自画像

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デザイン・イラスト


 自画像は、自分の姿を自らで描いたものです。
 美術が苦手だという方でも、小学生や中学生の時に一度くらいは、図工や美術の時間に描いた経験があるのではないでしょうか。自画像は面白いもので、その時々の自分を、描いた時の心境まで映してしまうほど「その人」が現れます。私の大学時代の絵画の先生が仰っていた言葉に、印象に残っているものがあります。『なぜか分からないけれど、若い時に描いた絵ほど、暗くて色彩の明度が無いものが多いんだよな』という趣旨のお話でした。若さは、イメージとして、若葉であったりみずみずしい明るいイメージですが、実際20代の学生を指導してこられた先生が『若い時に描いたものほど暗い』と実感されるのは、興味深い現象です。これは私の感覚としての意見ですが、将来への危惧であったり、自分自身のアイデンティティの未確立から、不安定な心持ちが絵にも現れるのではないでしょうか。確かに、私が学生時代に描いていた絵は、どれも暗くておどろおどろしささえ、ありました。絵の具を出すパレットが、たいていは濁ってすぐに削り拭き取る必要がありました。絵を描くことが、自分と向き合うことであって、カンバスにはその時々に考えた痕跡が深く残ります。
  久しぶりに鉛筆で自画像を描いてみました。自画像を描くのは、10年ぶりくらいです。デッサンの狂いとか技術的な細かい事はさておき、鏡を見ながら、ひたすらに自分だけと向き合って描くのは、かなり根気のいることです。自分の顔は、普段見慣れているはずなのに、果たして紙に描かれた自画像は、自分のようで他人でもない。今回描いた表情は、少し暗いように、特に目が不安そうに見えませんか。対して、口は今にも開きそうに何かを語りたげです。描いたことで、絵になった後に気づくことも多いのが、絵を描く必要性だと思います。
 画家の自画像が、面白いので検索して見てみてください。レオナール藤田の猫を抱いた自画像なんかは有名で、目にしたことのある人も多いかもしれません。色んな画家が、色んな自画像をその時々で残しています。同じ画家でも時代背景や、自身に起こった出来事が反映されてその絵に刻まれています。普段絵を描かない人でも、似顔絵として深く考えずに、自分と紙に向き合ってはいかがでしょう。じっくりと自分を鏡で見るだけでも、意外な発見があるかもしれません。

 今日のお話はこの辺で。またあなたへ、おはなししましょう。

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