調剤基本料の違いを患者さん視点で考える

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コラム
薬剤師は医薬品の専門知識だけで十分だと思っていませんか?
これから先の超高齢化社会において国が求めている薬剤師は、「かかりつけ薬剤師・薬局」への期待や、「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」を構築するための学習や自己研磨が求められています。学習するにあたっては、調剤報酬制度や薬機法等について学ぶことも重要になります。


Pointをチェック
Point 1
調剤基本料の違いで、3割負担の患者は年間約4,000円前後の差が生まれる(月2回定期薬を処方してもらう場合)

Point 2
後発品医薬品の調剤に積極的な薬局や24時間体制が整備されている薬局は調剤基本料の点数が加算される

法律の知識
・調剤基本料1  42点
 調剤基本料2、3、特別調剤基本料の要件に該当しない薬局
・調剤基本料2  26点
① 処方箋受付回数4000回超/月・集中率70%超
② 処方箋受付回数2000回超/月~4000回以下/月・集中率85%超
③ 処方箋受付回数1800回超/月~2000回以下/月・集中率95%超
④ 特定の医療機関の処方箋受付回数4000回超/月
・調剤基本料3 イ 21点
① 同一グループで処方箋受付回数が月3万5千回超~4万回・集中率95%超
② 同一グループで処方箋受付回数が月4万回超~40万回・集中率85%超
・地域支援体制加算 38点
<施設基準>
① 地域医療に貢献する体制を有することを示す実績
② 患者ごとに、適切な薬学的管理を行い、かつ、服薬指導を行っている
③ 患者の求めに応じて、投薬に係る薬剤に関する情報を提供している
④ 一定時間以上の開局
⑤ 十分な数の医薬品の備蓄、周知
⑥ 薬学的管理・指導の体制整備、在宅に係る体制の情報提供
⑦ 24時間調剤、在宅対応体制の整備
⑧ 在宅療養を担う医療機関、訪問看護ステーションとの連携体制
⑨ 保健医療・福祉サービス担当者との連携体制
⑩ 医療安全に資する取組実績の報告
⑪ 集中率85%超の薬局は、後発品の調剤割合50%以上
・後発医薬品調剤体制加算1(調剤調合75%以上) 15点

解説
調剤基本料は、調剤薬局で処方箋に基づいて調剤したことに対して、患者さんに支払ってもらう報酬のことで、処方箋を受け取った時1回につき1回算定できます。そして、この調剤基本料は、薬局によって異なります。
2020年の調剤報酬改定において、調剤基本料2を算定する薬局(例:門前薬局)は26点、調剤基本料3を算定する薬局(例:チェーン展開している大規模な薬局)は21点、調剤基本料1を算定する薬局(例:町の薬局)は42点など調剤基本料の点数が異なります。
さらに在宅患者さんに対する薬学的管理・服薬指導や、4時間体制が整備されている薬局は38点が加算され、後発品医薬品の調剤に積極的な薬局では15点加算されることもあります。
これらが積み重なると調剤基本料が、80点や95点になります。
加算の点数は1点10円で計算され、その他の費用と合計して金額が算出されます。その金額から医療費の一部を患者が支払います。これを一部負担金といいます。
一部負担金は主に3割負担(現役世代等)、1割負担(75歳以上の高齢者)などに分別されます。3割負担患者の場合、調剤基本料の自己負担額は、調剤基本料1を算定する薬局では126円(420円×0.3)、手厚いサービスが受けられる薬局で285円(950円×0.3)などの違いが生まれます。
一回あたりだと159円の差ですが、月2回定期的なお薬を処方してもらっている場合は、年間約4,000円前後の差が生まれることがあります。
この差を担当した薬剤師や患者さんがどう感じるかです。
もし、患者さんにこのような質問された時は、患者さんの立場になって話を聞き、納得のいく説明をしてあげましょう。

2020年調剤報酬改定で調剤基本料はどう変わったの?

調剤基本料2では、算定対象となる薬局の範囲が拡大されました。処方箋受付回数1,800超/月~2,000回以下/月・集中率95%を超える薬局が、今まで調剤報酬1を算定していたのが2へ減算されます。
調剤基本料3の対象となる薬局も範囲が拡大されました。グループ全体の処方箋受付回数が35,000回超/月~40,000回以下/月のグループ薬局が、集中率が95%超なら減算が確定、95%以下でも、特定の医療機関との間に賃貸契約があれば減算となります。
特別調剤基本料は点数が2点減点され、これまでは病院の敷地内薬局が対象でしたが、改定により診療所の敷地内薬局(クリニックビル内の薬局は除く)まで対象に広げられています。さらに集中率95%超から70%超にまで拡大されました。
なお、処方箋受付回数に関係なく「不動産取引その他の特別な関係」「集中率70%以上」を満たせば対象になります。
また全ての調剤基本料において、複数医療機関の処方箋を同時に受け付けた際の2回目以降は、実質20%減算されます。

これからの薬剤師に必要なポイント

2020年調剤報酬改定により、調剤基本料1以外を算定している薬局は、経営が厳しくなっており、今後の改定でもさらに経営が厳しい局面にさらされるでしょう。
これから先、調剤薬局の厳しい経営を乗り越えていくためには、薬剤師として「コミュニケーション力」を有していることがとても重要です。
なぜなら地域医療においても医師や看護師、ケアマネージャーなどの多職種と連携することが求められ、医療従事者間のコミュニケーションも以前にも増して重要になりつつあるからです。
また外来調剤においても、残薬調整や服用薬剤調整支援のために医師に連絡を取ることも多く、医師との関係性が良好であることが重要です。
今回の事例では、患者さんの自己負担額について示しましたが、患者さんにどう納得してもらうかは薬剤師の「コミュニケーション力」にかかっています。
「コミュニケーション力」を発揮するには、日常の業務で研鑽を重ねると同時に、調剤報酬制度を含めた生涯学習に取り組むことで、時代とともに進歩する医療・薬物治療の高度化に対応することが求められています。
しかし自分だけが学習するのは本末転倒です。周りには共に働くスタッフがいますので、スタッフも共に学習し業務の役割分担をしていきましょう。
調剤報酬制度は、調剤薬局で働く薬剤師の今後の将来にかかわる重要な基準が記載されており、日々刷新されています。気づいたら新たな制度や政策が始まっていたということにならないように、今後も最新情報に目を配ることが大切ですね。
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