ひと昔まえ、頻繁に一緒に演奏していた大先輩がいてね
とても力強いんだけど、繊細で柔らかくて、とても色気のある音色でね
そのひとと演奏するのは楽しかったんだよね
一つ一つの音を丁寧に、まるで自分の子どものように扱っているからか
全部が美しかったね
そんな稀有な音を出す手元を見るとね、指の動きが非常にやわらかいんだよね
ただ面白いのが、そのひとの指、びっくりするくらい太いんだよ
ごっつい指なのに、きめ細かい音を出すことができるのか不思議だった
そうかと思うと、わたしの師匠の手は、指が長くてね、綺麗な手をしてたね
まぁ、両者とも大きな手だった
その方々の手を見るのが好きだったな
だからかわからないけど、手を見るのは好きなんだよね
そのひとの年輪みたいな気がしてね、歴史を感じるよね
ごつごつ、しわしわ、ほっそり、やわやわ、色んな手があるね
わたしも弦楽器に触れていた時の自分の指先が硬かったのは
なんだか愛おしかったね、指紋もなくなってたのも楽しかった
ある種フェティシズム的な視点かもしれないけども
そんな感じで、ひとの手を見たりするのは楽しいね