#53 コロナ後遺症「体内が振動」 注目高まる手足の震えも、原因は不明

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コロナ後遺症「体内が振動」 注目高まる手足の震えも、原因は不明

コロナ後遺症に苦しむモリソンさんは、体内の振動はまるでジェットコースターに乗っているようだと話す




 ケリー・マクロッセン・モリソンさん(50)にとって、その感覚はまるで電動歯ブラシが胸の中で作動しているかのようだ。あまりに強烈な感覚のせいで、深い眠りから覚めることもある。

 「誰かがベッドの上に何かを置いて、それが振動しているような感じ」だとモリソンさんは言う。

「体が内側から動いて、振動している。夜は本当にひどい」


 モリソンさんが語る異常な体内振動と体の震えは、新型コロナウイルス感染の後遺症患者の支援者の間で最近注目されている。

支援者は医師や研究者に議論を促そうとしている。


 ニューオーリンズの病院で移植コーディネーターを務めるモリソンさんは、2020年3月にコロナ検査で陽性となった。

それ以来、こうした感覚を含めて複数の症状を経験しているという。


 後遺症患者はコロナ感染者の10~30%を占めると推計され、倦怠(けんたい)感や認知障害、息切れ、しびれや痛みといった感覚異常など、さまざまな症状に見舞われている。

体内の振動や体の震えは一般的でなく、それほど注目されてこなかった。


 だが、コロナ後遺症の患者団体「Patient-Led Research Collaborative(患者主導の研究協力)」による今夏の調査では、患者の約4割が震えを、3割は振動する感覚を経験したと報告している。


 医師らによると、振動や震えを経験する患者はおそらく少数だ。ノースウェスタン記念病院やマウントサイナイ病院の外来診療所では、そのような感覚を訴える患者は多くないという。ただ、メイヨークリニックのコロナ後遺症外来では、患者にそうした症状があるか尋ねており、かなりの割合の患者がそうした症状を訴えていることが分かっている。





 「かなり頻繁に見られる」と語るのは、メイヨーのグレッグ・バニチカチョーン医師(産業・航空宇宙医学)だ。急性感染から3カ月以内のコロナ後遺症患者を担当している。

同氏の推計では、メイヨーの後遺症患者の約40~50%で、急性感染から3カ月の間にそうした症状が見られる。

患者によっては非常に消耗する症状だが、他の患者にとっては不快な感覚といったところだ。



 この謎めいた症状の原因は、医師にもわかっていない。多くの後遺症患者に見られる自律神経系の機能障害や、神経の損傷が原因との見方もある。

あるいは、脳内の処理機能の問題ではないかとの指摘もある。



モリソンさんの体内の振動は発作のような症状にまで進行し、現在は発作用の薬を服用している

 メイヨーのコロナ後遺症研究・臨床責任者、ライアン・ハート氏は体内の振動を含む無数の神経症状に苦しむ患者について症例報告をまとめた。報告書は査読段階にある。





 ハート氏によると、倦怠(けんたい)感に苦しむ一部の後遺症患者の脳スキャンでは、脳の機能または活動の低下が見られる。

これは神経炎症あるいは血流障害が原因になっている可能性があるという。

もう一つ考え得る要因として、脳が過剰反応する中枢性感作症候群があると同氏は話す。



 「痛みは脳で感知される」とハート氏。「脳が刺激に非常に敏感になる。つまり、問題は神経の圧迫ではなく、全ての情報が処理される脳にあるのかもしれない」という。 そうしたケースでは、神経系の損傷である神経障害のように感じられるものは、必ずしも神経に起因するものではなく、脳に起因していることになる。



 ニック・ギュテさんによると、テレビシリーズ「ドーソンズ・クリーク」の脚本家で妻のハイディ・フェラーさんは1年以上にわたってコロナ後遺症に苦しんでいたが、5月に自殺した。50歳だったフェラーさんは、亡くなる前の1カ月、体内の激しい振動で夜も眠れなくなっていたという。





 「震えが始まった当初は、何とかできていた。1〜2分程度のものだった」とギュテさんは言う。「夜中に始まる体内の振動で、限界に追い込まれた。

携帯電話を胸に差し込まれ、振動させられているようだと彼女は言っていた。それで目が覚めてしまい、2時間しか眠れなくなった」




 ギュテさんは妻の死後、コロナ後遺症患者を支援するようになり、元患者の団体「サバイバー・コープス」の諮問委員会に加わった。

他の人々も体の内外の振動を経験しているかどうかを確認するため、先ごろ別の研究の推進も助けた。この研究では、ソーシャルメディアで募集した患者数百人の体験談を分析。まだ査読前だが、結果は12月にプレプリントサーバーmedRxivに掲載された。



 研究の共著者であるイエール大学医学部の血管神経学者、リカ・シャーマ氏によると、患者のコメントやメールには、震え、痛み、振動、焼けるような感覚など一連の症状が周期的または恒常的に発生し、数カ月続くと記されていた。

前出のモリソンさんの体験も、この研究に含まれている。


 シャーマ氏は、最初の感染症に関連した、一定の末梢(まっしょう)神経系または中枢神経系の調節障害が症状を引き起こしているのかもしれないと推測している。もう一つ、感染後の炎症反応が原因の可能性もあるという。



 モリソンさんは体内の振動が発作のような状態にまで進行し、現在は医師から処方された発作用の薬を服用している。

症状があまりに重くなり、5月に仕事をやめざるを得なくなったため、長期障害給付を申請中だという。


 モリソンさんによると、コロナ感染から数カ月して始まった体内の振動は、ジェットコースターに乗っているかのようだ。

それは目に見えるほどに進行し、時には足や腕がけいれんするようになった。


 他にも、頭がもやもやする、疲れやすい、頭痛がするなど、いろいろな症状があるが、体内振動が一番怖いと言う。「運転するのが怖い。

自分の体なのに、コントロールできない」と話した。


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