「大正時代の”おごじょ”!💜」🎾🚴‍♀️⚔️🏓⛳😎😍

記事
コラム
💎なぜ? なぜ?
私たちは、いつまでこんな馬鹿な生き方をしなければならないのだろうか?
いつまでたっても、セルロイドの匂いに、セルロイドの生活だ。
朝も晩も、ベタベタ三原色を塗りたくって、地虫のように太陽から隔離された
歪んだ工場の中で、コツコツ無限に長い時間と青春と健康を搾取されている。
若い女たちの顔を見ていると私は、ジンと悲しくなってしまう。
だが待ってくだい。
私たちの作っているキュウピーや蝶々のお垂げ止が、貧しい子供たちの頭を
お祭りのように飾ることを思えば、少し少しあの窓の下では、微笑んでも
いいでしょう。

💎二畳の部屋には、土釜や茶わんや、ボール箱の米櫃や行李や、そうして
小さい机がまるで一生の私の負債のように頑張っている。
ななめにしいた布団の上には、天窓の朝陽がキラキラ輝いていて
埃が縞のようになって私の顔の上へ流れてくる。
いったい革命とは、どこに吹いている風なのだ...
なかなかうまい言葉をたくさん知っている、
日本の自由主義者よ。
日本の社会主義者は、いったいどんなおとぎ話を空想しているのでしょうか?
あの生まれたての、玄米パンよりもホヤホヤな赤ん坊達に
絹のむつきと、木綿のむつきといったいどれだけの差をつけなければならないのだろう!
「あんたは、今日は工場は休みなのかい?」
叔母さんが障子を叩きながら怒鳴っている。
わたしは、舌打ちをすると、妙に重々しく頭の下に両手をいれて
今さら重大な事を考えたけれど、涙が出るばかりだった。
母の音信一通。
この家にお前とお父さんが早く帰ってくるのを楽しみに待っています。>>
たどたどしいカナ文字の手紙である。
「どっか体でも悪いのですか」
この仕立て屋に同じ間借りをしている、印刷工の山田さんが遠慮なく障子をあけて入ってきた。
背丈が十五六の子供のように低くて髪を肩まで長くして、私の一等嫌な
ところを惜しげもなくもっている男だった。
天井を向いて考えていた私は、クルリと背を向けると布団をかぶってしまった。この人は、有難いほど親切ものである。
だが、会っていると憂鬱なほど不快になってくる人だ。
「大丈夫なんですか」
「ええ体の節々が痛いんです。」
店のあいだでは、商売物の菜っ葉服をおじさんが縫っているらしい。
ジ....と歯をかむようなミシンの音がしている。
「六十円もあれば、二人で結構暮らせると思うんです。
貴方の冷たい心が淋しすぎる。」
枕元に石のように座った山田さんは、苔のように暗い顔を伏せて
私の顔のうえにかぶさってくる。
今までこんなに優しい言葉をかけて、私を慰めてくれた男が
一人でもあったろうか、この人と一緒になって、小さな長屋にでも住んで
世帯をもとうかしらとも思う。
でもあんまりそれも淋しすぎる話だ。
十分も顔を合わせていたら、胸がムカムカしてくる山田さんだった。
「済みませんが、私は、身体の具合が悪いんです。
物を言うが、何だかおっくうですの、あっちに行ってください。」
「当分工場を休んでください。
その間の事は僕がしますよ。たとえ貴女が僕と一緒になってくれなくても
僕はいい気持ちなんです。」
まあ何てチグハグな世の中であろうと思う。
夜、米を一升会に出る。
ついでに、風呂敷をさげたまま逢初橋を歩いてみた。
剪花屋、ロシヤパン、どら焼きや、魚の干し物や、野菜や、古本屋
久々見る散歩道だ。


💎ヘエ、街はクリスマスでございますか。
救世軍の慈善鍋も飾り窓の七面鳥も、新聞も雑誌も一斉に街に氾濫して、
ビラも広告旗も血眼になっているようだ。
暮れだ、急行列車だ、あの窓の風があんなに動いている。
能率を上げなくてはと、汚れた壁の黒板には二十人の女工の色塗りの仕上げ高が、毎日毎日数字になって、まるで天気予報みたいに私たちを脅かすように
なってきた。規定の三百五十の仕上げが不足の時は、五銭引き、十銭引きと
日給袋にぴらぴらテープのような伝票が張られてくる。
「いやんなっちゃうね」
女工はまるで、ササラのように腰を浮かせてご制作なのだ。
同じ絵描きでも、これはまたあまりにもコッケイなドミエの漫画のようではないか。
「まるで人間をゴミだと思ってやがる」
五時の時計がなっても、仕事はどんどん運ばれてくるし
日給袋はなかなか回りそうもない。
工場主の小さな子供たちを連れて、会計の細君が四時ごろ自動車で街へ出かけて行ったのを、一番小さいお光ちゃんが便所の窓から眺めていて
女工たちに報告すると、芝居だろうと言ったり、正月の着物でも買いに行ったのだろうと言ったり、手を働かせながら女工たちの間には、まちまちの議論が
噴出した。


💎七時半。
朝から晩まで働いて、六十銭の労働の代償をもらってかえる。
土釜を七輪にかけて、机の上に茶碗と箸を並べると
つくづく人生とはこんなものだったのかと思った。
ごたごた文句を言っている人間の横っ面をひっぱたいてやりたいと思う。
ご飯の煮える間に、お母さんへの手紙の中に、長いことして貯めていた
桃色の五十銭札五枚を入れて封をする。
たった今、何と何がなかったら楽しいだろうと空想してくると
五円の間代が馬鹿らしくなってきた。二畳で五円である。
一日働いて米が二升きれて平均六十銭だ。
でも、熱いご飯の上に、昨夜の秋刀魚をムシャリと頬ばると
生きていることもまんざらではない思った。
古新聞に、北海道にはまだ、何万町歩という荒地があると書いてある。
そういう未開の地に私たちのユートピアができたら愉快だろうと思うなり。
ハトポッポ、ハトポッポという唄ができるかもしれない。
皆で仲良く飛んでこいという唄が流行るかもしれない。
風呂屋からの帰りに、暗い路地裏で山田さんにあった。
私は、黙って通り抜けた。


💎一円の手数料を五十銭にまけてもらって、公園に行った。
今にも雪の降ってきそうな空模様なのに、ベンチの浮浪人達は、
おおらかな鼾(いびき)をあげて眠っている。
西郷さんの銅像も浪人戦争の遺物だ。
「貴方と私は、同じ郷里なのですよ。
鹿児島が恋しいとは、お思いになりませんか?
霧島山が、桜島が、城山が....!
熱いお茶にカルカンの甘味しい頃ですね!」
あなたも私も寒そうだし、あなたも私も貧乏だ
昼から工場に出る、生きるは辛し⁈


💎「家に帰る時間となるをただ一つ待つことにして今日も働けり!」

啄木は、こんなに楽しそうに家に帰ることをうたっているけど
私は、工場から帰ると棒のように突っ張った足を
二畳いっぱいにのばして大きなあくびをしているのだ。
それがたった一つの私の楽しみだ。
二寸ばかりのキュウピーを一つごまかしてきて、茶碗の棚の上にのせてみる。
私の描いた羽根、私が生んだキュウピーさん
冷や飯に味噌汁をザクザクかけてかきこむ淋しい夜食です。
山田さんが、妙に大きい咳をしながら窓の下を通ったと思ったら
台所から入ってきて声をかける。
「もうご飯ですか、少し待っていらっしゃい、いま肉を買ってきたんですよ」
山田さんも私と同じ自炊生活である。
なかなかしまった人らしい。
「すみませんが、このねぎ切ってくれませんか」
もうなれなれしく人にネギを刻ませようとしている。
こんな人間にずうずうしくされると一番たまらない。
でも、台所の方でわびしそうに、こつこつネギを刻みだしているようだったので、私は、山田さんの包丁をとったのでした。
「あら、ご飯は炊かなかったんですか」
「ええ貴女がご飯を食べていらしたから肉を早くあげようと思って。」
洋食皿に分けてもらった肉が、どんな思いで私の喉を通ったか。
私は、いろんな人の姿を思い浮かべた。
そして、みんなくだらなく思えた。
山田さんと結婚してもいいと思った。
夕食の後、初めて山田さんの部屋へ遊びに行ってみる。
でも、あんなにも、なごやかに崩れていた気持ちが、また前よりも
さらにすごくキリリッと弓をはってしまい、私はそのまま部屋へ帰ってきた。

外は嵐が吹いている。
キュウピーよ、はやくハトポッポだ。
吹き荒さめ、吹き荒さめ、嵐しぼんでしまう


<詩>
💎隣人とか 肉親とか 恋人とか
それが何であろう
生活の中の食うという事が満足できなかったら
描いた愛らしい花はしぼんでしまう
快活に働きたいと思っても
悪口雑言の中に
私はいじらしい程ちいさくしゃがんでいる。

両手を高くさしあげてもみるが
こんなにも可愛い女を裏切って行く人間ばかりなのか
いつまでも人形を抱いて黙っている私ではない
お腹がすいても
職がなくっても
ウオオ!と叫んではならないのですよ
幸福な方が眉をおひそめになる。

血を吹いて悶死したって
ビクともする大地ではないのです。
陳列箱に
ふかしたてのパンがあるけれど
私の知らない世間はなんとまあ
ピヤノのように軽やかに美しいのでしょう。

そこで初めて
神様コンチクショウと怒鳴りたくなります。

💎私はお釈迦様に恋をしました
ほのかに冷たい唇に接吻すれば
おおもったいない程の
しびれ心になりまする。

もったいなさに
なだらかな血潮が
逆流しまする。

心憎いまでにおちつきはらった
その男振りに
すっかり私の魂はつられてしまいました。

お釈迦様!
あんまりつれないではござりませぬか
蜂の巣のようにこわれた
私の心臓の中に
お釈迦様
ナムアミダブツの無常をさとすのが
能でもありますまいに
その男振りで
炎のような私の胸に
飛び込んで下さりませ
俗世に汚れた
この女の首を
死ぬほど抱きしめて下さりませ
ナムアミダブツのお釈迦様!
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