志望理由書(エントリーシート)の書き方

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(1)はじめに


●推薦入試やAO入試では志望理由書が重要

推薦入試やAO入試では初めに大学に「志望理由書(エントリーシート)」を提出します(以下、「志望理由書」に統一)。

これは面接試験での大学側の参考資料となりますので、念入りに書かなければなりません。

以下に志望理由書を書くに当たっての注意点などをお話していきたいと思います。

(2) 志望理由書の書き方は、課題解決型で書く


志望理由書の主な書き方は2つある。

①自己PR型 と ②課題解決型

多くの小論文指導者は①で教える。

しかし、「数学オリンピック出場経験がある」「運動部の大会で新記録を出した、優勝した」などの圧倒的な成果を上げていない限り、特に推薦入試で自己PRだけで採ってもらえることは難しい。

自分の特技や性格などを文書表現でうまくPRしても、合格の決め手にはならない。

大半の受験生は一芸に秀でていたり、運動や学業で天才的なパフォーマンスを発揮できたりするわけはないから、①は抑えて、②を中心に書くように私は指導している。

(3) 志望理由書は頭括型で書く


志望理由書は課題解決型に加えて、頭括型で書くことが鉄則だ。

頭括型とは、初めに結論から書く段落構成を言う。

これは、面接やプレゼンでも同様だ。

これらは、相手に自分の主張を伝えて理解してもらい、相手に自分の要求(この場合、入試に合格を果たし、大学生としてメンバーに入れてもらう)を呑ませるには、単刀直入に切り込んでいくのがベストであるからだ。

小論文も頭括型の書き方があるが、多くの場合は尾括型(最終段落で結論を書く)で書く。

が担当する生徒さんが、志望理由書の冒頭に、将来の目標(大学を卒業後、就職して何がやりたいか)から書いたことに対して「いきなり唐突です」と赤でダメだしを入れたことがあった。

おそらく、この赤ペン指導者の頭には、「志望理由書は、受験生が進路を決めたきっかけから書き始めて、時系列に沿って書き進める」という段落構成が念頭にあったからだろう。

事実、大半の受験生はこのように書く。

この書き方が間違っている、とは言わない。

でも、これでは普通すぎる。

推薦入試では、とにかく他の受験生に差をつけて、少しでも目立つように、採点者の記憶に残るように志望理由書を書くことが大切になる。

だから、みんなと同じ書き方ではダメなのだ。

さらに、志望理由書では一番大切なこと、言いたいことから順番に書く。

最初からグイグイ押していくようなイメージを持つといい。

ところが、普通の指導者は、志望理由書にも大半の小論文の尾括型と同じように、起承転結の形式を頭に入れて書かなければならない、という固定観念があるから、「いきなり唐突です」というようなトンチンカンな添削をするのだ。

(志望理由書にも起承転結はある、ただ作品としての形を重視した通常の小論文とは異なる)

(4) 志望理由書の構成


志望理由書は以下の4部構成で書くことをお勧めします。

①過去、②現在と志望理由、③将来の展望、④決意表明とまとめ

自分の過去と現在につては志望動機に関係する部分だけを書き、関係しない事項は自己PR書のほうに書くといいでしょう。

●過去(自分の履歴と進路決定の契機や動機)

まず、過去については大きく2点を重視して書きます。

第一に自分の履歴です。

小学校、中学校、高校とどんな学校生活を送ってきたか、について書きます。

学習内容と成績や生徒会活動、部活動、校外活動(ボランティアやスポーツクラブ活動など)とその成果(インターハイ出場といった成果、地区や全国大会の順位、大会記録など)や資格、段位(英検準1級、ニュース時事能力検定、IT パスポート、剣道三段など)や入賞歴(県の絵画コンクールで金賞、スピーチコンテストで優勝)、褒賞(知事褒賞受賞)、表彰(皆勤賞)、留学経験などを具体的に書く。

第二に、契機や志望動機です。その職業につきたい、資格を取りたい、その大学を受験することを決意した契機、きっかけに関するエピソードは詳しく書くこと。むかし、教師や友人などに言われた印象的なセリフを入れるのも効果的。

●現在の自分の状況

校内活動、部活動、校外活動とそこでの役務(生徒会長、部長、運動部のキャプテンなど)を書く。将来の大学入学に備えて、自分はどんな点に注意を払い、どのような工夫や努力をしているかを具体的に書く。

たとえば、陸上長距離の選手で、大学入学後もスポーツ系の大学で陸上競技を続ける場合、練習内容をどのように工夫して、その成果がどのような形で現われたか(現れつつあるか)を書く。

(未来のところで、志望大学の部活の練習法が自分にいかにマッチするかを書くとよい)

志望理由を現在、過去の自分に関連付けて書く。

志望理由を課題解決型の文章構成にする。

自分は〇〇の課題を抱えている。

注意:この課題は自分の個人的な理由や悩みだけでなく、社会的な課題と共通する広がりを持ったものであることが重要です。その課題を解決するために、貴学で××を学ぶ必要があります。数ある大学のなかで、自分はなぜその大学を志望するのか、ここを明確にしてください。

それには、大学の入学案内のパンフレットにあるアドミッション・ポリシー(建学の精神・理念)を必ず参考にすること。自分の将来の展望とアドミッション・ポリシーのこの部分が重なるというような流れで書くとよいと思います。

また、オープンキャンパスにも必ず行ってください。

自分がオープンキャンパスを通して実地で体験し、大学担当者や学生に話を聞いた印象や感想も添えて書くこと。

●将来の展望(1)

まずは直近の未来から。

大学入学後、自分が力を入れてやりたいことを書きます。

大学の勉強は当然ですが、とくにどういった学問分野、学問領域、講座やゼミを受講したいのか、講座名、ゼミ名まで具体的な名前を挙げて書くとよい。

語学の勉強も重要になりますが、これも具体的に書くこと。留学の希望や専門学校や通信教育でさらに語学を磨く、あるいは語学以外の資格を取る、といった内容もいいでしょう。ただし、医学部などの難関国家試験の資格をめざす大学では、専門学校や通信教育に充てる時間はないでしょうから、できないことを書くと空手形になり、かえって悪い印象を与える危険があります。

大学院に進学する希望がある場合もあらかじめその旨を書きましょう。

●将来の展望(2)

これは大学や大学院卒業後の未来です。社会人になって、どのようなところに就職し、どういった活動を志すのかを具体的にイメージしながら書きます。

書き方は5W1Hが基本です。

・When(いつ):あなたが大学(大学院)卒業後の日本はどのようになっているかを想像して書いてください。

具体的に、いまから10年後と指定して書くほうがよいでしょう。

今年が2023年の場合は、2033年の日本を想定します。

今よりも少子高齢化が進展しています。こうした状況を盛り込んで書きます。

2025年問題を取り上げて書くのも1つの方法になります。

2025年問題:戦後の第一次ベビーブーム(1947年~1949年)に生まれた、「団塊の世代」が後期高齢者(75歳)になり、医療・介護などの社会保障費の急増が懸念される問題。

・Where(どこで):たとえば医歯薬看護系学部志望の受験生で地域医療を志す人は、将来自分が働きたい具体的な都道府県名を書いて考えること。その都道府県の高齢化率や人口構成、出生率などの人口動態を必ず入れること。人口1000人当たりの該当都道府県の医師・看護師数も入れるとよい。ほかに気候や風土、主な死因、外国人の数と比率などを調べて、数字やデータをもとに地域のなかでの自分の将来像を書くとより説得力を増すことになります。県によっては、人口1人当たりの該当都道府県の医師・看護師数が他県に比べて少ないところ(千葉県など)があります。こうした状況を踏まえて、この課題と自
分がどのように向き合って業務を遂行するかを書く方法もあります。

・Whom(誰と):Who(誰が)=「私が」は当然なので、できれば「誰と」を入れましょう。

医歯薬看護系や福祉系の大学・学部を志望する人は、将来関係する職種の方々関係との協働で業務を遂行します。

たとえば、市役所で福祉担当の職員を希望する人は、地域の医師、看護師、保健師、ケアマネージャー、ソーシャルワーカー、NPO団体、特別支援学校の教
員、警察署などとの協働をイメージして書いてください。

・Why(なぜ):なぜそこの都道府県で働きたいかという理由を書きます。

・What(何を)、

・How(どのように):これは具体的に情景をイメージして書いてください。

●時事問題

時事に関連する志望は高評価となる場合が多い。ですが、本心ではなく、初めから高評価を狙ってウケのいいことを書いたり、面接で言ったりすると、かえって逆効果です。

面接官もこれを見抜くので、安易に時流に乗るのは控えたほうがいいでしょう。

人員が不足している中、現場でコロナ対策をされている保健師のみなさんは疲弊されていて、しかも感染リスクが高く、自身の命がかかっています。実際に保健師の現場の仕事はそう甘くはなく、キレイごとでは済まされない世界であることを理解してください。

●地域医療

地域医療はこれからさらに高齢化が進む日本の社会にとって重要性がさらに増してきます。

医歯薬看護をめざす受験生は地域医療を念頭に考えて志望理由書を書くといいでしょう。

ただ、ひと口に地域と言っても、地方によって人口動態や風土、気候、地域の産業などによって住民の健康状態や罹患率、かかりやすい病気などが異なります。

できれば、自分が将来勤務したい都道府県、あるいは離島や地方都市の具体的な名前を挙げて、事前にその地域の実情を調べたものを反映させて書くといいでしょう。

●公務員志望の受験生へ

国家公務員や地方公務員を志望する受験生は、具体的な部署や地方自治体名を挙げて書くといいでしょう。

それがまだわからない場合は、たとえば防災行政を担当したい、生活保護などの生活困窮者担当の仕事をしたい、といったように具体的な事例を挙げて書くことを勧めます。

●決意表明とまとめ

自分の履歴を振り返り、現在の状況を踏まえて卒業後の自分の目標が達成されるには貴学に入学することが必要不可欠であるということを強調して志望理由のまとめとすること。最後は決意表明で終わらせてください。

自分は貴学で学んだあかつきには、将来、「〇〇」に必ずなってみせる、というように最後は強い言葉で締めくくること。「〇〇」には、自分の理想とする将来像を入れてください。

(5)備考


●志望理由書が郵送の場合の注意点

最近、志望理由書はインターネットで登録する大学が増えていますが、郵送で大学に送る場合、必ず1部コピーして手元に置いてください。

面接で書いた内容を聞かれますので、面接試験までに志望理由書に沿った想定質問集を作っておく必要があります。

●自己PR書に書く内容

とくに高校生活で力を入れたことを詳しく書く。

単に勉強をがんばった、などという漠然とした書き方ではなく、どの教科をどのような勉強方法で取組んだ結果、どのような成績向上につながったのか(模試の順位や学校の定期テストの得点、学校の評定など)を具体的に書くこと。

クラスや部活、校外活動などの人間関係やグループ、組織内での自分の役割や貢献度、周囲の人間からの自分に対する評価などを書く。

たとえば、生徒会長として高校生のボランティア活動を自分が率先して企画、実行し、公園の清掃活動が評されて地元の町内会から感謝状が学校に届いた、部長として強いリーダーシップをもって部員をまとめ、団体戦で初めてインターハイ出場を果たし、部員やコーチの厚い信頼を得た、など。

志望大学・学部と関係のある趣味、特技や長所などがあれば書くとよい。

●趣味・特技について

趣味・特技の例1:福祉関係の学部に志望する受験生の例として:自分は高齢者に好かれることが多い。

先日ボランティアで訪れた介護施設でお年寄りと仲良くなり、いまも文通が続いている。

趣味・特技の例2:ケン玉、記憶力(東海道線の駅の名前を全部言える)。

ケン玉や落語は直接大学の勉強や入試と関係がないと思われるかもしれません。

しかし、面接の際の話題作りに利用できるアイテムの1つです。

面接では数ある受験生の中でいかに自分を面接官に印象付けるかが勝負になります。

その際、面接でケン玉や落語の話題が出て、その場で披露して盛り上がれば、強い印象を残す可能性があります。まず面接官に自分を覚えてもらうことを第一に考えてください。
趣味や特技で校内活動、部活動、校外活動での成果を優先的に書くのが常識ですが、もし書くべきことがない場合には、このような人とは違った趣味・特技を武器にするという方法もあります。

●アルバイトについて
高校生のアルバイトは禁止する高校もあり、また実務のキャリアとして評価されることは少ないので、書く必要はありません。

●短所や欠点について

短所や欠点をそのまま書くと落とされる、と心配する人も多いかと思いますが、そんなことはありません。

ただ、気になる場合には、表現を工夫して書くのです。

以下の例を参考にしてください。

短所・欠点を場合、自分はそれをどのように克服しようとしているのか、まで書くべきです。

たとえば、上の例の場合は次の文章を添えること。

志望理由書や自己PR書などで大学側が短所・欠点を書かせる意義は、受験生がどれだけ自身を客観視できるか、という部分を見たいからなので、あまり神経質にならなくてもいいかと思います。

むしろ、面接のときに志望理由書で書いた短所・欠点を出さない努力と工夫が必要になります。

●補足

自分の特技や長所などを恥ずかしくて遠慮気味に書く人がいますが、入試で謙虚さは美徳ではありません。

嘘を書くのは論外ですが、多少は誇張気味に書くほうがいいでしょう。

大会の順位や記録などは正確に書いてください。虚偽や間違いはモラルに反する行為であるばかりか、あとで発覚した場合、大変なことになります。




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