中小企業経営のための情報発信ブログ513:本の紹介 経営に終わりはない

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今日は、藤沢武夫著「経営に終わりはない」(文春文庫)という本を紹介します。著者の藤沢氏は、本田技研工業の副社長を務め、本田宗一郎氏の名参謀として二人三脚でホンダを一流の世界的企業に育て上げた経営者です。この本は、そうした名参謀が自らの半生と経営理念・経営哲学について熱く語っています。古い本ですが、今なお経営者の心に響く言葉があると思います。
この本の中から、いくつかの言葉を紹介します。
・私は人間を判断するときには、その人の過程を見るようになりました。人と人との間を結びつける条件は、まず信頼であり、いたわりであると思います。その基本は家庭にあるんです。だから、家庭を大事にしない人、奥さんを大切にしない男はダメです。芸術というのも人と人とのふれあいから生まれるものであるとすれば、家庭も芸術でなければならないし、経営も芸術だろうと思うんです。物ではなく心である、ロマンチストとしての私と企業経営の接点はそこにあるんじゃないでしょうか。
・中国文学の吉川幸次郎先生が「経営の経の字はタテ糸だ」と書いておられるがうまいことをおっしゃる。布を織るとき、タテ糸は動かずにずっと通っている。営の字のほうは、さしずめヨコ糸でしょう。タテ糸がまっすぐに通っていて、初めてヨコ糸は自由自在に動く。一本の太い筋が通っていて、しかも状況に応じて自由に動ける。これが「経営」であると思う。
・帰りのお客さんの顔をよく見て商売しろ、ということでした。つまらなさそうな顔をして帰ったら、もう二度と来ない、それが商売の鉄則だということですね。
・古い知識を今振り回していたら時代に取り残される。私たちはそういうものを知らないからいいのだ、ということはその通りかもしれない・・・昔を知らないから、戦後の急激な流れの変化に対応できたのでしょう。
・なんと言っても金には魅力、というより魔力があります。しかし、金儲けをする能力ならば、本田宗一郎より私の方が上です。しかも、私はやろうと思えばできないことはない地位にいた。しかし、どんな場合でも本業以外で儲けることはやりませんでした。個人でもやりません・・・自分の身の回りはいつも身ぎれいにしている。だから、みんながついてきてくれる。つまり、私が何を言っても安心していられるのは、私の身ぎれいさ、それが重要なポイントです。そうすれば、私が苦しむ時に、みんなにも苦しんでくれと言えます。
・本田技研において、国家の軍事力に相当するものが技術力だとすれば、外交に当たるものは営業力です。この技術と営業とのバランスが取れていなければまらない。ところが、往々にして、技術はその力を過大に思いがちになる…やっぱり、どんな場合にもバランスを取っていかないとつまずくということです。技術の力に過大な期待を持ちすぎてしまった。現場の方から楽観的な見通しが出ても、それを冷静に判断して、絶対にバランスを崩してはいけない。
・課で一つの書類を持てばよろしい。それぞれの書類はファイルで閉じて、課全体で利用する・・・帰宅するときには、その日に未処理の書類以外、一切机の上にはおいてはならない・・・自分の机にいろいろな書類が溜まっているのは、能力がないという査定になる。能力のある人は、さっさと片付けて、書類棚に入れてしまうわけです。
・技術者がほかの従業員にお金の説明ができるような企業体にしたい。お前が働いている仕事が一体いくらになるか、こういう方法に変えるとどのくらいのコストが安くなるかということを、第一線で働いている人たちに分からせるようにしたい。そのためには技術者自身に説明できる知識が必要です。経理の人が説明しても、威張って話すものだから聞いている者がよく呑み込めない。技術についても同じことが言える。どうせ素人だからわからないだろうという態度で、分からないことだらけにされてしまう。これでは困るんです。技術者がお金を知らないと、部長になっても、工場長になっても、重役になっても大変です。毎日ハンコを押す仕事ばかりが増え、お金のことも知らないと判断できないものがいっぱいあります。
・課長や部長は、未来を見通す力、リードできる力を持っていなければなりません。商品の価値は技術屋だからわかるんですが、その価値とお金の流れとの両方を知らなければ経営はできないということです。
・人間に欠点などないということはありません。社長には、むしろ欠点が必要なのです。欠点があるから魅力がある。付き合っていて自分の方が勝ちだと思ったとき、相手に親近感を持つ。理詰めのものではダメなのです。あの人(本田宗一郎)には、それがあります。欠点があるから他人から好かれないかと言えば、あれだけ人に好かれる人もめずらしい。社員からも好かれている。本物の自分を持っていること、技術では本物だということ、それで十分です。後のことは他の人がやればいい。
・本田宗一郎のつぎを、一人で賄えるという人はいない。また、その必要もない。一人でやったら、これはかえって危険です。そこで、複数の知恵を集めれば、本田宗一郎よりもプラスになる。本田宗一郎の持っている力よりもレベルの高い判断力が生まれる。そういう体制を作らなければならないのです。
・私は仕事を片付けるとき、後でそれがガンにならないよう、多少手荒なことがあっても、将来のことを第一にいつも考えていました。企業には良いことも悪いこともあるのだから、禍を転じて福とする、その橋を見つけ出すことが経営者の仕事なのだと思います。
・禍を福に転ずることができるかどうかは、経営者が仕事の根本にかえって問題を考えるかどうか、そして大胆に行動しうるかどうかにかかっていると思います。
・ホンダがここまで成長してこられたのも、万物流転の法則に載っているからです。けれども、ホンダがいつか大きくなったときに、やはり新しく進出してくるものに負けるというのが万物流転の掟です。こんどはその万物流転の法則を避けることができるかということを考えなければなりません。それが新しい組織づくりの元本になるのです。
・「人間に一番たまらない苦痛は何か」と聞かれれば「する仕事のないことである」と私は答える。する仕事をいっぱい持てる会社に一生務められれば幸いと言えるもしれない。その仕事を皆で組み合わせて、作り上げるのが会社という組織だ。
・「企業は人だ」という。私もそう思った。とすれば、その中で働いている人たちの記録こそ、企業の成長の姿と言えるのではないだろうか。それぞれの個性と業績を明らかにしておく場、この人とこの人を結び付ければ、新しいものを生み出せるかもしれない、ということになるし、またこういう能力を持った人が欲しいという時にも役立つわけです。万物流転の掟の元に衰えていった企業は、そういう人間の使い方をしていなかったからだと思います。極端に言えば、従業員の様々な功績を社長が全部取ってしまう。そうしてその下にはおべんちゃらのビラミッドができてしまう。
・ホンダも私も、面白がって企業をやってしまう方ですが、もしもこれをつぶすようなことをしたら、企業を起こした功績どころか、かえって社会に害悪を残すことになってしまいます。やらなければ迷惑を被る人はいないけれども、やる以上、迷惑をかけないようにするためにはどうあるべきかを考えて組織を創らない限り、創設者の意味はない、というのがわたしたちの考えだったわけです。
・日本は、戦前の受注生産といったようなやり方でやってきた。それが戦後になって、急に大衆こそお客様ということになって、一切合切がむしゃらに進んできてしまった。企業の将来性ということ、企業の基本的なあり方というものを、ろくに掘り下げもせず、検討されないままに、大衆が欲しいといっているからといって、作りまくり、それを三角形の組織でやってきた。ここが問題だと思うんです。
・世界をリードしていける、つまり、ここ1年や2年の勝負ではなく、50年、100年というものをリードしていける体制を作って、次の人にバトンを渡していく義務をわれわれ(経営者)は持っています。重要なことは、いつでもリードしてゆけるには、どうすればよいかということですが、これは、刻々と変化する情勢を的確にキャッチして、企業の中に入れ、組織の中でこなして、それを安定さdセ、次の人にバトンを渡すということです。
・私の経営信条は、すべてシンプルにするということです。シンプルにすれば、経営者も忙しくしないで済む。そのためには、とにかく一度決めたら、それを貫くことです。状況が変わっても、一筋の太い道を迷わずに進むことです。
・たいまつは自分で持て。これは人から教わったり、本を読んでいた知識ではなく、自分の味わった苦しみから生まれた実感なのです。どんなに苦しくても、たいまつは自分の手で持って進まなければいけない。これが私の根本の思想であり、またホンダのモットーにもなりました。
 藤沢氏は、最後に
 「採算に合うか合わないかということより、いちばん大事なことは、自分たちは何をしてきたかということ。金なんてものは、いつかなくなる。自分が思い切りやりたいことをやってきたからには、子供にも、自分のやったことを語り継げるような人生を送らせたいと思っているのです
と言って締めくくっています。
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