「推しの子」が面白かった話

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コラム

少し前、お客様と電話で雑談していたときのこと。

「最近面白い漫画・アニメってある?」という話になりまして。

私は「ハイパーインフレーション」を推したのですが、お客様からは「推しの子」がいいよとオススメされました。

空き時間に第一話だけ観たのですが、面白かった。

でもそれ以上に登場人物の「アイ」という少女の考え方・生き方が、ストンと腑に落ちたんですよね。

一応ネタバレになりますので、ここから先は注意でお願いします!



アイドルという価値を提供するために、全力で嘘をつく

アイは子供時代を養護施設で過ごし、現在は売り出し中の若手アイドルとして活躍しています。

幼少期に親からの愛情をまともに受けていないため、人の愛し方が分かりません。

愛し方が分からないから、アイドルとして活動していても、ファンのみんなを心から愛することができない。

しかしその感情の無さを、全力で嘘をつくことで乗り切っています。

ファンに向ける笑顔も作り物だし、投げかける言葉も計算したもの。

態度振る舞い、しぐさ、すべてが嘘づくし。

劇中でもそんな自分自身に対して葛藤している描写がみられます。

しかし私は、そもそもアイドルってそんなものじゃない?と思っていまして。

別に冷めた目で見ているとか、「俺わかってんだぜ」と言いたいわけではなくてね!

そもそも本当の自分として振る舞い、語る言葉がすべて本音であれば、アイドルは成立しません。

人を笑顔にするため、楽しい気持ちにさせるため、たとえ本心でなかろうと、皆が望む自分を演じるのがアイドルです。

一言で言えば、笑いたくなくても笑うのがプロの仕事。

それは本来の自分と別人とは言いませんが、同一でないことは確か。

自身は商品であり、その振る舞いは客へ提供するサービスということ。

だからその本質から目を背けず、むしろファンに喜んでもらうため、笑い方・しぐさ・言葉を一生懸命に研究するほうが、よほどアイドルとして誠実だと思えるのです。

そしてその事実にフタをせず「全力で嘘をつく!」と言い切る姿勢に、逆に納得しました。



嘘をサービスとして提供することもある

世の中、嘘をつくことで成立するサービスはいくらでもあります。

例えばホステスのお仕事。

客であるおじさんの話が面白くなくても、ホステスは楽しそうに相槌を打ちますよね。

それが仕事だからです。

そしておじさんは、そんなホステスの様子に気を良くするでしょう。

でも意外と、おじさんもバカじゃないんです。

ホステスが「楽しそうな素振りをしている=演技している=嘘をついている」ことに、ちゃんと気づいている人もいます。

それを理解したうえであえて指摘せず、楽しく騙されているんです。

お互いが嘘のやり取りと認識しつつ、あえて口にしない。

それも一つのコミュニケーションの形だと思います。

もちろん水商売のすべてがそう、というわけではないですよ。

他にも、夢の国のテーマパークでミッ○ーを見かけても、「着ぐるみ着てる!」とは言いませんよね。

遊びに来た客はそれを理解したうえで「ミッ○ー可愛い!」と言っているんです。

着ぐるみがどうこう、なんて野暮なことは言いっこなし。

夢の国という虚構を作って提供する側と、それに乗っかって楽しむ側。

「一方が全力で嘘をついて、もう一方は全力で騙される」というのも、それはそれで良いと思うんですよね。

アイドルも然り。

アイという少女だけが特異というわけではなく、人ならばそういう側面を持っているものじゃないでしょうか。



万人受けするような綺麗ごとを言うアニメも、悪くはありません。

しかしそれに逆行するかのように、「だって現実はこうじゃん」と言わんばかりの作者さんの強烈なメッセージが、とても印象に残りました。

第二話からは嘘というよりは復讐というテーマになりそうですが、最後まで観るつもりです。

YouTubeで海外の人たちがオーバーなリアクションをしながら観てる動画をなんとなく再生してしまいがちな、最近なのでした。
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