中小企業経営のための情報発信ブログ264:多様性のメリット協調は逆効果にもなる

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今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
多様性、ダイバーシティについてはこれまでも書いてきています。
あらゆるところで多様性が求められ、組織において女性を登用したり外国人を採用したりと、取り組んでいるところも増えています。しかし、多様性を高めようと女性や外国人を採用しても何も変わらないという声もよく聞きます。それは、多様性の本質を理解せず、女性や外国人を採用することが多様性だと思い込んでいるからです。多様性は目的ではありません。これも手段です。世の中が「多様性!」と叫ぶのでとりあえず採用したが、何のために採用したのか、多様性によって解決したい課題が何なのかが明確でないからです。
1.解決したい課題を明確にする
 多様性を高めるために、女性や外国人を採用したとしても、そもそも何のために多様性を高める必要があるのでしょうか。このことを考えることなく、女性や外国人を採用しても変化が起こるはずはありません。
 日本人の中年男性だけで阿吽の呼吸で行なっていた仕事を女性や日本語の理解が不十分な外国人に一から説明するのは大変ですし、コミュニケーションミスも起こります。これでは生産性が低下する恐れがあります。一方で、長期的に物事を捉え自由に将来を構想するという活動においては、多様な意見や考え方が有効に働きます。
 盲目的に社会の流行だから多様性を高めようとするのではなく、解決する課題が何かを明確にし、その解決の手段として多様性の採用が役立つのかを検討することです。
 「多様性」というのは、「個人や組織の間に存在するさまざまな違い」のことです。したがって、女性活用や外国人採用ではありません。性別や国籍に留まらず、宗教、価値観、障得者、ライクスタイルといったあらゆる観点からの多様性を意味します。多様性やダイバーシティの基本は多様性でくくられることになった特性を持った存在を認め合い活かし合うことです。外国人、女性、障得者、若手、パート、再雇用者などといった区別されやすい存在を差別的な目で見ることなく、認め合い、いかにその特性を活かし活躍できる環境を作っていくかが大切です。
2.多様性のメリット強調は逆効果
 多様性によって組織の能力が高まり、士気や生産性が向上することで会社の業績が改善するという主張がなされることがあります。しかし、こうしたビジネス上のメリットを強調して多様性の取組みを正当化することが逆効果になることもあります。
 以前にも書きましたが、組織の多様性を高めるには、二者が対立する構図があって初めて少数者も多様性に貢献できるのです。こうした二項対立の構図がなければ、新しい属性を増やしても、新しい属性は元からの属性に飲み込まれて、その存在すら消えてしまいます。
 例えば、外国人を採用したとしても、日本人の考え方を押しつけていたのでは多様性を高めることにはなりません。日本で生まれ育った外国人を採用しても日本人と同じ思考回路かも知れません。外国人や違った考え・価値観を持った人が自由に意見を言えて、その意見が採用されるという構図をつくらなければ意味がないのです。圧倒的に日本人や男性が多い組織の中で自然とそのような構図が生まれることなどあり得ません。意図的につくるしかないのです。
 多様性のメリットばかりを強調するだけでは何も生まれてこないのです。
 また、ある研究チームの調査によれば、多様性のビジネス上のメリットを強調する企業に対し、好感を持てない人の割合が高いことが判明しています。そのような企業では、自分がステレオタイプに基づいて扱われるのではないか、自分と同じ集団に属する人と交換可能な存在と捉えられるのではないかという懸念や不安を抱く人が多いのです。そして、多様性のメリットを協調する企業への就職に対して消極的になるのです。このことから、多様性のメリットをあまりに強調することは逆効果になることがわかります。
 この研究結果では、少数派が好感を抱いたのは、多様性の取組みを正当化する表現のないメッセージです。多様性は必然的なものであり、敢えてそれを正当化する理由の説明などいらないのです。理由をつけて正当化しようとするから、却って胡散臭く見られてしまうのです。
3.多様性だけでは業務向上は望めない
 先程も書きましたが、女性や外国人を採用しただけでは業績改善は望めません。重要なのは、多様性をどのように活かすかということです。適切な措置なくしては、労働力に多様性を持たせたところで、逆に緊張や争いを生むだけで生産性向上には繋がりません。
 クレディ・スイスの調査結果で、女性の上級管理職の割合が15%以上の企業は、10%未満の未満の企業よりも利益率が50%以上高いとされ、この調査結果から、女性管理職を増やせば、業績が上がると短絡的に発想をする企業もあります。しかし、多様性を採用しても、こうした高い目標が達成できないと、多様性施策に対する失望に繋がります。利益が上がって業績がよい状況なら、多様性のメリットを協調しすぎても問題はありませんが、業績が下降傾向になると、多様性の取組みが無意味で役に立たないものという考えに変わってしまう恐れがあります。
 多様性というのは、さまざまな考え方や価値観を持った人を採用することです。現在のように複雑で何が正解かわからないような時代で、複雑な問題を考えるときに、正しい考えばかりでなく(何が正しいかすらわからない)、「違う考え」も必要です。違う視点で物事を見ることで、これまで見えなかったものが見えるようになります。もともと人間は、無自覚にバイアスがかかっているので、自分の視点でしか物事を見ることができません。それでは盲点に気づくことはありません。多角的な視点を持っていれば盲点も少なくなります。
 同じような人の集団はパフォーマンスも低く、盲点も共有しがちです。同じ考えをするのでミスにも気づきません。チームや集団、組織に欠かせないのが多様性です。集団や組織に必要なのは、人種や性別といった「人口統計学的多様性」ではなく、価値観や考え方といった「認知的多様性」です。
 女性や外国人といった「統計学的多様性」ではなく価値観や考え方の違いといった「認知的多様性」を高めることです。それによって、これまで思いつかなかったアイデアが生まれ、それによってイノベーションが起きるかもしれません。
多様性にそれを正当化する理由などいりません。必要なのは会社が抱えている課題を明確にして、その解決に多様性が役立つかどうかということだけです。
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