#318 ネット通販の「定期購入」、規制強化で何が変わった? 

記事
コラム
ネット通販の「定期購入」、規制強化で何が変わった? どんな点に注意? 専門家に聞く



 インターネット通販の一種である「定期購入」でトラブルが増え、規制が今年から強化されました。どのように変わったのでしょうか。
そもそも「定期購入」は消費者にとって、どのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
消費生活アドバイザーの池見浩さんに聞きました。
最終確認画面が「最後のとりで」




Q.そもそもインターネット通販の「定期購入」とはどのような仕組みなのでしょうか。

池見さん「定期購入とは、一度契約したら、その後は一定期間、取引条件に基づいて定期的に商品が届いたり、サービスが提供されたりする取引形態です」



Q.定期購入のメリット、デメリットは。

池見さん「メリットは、いつも買い足して補充している商品などを定期購入で一度注文すれば、その後は一定間隔で届き、買い忘れを防げる点です。
例えば、トイレットペーパーなどは、店から運ぶのに大きな荷物になります。通信販売の定期購入にすれば、決まった時期に自宅まで配達してもらえるので便利です。
また、単発ではなく、継続して複数個まとめて契約するため、その分安く買える場合があります。



デメリットは、原則として、契約期間が終わるか、契約した回数分を購入しないと解約できないことです。
『ちょっと試しに買ってみたが、気に入らない』という場合でも、自己都合で解約は認められず、最後まで買う必要があります。
どうしても途中で解約する場合、解約手数料などの違約金を支払うといった特約に従うケースがほとんどです。
また、契約期間や購入回数の縛りがない『いつでも解約可』の契約でも、実際は規定の解約期限を過ぎると買わねばならない場合があります」



Q.定期購入によってどういったトラブルが起きているのでしょうか。

池見さん「一番多いのは、『初回お試し価格の商品だけ注文したはずなのに、2回目の商品が届いた』といったトラブルです。
また、『お試しだけでやめようと思ったら、規約上4回購入した後しか解約できないと断られた』
『途中でやめるなら、初回分の格安な販売価格と定価との差額を払ってほしいと言われた』
『いつでも解約可と書いてあるのに、実際は次回商品の発送予定日の10日前までだった』など、中途解約に関するトラブルも多発しています。


『解約したいが、電話がつながらない』『電話で解約できるはずが、LINEやウェブからしか受け付けてくれない』など、販売業者の応対の問題もあります。最近増えているのは、注文作業中に意図しない『まとめ買いコース』へ注文が切り替わるトラブルです。
例えば、『いつでも解約できる』『4回購入する』定期購入の注文入力が終わる頃に、突然、『もっとお得なまとめ買いコース』の表示が出て、その後注文完了ボタンを押すと、一度に多数の商品と高額な請求書が届く、といったパターンです」



Q.6月の改正法施行によって、どのように変わったのでしょうか。

池見さん「『特定申込み』(業者所定の注文書かネットでの申し込み)を受ける業者に対して、広告画面や最終確認画面の記載表示事項の規制を強化しました。
問題がある表示内容を消費者が誤認して注文した場合、契約を取り消せる民事ルールも追加されました。



[広告や最終確認画面で表示しなければいけない内容]
(1)定期購入やサブスク契約の場合は、その旨
(2)価格…送料別の場合は、商品代金と分けて明記。定期購入は初回だけでなく2回目以降も明示。回数縛りがある場合は総額も併記
(3)定期購入の場合も含めて、各回の数量・支払時期・次回分の発送時期
(4)申し込みの撤回・解約時の連絡方法と連絡先、返品や解約の条件など
(5)申込期限がある場合はその期限


[人を誤認させる表示の禁止]
(6)例えば、有償契約なのに『無料プレゼント』と強調して消費者が誤認するような表示
(7)『初回○○○円!』『お試し』などと大きく強調し定期購入条件は極小に書く、『いつでも解約可』と強調し解約期限があるなどの表示
(※具体的な表示画面例は、消費者庁の『通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン』をご参照ください)

(1)~(5)での事実と違う説明や不表示、(6)や(7)での禁止表示を見て消費者が誤認し契約した場合、取り消しが可能になりました」



Q.改正法施行の効果は。
池見さん「改正後の相談状況の統計がまだ公表されていないため、効果を具体的な数値でお伝えすることはできません。
ただし、定期購入の通信販売業者の多くは、改正法施行後、法令に従った表示内容に変更している傾向が見られます。
その結果、肌感覚としては、業者の表示内容に問題があるトラブルは減少傾向にあるように思えます。



また、電話の受け付け体制についても、以前よりは、つながりやすい状況になりつつあります。
その一方で、注文する消費者側に原因があるトラブル、具体的には表示内容や利用規約、特約などをよく確認せずに注文して起きるトラブルは、減っていないと思われます」



Q.定期購入で注意すべき点や、トラブル時の正しい対処法を教えてください。

池見さん「トラブルの有無に関係なく必須の事項は次の通りです。
・販売ウェブサイトの広告画面と最終確認画面(注文時)、利用規約、特定商取引法に基づく表示をスクリーンショットで証拠保存する
・取引条件は細かくても必ずきちんと読む
・注文受け付けメールの内容を確認し保存する
・不安や疑問などは、消費生活センターに相談する(局番なし188)
トラブルが起きたら、次の点に注意してください。
・届いた商品は開封せず、使用しない
・業者の了解なく受け取り拒否や返品はしない。解決が困難になります
・ネット上の書き込みをうのみにしない
・『通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン』を参考に、ウェブ表示の問題点をチェックする
・業者に問題点を具体的に伝えて、契約の取り消しや解約
034.jpg



サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す