山のガイド犬 平治のこと

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こんにちは、司法書士・ペット相続士の金城です。

前回のブログでは、私自身の実体験として、四国遍路案内犬のことを紹介しました。

今回のブログは、私は直接出会ったことはなく、書籍で読んで知っている名犬のことですが、かつて山岳ガイド犬として活躍した伝説の秋田犬について紹介します。

九州大分県、九重連山(くじゅうれんざん)登山口の長者原(ちょうじゃばる)ヘルスセンター横には、今でも登山者から愛されている犬の銅像があります。
「山岳ガイド犬 平治(へいじ)」の像です。
「平治」というオスのような名前が付いていますが、平治はメスの秋田犬でした。

昭和48年の夏。
平治は、まだ仔犬のとき、九重連山の登山口である長者原ヘルスセンター近くに捨てられていたところを発見されました。
平治が発見・保護されたときは、ひどい皮膚病にかかっており、身体の半分から毛が抜け落ち、皮膚からは血が滲み出ているという、非常に惨めな状態だったといいます。

平治を発見して保護した人は、長者原ヘルスセンターで登山バスの切符売り場に勤務していた荏隈(えのくま)さんという方です。
発見・保護した当初、捨て犬の平治を見た荏隈さんは、「なんとも、みっともない犬じゃなぁ」としか思わず、秋田犬の仔犬だとは気付かなかったといいます。

犬好きだった荏隈さんは自宅で数頭の犬を飼っていたため、平治を自宅に連れて帰ることはできませんでしたが、長者原ヘルスセンター周辺で平治にエサを与えて世話をすることにします。

荏隈さんが世話をしているうちに、平治は登山者たちに知られることとなり、登山者の弁当のおすそ分け目当てで、登山に同行するようになったとのことです。

昭和48年の秋の終わり頃のこと。
九重連山に登山に来ていた50代の夫婦が山中でケモノ道に迷い込んでしまい、遭難寸前になります。
そこに、突然 平治が姿を現します。
そして、1時間あまりに渡って夫婦を先導し、無事に長者原登山口まで導きます。
助かったと思った夫婦がふと気付くと、平治は姿を消していました。

遭難寸前だった自分たちを導いてくれた犬のことを荏隈さんに話したところ、捨て犬の野良犬だと荏隈さんから聞かされます。

その夫婦は、命の恩人である平治への感謝の気持ちとして、「平治の皮膚病を治してやってほしい」と言って、荏隈さんにお金を預けて帰って行きました。

荏隈さんは、皮膚病に効くという法華院温泉の「湯の花」を入手し、いやがる平治に根気よく摺りこんでやったところ、1か月もすると、皮膚病にかかっていた平治の体に毛が生えはじめ、見る見る体も大きくなったといいます。

そんなある時、荏隈さんが中学生たちを山岳ガイドすることになり、近くにいた平治に荏隈さんが声を掛けると、平治は張り切って付いてきたばかりか、中学生たちを先導するように山を歩き始めました。
そのときの、平治が中学生たちに大人気であった様子を見て、荏隈さんは平治を山岳ガイド犬にしようと決心し、ガイド犬として教育をします。

その後、登山シーズンになると、登山口あたりで登山客を待つ平治の姿が見られるようになり、平治の案内で九重連山を歩いた登山者やハイカーが増えていったとのことです。

山岳ガイド犬として活躍した平治は、単独で不特定の登山客に付き添っていたため、平治をガイド犬として教育した荏隈さんでさえ、その活躍の全貌を把握できなかったそうです。

平治の活躍が知られることとなった理由は、山中で平治に案内された登山者たちの感謝のメッセージが書かれた「平治ノート」が存在していたためです。

平治は通常の任務として登山者を案内するだけではなく、負傷したり、道に迷ったりして遭難寸前の登山者の元に突然現れたといいます。
そして、その登山者を先導したり、身体を支えるなどして無事に登山口や山小屋へ案内したそうです。

当時山小屋を営んでいた男性も「平治がしばしば危うい状況の登山者を連れてきた」と証言しています。

14年にわたり山岳ガイドを務めた平治でしたが、残念ながら体の衰えが目立つようになり、「平治のガイド犬引退式」が1988年6月11日に開かれました。
引退式には400人もの人が集まったといいます。

ガイド犬を引退した平治でしたが、1988年8月3日、最後の仕事として、登山客を案内して山のキャンプ場に入り、そのキャンプ場で息を引き取ったとのことです。
その3日後の8月6日、平治の偉大な功績を讃えるため、平治の追悼式典が開かれ、九重(ここのえ)町の町長が追悼の言葉を読みました。

九重連山は、美しいスロープを持つ女性的な山として親しまれ、安易に入山する人も多いそうですが、実際は9つの峰を持つ深い山で、遭難騒ぎが絶えないとのことです。

1962年には登山パーティーが遭難し、7人が帰らぬ人となっています。
しかし、平治が九重連山のガイド犬として活躍していた14年間、ひとりの遭難者も出なかったとのことです。

平治の偉業は
【ありがとう!山のガイド犬「平治」】 坂井ひろ子著(角川文庫) – 1992/3/1刊行
として書籍にもなっています。

さらに、江島達也さんという元 中学校教員の方が、自身のホームページで、平治の偉業を紹介されています。
下記で検索していただければ、平治の写真も掲載されていますので、是非ご覧になってみてください。

【大分・九重登山口で登山者達を見守る犬の像 ~ ガイド犬「平治」は皮膚病のひどい捨て犬だった|江島 達也/対州屋|note】

次回のブログでは、ペットの埋葬について取り上げます。

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