95 円安は資産を増やすチャンス? 

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円安は資産を増やすチャンス? 人気上昇中「外貨預金」のメリット、デメリットは?


 米国をはじめ、ヨーロッパ各国も相次いで、中央銀行が一般の金融機関にお金を貸し出す際の金利を引き上げる、いわゆる「利上げ」を発表しており、金利が世界的に上昇しています。

また、金利を低く抑える、いわゆる金融緩和策を続けてきた日本銀行も2022年12月20日、同政策の一部修正を表明し、市場では「事実上の利上げ」と受け止められました。
ただ、海外との金利差は開いたままで、依然として円安傾向が続いています。


 そんな中、円を外国通貨に替えて預金する「外貨預金」が人気です。今回は外貨預金の仕組みとメリット、デメリットについて紹介します。

円高に進むと損をする可能性も
 外貨預金には、円を外貨通貨に替えて定期預金に預ける「外貨定期預金」もあります。
外貨の種類は、米ドル、ユーロ、豪ドル、イギリスポンド、ブラジルレアル、南アフリカランドなどがあります。



 ソニー銀行の2022年6月末の外貨定期預金全体の購入額は、同年2月末と比べ2.6倍に増加。
また、新生銀行の2022年6月の外貨預金の取引金額は、前年同月比で約3倍に増加しています。


 このように外貨預金が人気を集めていますが、メリットから紹介していきます。

■預金金利が高い
日本円の金利は低いままですが、米ドルの外貨預金金利は上昇しています。
ソニー銀行の外貨定期預金の米ドルの金利(6カ月もの)は2022年2月末には年0.15%でしたが、同年11月時点では年2%(税引き前)となっています。

また、新生銀行の外貨定期預金の1年ものの米ドルの金利も2022年12月1日、年4%(税引き前)から年5%(税引き前)に引き上げられました。
金利が高ければ高いほど、多くの利息を受け取ることができます。

■為替レートが預金時よりも円安になれば、為替差益が期待できる
為替レートが「1ドル=110円」のときに1万ドルを外貨預金に預けた場合、預けた金額の合計は、110万円です(1ドル110円×1万ドル。手数料や税金は考慮しません)。
その後、為替レートが円安に動き、「1ドル=140円」になったときに円に戻した場合、戻ってくるお金は140万円(1ドル140円×1万ドル)です。
為替レートが円安に進むことで、30万円(140万円-110万円)の利益が得られるわけです。

 外貨の金利が高く、円安傾向にある現在、外貨預金はメリットだらけのように見えますが、注意すべきポイントもあります。
外貨預金のデメリットは次の通りです。


■為替レートが預金時よりも円高になれば、損失が生じる
先述の例とは別に、為替レートが1ドル=140円のときに1万ドルを外貨預金に預け、1ドル=110円の円高になったときに円に戻した場合、30万円の損失が発生します。


■「日本円→外貨」「外貨→日本円」に替える際に為替手数料がかかる
米ドルの外貨預金をする場合の為替手数料は次の通りです。
銀行によって手数料が異なるので、事前に比較してから利用先の銀行を決めましょう。


・大手銀行
為替手数料は1ドル当たり1円かかるケースが多いです。
・インターネットバンキングやネット銀行
1ドル当たり10銭程度のケースが多いです。
例えば、ソニー銀行の外貨預金における為替手数料は1ドル当たり15銭です。


■税金がかかり、確定申告が必要なケースも
外貨預金の利息に対しては、日本の円預金の利息同様、一律20.315%の税金がかかります。
また、為替差益については、雑所得扱いとなり、確定申告が必要です。
給与所得や不動産所得などの所得と合算して税額を求める総合課税となります。
つまり、他の所得が多ければ税率も高くなるため、同じ利益でも税率は所得により異なります。


ただし、年収2000万円以下の会社員で、「給与所得および退職所得以外の所得と為替差益を合算して年間20万円以下」であれば申告不要となっています(給与を複数の会社からもらっていないことが条件)。


一方、為替差損が出た場合は、他の雑所得の利益から為替で損した額を差し引いて申告することが可能です。
例えば、外貨預金で「マイナス10万円」の為替差損、他の雑所得が「プラス50万円」なら雑所得は合計40万円とした上で、他の所得と合算して税額計算することができます。


 ここまで外貨預金のメリット、デメリットを紹介しましたが、気になるのが円安傾向の今から外貨預金を始めてもよいかということです。
日本の金融政策が大きく変わらない限り、今後も日本と諸外国との金利差の拡大は続き、円安に一層拍車がかかる可能性も高いかもしれません。
円安がさらに進めば、今から外貨預金を始めても利益が得られるでしょう。


 ただ、行動経済学の考え方の一つに、平均から大きくかけ離れた状態がやがて平均に戻る「平均への回帰」があります。
今回の円安は24年ぶりとなる水準となっており、平均から大きくかけ離れています。
すでに為替レートは極端な円安になっていると考えると、徐々に円高に戻り、為替レートが平均的な水準に戻っていくことも考えられます。


iDeCoやつみたてNISAによる投資は有効
 個人的には、為替水準や手数料などを考慮すると、外貨預金は積極的にお勧めしませんが、海外資産を持つことは、資産形成の上でとても大切です。
海外の国々の中には、日本よりも大きく成長が見込まれる国や地域があります。


 そこで、現在、話題となっている「iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」を活用し、米国株式・先進国株式・全世界株式(すべての国の株式を対象とした投資商品)などにコツコツと積立投資をするのがお勧めです。


 税制優遇の恩恵を受けつつ、円安が進めば円に戻したときの金額が増え、円高が進めば資産が安く買えるので、平均購入単価を下げる効果、いわゆる「ドルコスト平均法」が期待できます。
平均購入単価が下がれば、その後の値上がりで利益を出しやすくなりますし、何より円安・円高関係なく、海外の高い成長力に投資することでお金を増やせる可能性が高くなります。


 参考までに、図のリーマンショック以降のドル/円の為替レートとS&P500(米国の代表的な株価指数の一つ)の動きを見てみましょう。

 青いグラフのS&P500は直近値下がりしているものの、総じて右肩上がりで成長しているのに対して、オレンジのグラフのドル/円の為替レートは上下に変動しています。
70円台と円高になっている時期もありますが、直近は急激に円安ドル高に進んでいるのが分かります。


 仮に価格の上げ下げを気にせず、2008年9月から2022年10月まで、S&P500に連動する投資信託商品に毎月1万円ずつ積立投資した場合、2022年10月までの投資総額は170万円です。
それに対して、資産総額は、先述のドルコスト平均法や円安の影響もあり、552万円に増加。
その結果、382万円の利益が出ました。コロナショックでは、一時的に資産を減らしていますが、それも乗り越え資産が増えていることが分かります。


 将来のことは、プロでも予測が難しいもの。今後、円安が進む可能性もあります。
同様に、日本の金融政策が変わって、諸外国との金利差が縮小する可能性も十分にあります。
基本的には先述のiDeCoやつみたてNISAを活用し、為替の動向を気にせずに、成長が期待できる海外資産に淡々と積立投資をするとよいでしょう。


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