うぉーん、と、唸り声が耳の奥へと響いてくる。

「少し、休ませてくれないか?」
 雅広は俺と美果理にそう言った。かなり苦しそうだった。やはり、毒蛇の類に噛まれたのだろうか。俺は改めて雅広の傷口を見た。美果理がハンカチを切り裂いて包帯のように傷口に巻いていたが、薄っすらと血が滲み出ていた。
「寒い……、寒い……」
 雅広はうわごとのように言い続ける。
 俺と美果理は、何か毛布になるものが無いか探したが、見つからない。俺は仕方なく上着のジャンパーを脱いで、雅広にかぶせた。雅広はそれでも、寒い、という言葉を連呼していた。
 歩き続けて、俺達は体力を消耗していた。
 駄菓子屋や自販機で買ったお菓子やジュースの類は、全て口にし終えていた。もし、サバイバルの知識があれば、ここで火でも起こせたのだろう。俺達にそんな知識なんて無かった。
 俺も疲労から、ふと、うつらうつらと眠りに付いていた。

 気が付くと、美果理も近くで寝ていた。
 雅広は動いていないように見えた。
 気が付くと、俺達の周りに、濃密な気配のようなものを感じた。その気配は沢山の眼で俺達を見ていた。気配は唸り声を上げていた。獣の体臭のようなものが臭ってきた。昔、買っていた犬を風呂に入れずに放置していたら臭いってきた、あの猛烈な臭いだ。
 美果理は俺に近付いてきた。
 そして、美果理は俺に抱き着いてくる。彼女はぽろぽろと涙を流し始めていた。

 俺も美果理を抱き締めて、気付けば泣いていたと思う。本来は女の子を男の俺が守らなければならない筈なのに、凄く情けなかった。
 ふと、雅広の方を見る。
 雅広はぼうっと空ろな表情をしながら、何かを行っていた。
 見ると、雅広は、自身の腕を噛んでいた。齧りついていた。
 がしゅ、がしゅ、じゅく、と、嫌な音が聞こえる。雅広は腕から出血していた。俺は心の中で雅広に対して、必死で止めろ、と言葉を掛けていた。
 森の奥から、声が聞こえた。
<こいつらどうする?>
<別に我々の聖殿を壊したガキ共とは違う。見逃してもよいのではないか>
<だが、美味そうだ。久々の肉にありつける>
<大きな身体の男には、我らの印を付けた。こちら側に来るだろう>
 声達は獣の臭いを放ちながら、何かを話し合っているみたいだった。
 言っている内容は、俺達を見逃すかどうか、みたいだったが……。
 やがて、雅広は立ち上がる。
 死人のような肌をしていた。
 彼は大きな声を上げる。それは獣の遠吠えのようだった。
 雅広は森の中へと走っていく。
 俺と美果理は互いを抱き締め合いながら、その光景を眺めていた。

<おお、来たか。我々の仲間に入りたいのだな>
<生きの良い少年だ。では、イニシエーションとしてお前の血肉を我々に分け与えるのだ>
 雅広がこの世のものとは思えない、叫び声をあげていた。
 そして、肉が引き裂かれ、咀嚼音が闇の森の中に響いていった。
 やがて、獣達の気配は消えていった。
 ぽつり、と、何かが顔を出し、俺と美果理のすぐ近くに現れた。
 それは、樹木の木の根の下に埋まっていた、半ば、白骨化した老人だった。気のせいか、白骨の部分が少なくなり、肉が付いているように見えた。

<お前達の友人はたった今、我らの仲間になった。通過儀礼として、彼の肉をみな分かち合う事になった。大丈夫、生きている。ただ、彼は我らの仲間になっただけなのだ>
 そう言うと、不気味な老人は闇の中へと消えていった。
 それから、どのくらい経ったのだろう。
 朝日が昇っていた。
 俺達は森の中を走っていた。
 すると、小道の自販機を見つけた。
 すぐ近くには公園がある。
 近くの民家も、ぽつり、ぽつりと、明かりが点いていた。
 あの迷いの森の生き物が何だったのかは、俺には分からない。
 ただ、雅広は彼らの仲間になったらしい……。
 何となく、俺はホラーの伝説に出てくる吸血鬼を思い浮かべた。
 人の生き血を啜り、夜に活動する怪物達。

 俺は迷いの森の、洋館の屋上に行った事を、俺をいじめてくるヤンキー達に伝えた。その際に証拠となる写真も見せてやった。雅広が行方不明である事は彼らも知っていた。それ以来、ヤンキー達は俺をいじめなくなった。何処か、俺を怖がっているようにさえ思えた。
 写真は俺と美果理で二枚持っている。二人共、写真を共有している。
 組み合わせは、俺と雅広が写っている写真。美果理が撮影したものだ。
 もう一枚は雅広と美果理が写っている写真。俺が撮影したものだ。
 そのどちらにも、背景に、雅広を狙う黒い影と黒い腕のようなものが写っていた。

 あの森から脱出して以来、俺と美果理は付き合う事になった。美果理いわく、元々、雅広とセットで付き合っているつもりだったらしいのだが、世間一般では、彼氏が二人いるというのは不自然、という事らしく、俺と美果理は周りから、ちゃんとした形のカップルとして認知されるようになった。

 二人での記念撮影がしたいね、という事で、迷いの森とは関係が無い公園で、二人で記念撮影をした。その公園も森に囲まれていた。

 背景に映っている木々には、雅広らしき人物が、俺達二人を妬むように、呪うように睨みながら木の影から顔を出していた。雅広の服は酷く汚れていて、身体の所々が何者かによって喰われたような形跡があり、頭の一部や指先などが欠損していた。彼は恨みの篭った眼で、俺達を睨んでいた。そして、雅広の周辺には、あの森の中で見た、異様な気配達が森の中から、こちらを眺めていた。

 あれから二年が経過して、俺と美果理の周辺には、未だ雅広の影が付き纏っているように感じる。それから、あの森の中にいた大量の影達の気配もだ……。


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