転職、いきなり怒涛の日々

記事
ライフスタイル
枕元に置いていたiPhoneから東京事変の閃光少女が流れ出し、夢見心地から一気に現実の波が押し寄せ、すっかり飲み込まれる。

枕に顔を押し付け半分うめきながら、気持ちのエンジン回転数を徐々に上げて行き、「おりゃー!」と気合いを入れて起き上がる。パリっパリに仕上がったワイドカラーの白シャツに袖を通し、お気に入りのネクタイをキュキュッと締め、チェックの勝負スーツを羽織る。

今日は、転職初日。

まるで新人のような、少しばかりの緊張と新しい出会いへの期待が交錯する。「自然体が最強さ。」そう自分に言い聞かせながら、昨夜ピカピカに磨き上げた革靴に靴べらを滑らせる。

こうして人生初めての転職がスタートした。仕事は地方にある本社総務の責任者。スタッフとコミュニケーションを取りながら、仕事の課題を見つけて改善して行く。上場したばかりの会社なので、想定はしていたけどそれ以上にハリボテで、社内定着の前に整備すべき課題が山積していた。

望むところさ。

東京丸の内の誰もが知っているビルへ事務所を構えることは知っていたが、いろいろと話を聞くとどうも様子がおかしい。凝ったデザインで工事が続くが何度も工期が伸びていると。イヤな予感を感じながら、まずは挨拶を兼ねた現状視察として、迷わず東京へ飛んだ。

一通り挨拶が終わったあと、管理部門スタッフ全員と個別面談したところ、既にどうにもならないレベルで、東京の管理責任者に対する信頼関係が崩壊していた。
面談なんて当たり前のことだと思っていたけど、個別でここまで話を聞いてもらったことは無い、との謝意が続いた。

その上で、東京の管理責任者と面談した。なかなかのイケメンで語り口もしっかりしていて笑顔も爽やか。しかし、話を掘り下げていくと、軸がなく、物事をあまり深く考えていなことがわかって来た。スタッフの声をオブラートに包みながら伝えても「へー、そうなんですかー。」と響かない。爽やかに見えていた笑顔の目が笑っていないことに、やっと気がついた。

工事費用は数億円かけているのに遅れている。それにもかかわらず危機感が感じられない。コストコントロールと組織基盤が大きく揺らいでいた。

翌日、この管理責任者に工事契約の内容確認と東京オフィスの運用マニュアル作成を提案した。契約内容の説明は曖昧で、というか細部で把握できておらずスタッフを呼び出す始末。マニュアルに至っては、ちょうどやろうとしていたところ、と大げさに笑いながら、その場をやり過ごそうとする。

これはまずい。

そう感じながら今後の進め方を考えながら帰る準備をしていたところ、個別面談したスタッフがお礼とともに声をかけて来た。そして、実は退職予定であることを申し訳なさそうに伝えて来たのだ。
そして、さらに別のもう一人、退職意向を伝えて来た。

これが入社1ヶ月後の最初の東京出張だった。

結局、4名いたスタッフは全員退職し、その管理責任者は外してもらった。正式に後任の管理責任者を募集し、その採用面接を重ねていた最中、役員から新しい東京の組織体制が決まったとして話があった。
何と、私が東京の管理責任者を兼任することとなり、東京の管理責任者採用は凍結されたのだ。

え!?聞いてないよ!

かくして、後任の東京の管理責任者という立場で、新オフィスの工期と工事費の確認を進めて行った。
そしてわかった。実は当社側の確認や未回答の宿題事項があり、当社側が業者に対して迷惑をかけていたのだ。
当然にして、その残務処理に奔走されることとなった。こんな内容を、このタイミングでバトンタッチとかあり得んやろ。責任者として今まで一体何をしてたんだ!と心底思った。

さらに、管理部門の人員削減と、ルーチンワークとは別枠で新たなMissonを担当することが重なって行った。休日返上でとにかく死に物狂いで働いた。

今思えば、このあたりで働き方を真剣に考えておくべきだった。
まさか、自分がストレスによる突発性難聴になるなんて。

つづく
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す