純愛

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 ある日B君に、学生時代に下宿していた下宿先の旦那さんから電話がありました。「実は娘が病に侵され、余命いくばくもない。娘は君に会いたがっている。会ってやってくれないか。」そこの下宿先には、当時中学生だった娘さんがいました。
 B君は詳しい事情もわからないまま、とりあえずその下宿先の家に車を走らせました。家に着いて中に入ると、ご両親とともにすっかり大人になった娘さんが、衰弱した姿で横になっていました。
 「B君のふるさとを見たい。」娘さんが言いました。どうしたらいいか迷っていると、「ぜひ連れて行ってやってください。」とご両親から頼まれました。借りた毛布で彼女の痩せた身体を包み、車の助手席に乗せてB君は自分の家に向かいました。
 1時間ほどで彼の住む町に着き、彼は案内を始めました。「ここが役場。
「ここが卒業した小学校。」「自転車で通った中学校。」夏休みに泳いだ川や
スキーをした小高い丘、そして自分が生まれ育った自宅などを案内しました。
ひと通りを案内し終わり、彼女の家に帰る車の中で彼女はこう言ったそうです。
 「私、B君のお嫁さんになりたかった。」

 どれくらいの月日が流れたか、彼女は亡くなりました。その後しばらくの間、B君は毎晩のように酒をあおり、すさんだ日々を過ごしていたのを覚えています。
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