主要中銀のスタンスを再確認

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パウエルFRB議長は28日、ポルトガル・シントラで行われたECB主催の会合で、FRBの政策金利が物価安定を達成するには「十分に景気抑制的ではないかもしれない」としました。
また、今後の会合での利上げについて「検討から外していない」と明言し、7月25・26日の次回FOMC以降における追加引き締めに含みを持たせました。

パウエル議長はFRBが昨年3月以降、計5%に及ぶ急ピッチの利上げを進めたが、米経済は好調な労働市場などにけん引されて依然として強いと指摘。
インフレ率を2%に低下させる上で金利水準は「十分に景気抑制的ではないかもしれない」と話しました。
パウエル議長は、今回の利上げ局面が事実上のゼロ金利から始めたことで、政策金利が抑制的な期間は「それほど長くはない」と分析。ただし、今後引き締め効果が次第に表れると見込んでます。

利上げの行き過ぎと不足の両リスクを巡るバランスに関しては「より均衡してきているが、まだ均衡していない」と言明。
「もっとやるべきことがあり、一層の利上げが適切な可能性がある」としました。
また、インフレ指数の大きな部分を占める住居費に関し、新規家賃契約の動向から「大幅なディスインフレがパイプラインにある」と言及。もっとも、住居費のディスインフレが確認されるには「12〜18カ月かかる」と予測しました。

さらに、住居費を除いたサービス価格の沈静化では「さほど進展していない」と懸念。労働集約型の業種が多いサービス分野の価格低下には、「労働需給の一段の均衡や労働市場のいくらかの鈍化を目の当たりにする必要がある」としました。
その上で、米国のインフレ率について、特にコア項目では「今年と来年、2%には戻らない」と見通してます。
さらに「インフレが急低下し、2%へ戻ると確信すれば、金融緩和を考え始められる」としたものの、利下げは「今もしくは近い将来、考えていることではない」と断言しました。

一方、ラガルドECB総裁も「7月に利上げをする可能性が高い」と利上げ継続の姿勢をみせました。
BOEのベイリー総裁は、年末までに金利を現在の5%から6.25%に引き上げるという観測が市場で織り込まれていることについて、市場の予想が正しいかどうかは「いずれ分かるだろう」としております。

しかし、植田総裁は同会合で、大規模金融緩和策継続の必要性を表明しました。
インフレ率が鈍化した後に2024年に再び加速することが「合理的に確信」できれば日銀が金融政策を転換する十分な理由になるとしました。
日銀は、過去の輸入物価上昇の影響が薄れるためインフレ率上昇が「しばらくの間」鈍化し、その後24年に再び上昇すると予想しております。
しかし、植田氏は24年に再上昇に転じるかは不透明としました。

また、ヘッドラインインフレ率(総合インフレ率)は3%を超えてますが、基調的インフレ率は日銀の目標である2%を下回っているため、金融緩和を続けていると指摘。
賃金の伸びもインフレ見通しを判断する重要な要素であり、インフレ率が安定して2%超となるためには、賃金の伸びが一貫して2%を大きく上回らなければならないとしました。

植田総裁は、十分な賃金上昇を伴ってインフレ率の2%回帰を持続的に達成するには「まだ幾分の距離がある」としました。
日本円については、他の中銀の政策など「日銀の金融政策以外の多くの要因」に影響されるとし、「状況を非常に注意深く監視する」と言及。為替介入の可能性について、その判断は財務省にあるとしました。

日本の人口減少により労働市場はタイトな状態が当面続くと想定されることは、企業に賃上げ継続を促す「良い兆候だ」とし、また、インフレ期待や企業の価格設定行動にも変化が見られると指摘しました。
ただし、それでも日銀はインフレ期待をゼロから2%に押し上げるのに苦戦しており、世界的に中銀が一斉に金融引き締めを行う中、緩和を続ける異例の存在となってます。
植田氏は「インフレ期待が上昇する兆しは見えているが、完全に2%に達するほどではない」としました。

ECB・BOEはタカ派であり、FRBはややタカ派、しかし、日銀はまだ緩和継続です。
これらのスタンスは、今後のインフレ指標や賃金動向などで変化するでしょう。
見えているとこは、FRBがいずれ利上げを停止せざるを得なくなることと、日銀が政策の変更を強いられることであります。
来年には金融市場の大きな変化が見られることになり、本年後半はその準備期間になりそうと考えてます。
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