「保育園からの英語教育」山口大学国際文化学部2017年

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学び

(1)問題

次の文章は,英語教育ブームについて「『幼児のうち』親が熱心」という見出しがつけられた記事である。これを読んで次のページの問いに答えなさい。

① 2020年度の小学校の英語必修化を前に,未就学児からの英語教育サービスが活況だ。小さな頃から英語に親しんでほしいという親も多い一方,日本語が満足に使えない幼少期の外国語教育に不安を持つ親もいる。子どもの英語教育に親はどう向き合えばいいのだろうか。

② 「オーケー,エブリバデイ! イングリッシュターイム!」

③ 英国人の女性スタッフの呼びかけに子どもたちが一斉に集まる。15年3月にオープンした「イマジンJapan荻窪児童園」(東京都杉並区)は,バイリンガル教育を掲げ,2歳以降の末就学児(園児36人)の保育と小学生の学童保育を手がける。2歳児はアルファベットや簡単な単語の学習。3歳以降は英語ゲームなど,年齢に応じ遊びを交えながら,英語に触れる。外国人スタッフと日本人の保育士がおり,子ども同士を含め英語のやり取りが基本だ。

④ 渡辺貴園長(52)によると,保護者の大半が「グローバル化時代に備え,子供に英語力を」と期待しているという。「英語を使わないといけない環境を作ることが大切。家庭で日本語を使っていても,卒園時には英語でコミュニケーションが取れるようになる」と胸を張る。

⑤ お花見や七夕などの行事も取り入れ「日本の文化を英語で伝えられる人間に育てたい」と狙いを語る。3~5歳児には小学校の予習として算数や国語に加え,英語の読み書きも教える。「子どものころに何かに打ち込む経験が自信につながる。ここは英語学習をその一つの選択肢として提示している」と話す。

⑥ 幼児と子ども向け英語教育サービスの市場規模は大きくなる―方だ。矢野経済研究所(東京都中野区)の「16年語学ビジネス市場に関する調査」によると,英語のみを使う保育園などを指す「プリスクール」市場規模は15年度は340億円に達し,前年度比30億円増えた。幼児・子ども向け外国語教室市場も前年度比20億円増の1010億円に。研究所は「小学校の英語必修化に伴う動き。主な顧客は英語教育への意識が高い富裕層で,需要取り込みを狙い週1,2回から利用可能なプリスクールも増えている」と指摘する。

(―中略―)

⑦ 英語教育に詳しい明海大外国語学部の大津由紀雄教授は「幼少期から外国語に触れることはいいこと」と前置きした上で,「触れさせ方には注意が必要」と強調する。英語を特別視する教育は真の国際人を育てることにはならないと危惧するからだ。「日本人は英語を使う必要のない人ですら英語を話せないことに劣等感を抱きがち。まずその意識を払拭ふっしょくしなければならない。真の国際人とは言語や文化の相対性を踏まえ。互いを尊重できる人間だ」と話す。言語学習については「発音や決まり文句のマネがうまくなることと,コミュニケーションできることは全くの別もの」と指摘する。言語は考えをまとめ,論理立った文章を書き,人に伝えるという思考の基盤になる。習得には主語述語といった文法や言語構造の理解が欠かせない。「小学校で日本語の文法に気づき,言語学習の基礎作りがなされれば,中学校からのスタートでも問題ない」と考える。小さな子を持つ親には,「幼少期から英語に触れなければ将来つまずくのでは,という心配は無用」と太鼓判を押す。英語教育を行う親には「言語に優劣はない,という見識を持って臨んでほしい」と期待する。「小さな頃は,言葉のおもしろさを日本語の絵本や童謡で親子ともども体感し,言語の世界への入り口を作ってあげてほしい。その上で多様な外国人と触れ合い文化の違いを肌で感じる機会を持てるとベスト」とアドバイスする。
「英語教育ブーム(上)「幼児のうち」親が熱心『毎日新聞』2016年10月24日付。出題の都合で,一部を改変した。

問1 下線部「英語を特別視する教育は真の国際人を育てることにはならない」とは,具体的にどういうこと意味していますか。200字以内で述べなさい。

問2 記事の中略をはさんだ前半部分と後半部分とでは,幼少期の英語教育についての考えが違っている。この違いを簡潔に説明した上で、あなたのこれまでの英語学習経験をふまえ,英語学習のあり方について600宇以内で述べなさい。

英才教育.png


(2)解答例


問1
日本人は英語を使う必要のない人でも英語を話せないことに劣等感を抱きがちなのでこれを払拭しなければならない。真の国際人とは言語や文化の相対性を踏まえ。互いを尊重できる人間であり、言語学習については発音や決まり文句のマネがうまくなることとコミュニケーションできることとは別ものである。言語は考えをまとめ,論理立った文章を書き,人に伝えるという思考の基盤になるため、習得には文法や言語構造の理解が欠かせない。(200字)

問2
グローバル化に備え早期から子どもに英語力を身に付けさせたいという保護者の需要に応えて未就学児に英語を教えるサービスの市場規模は拡大している。前半ではこうした早期英語教育の必要性を訴えているが、後半では小学校で日本語文法などの言語学習の基礎を経て中学校からの英語教育開始で問題ないとしている。(145字)

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