風雲!たけし城の低評価に思うこと

記事
コラム

1986年〜1989年にかけて、「風雲!たけし城」という番組がありました。

ビートたけしが城主を務め、たけし軍団が用意した様々なアトラクションを、参加者が乗り越えていくという形式のもの。

私はその世代ではありませんが、「かつてこんな人気番組があった」ということは知っています。

当時の映像を見て、「こんなめちゃくちゃな番組があったのか」「リアルタイムで見たかったなあ」と思ったものです。

ちなみに私は昭和のテレビ大好きです。

コンプライアンスなんていう言葉が存在しなかった時代は、まさにやりたい放題。今じゃ絶対に放送できないですよね。

まさに古き良き時代。




その風雲たけし城が、この令和の時代にアマゾンプライムで復活しました。

「リアルタイムで観れるやん!」と、とても楽しみにしていたのですが。

いたのですが…。

Amazon上での令和版たけし城の評価は、現時点でかなり低い。5点満点中、平均評価は2.5。

おそらくその理由は『敢闘賞』というルールを後付けしてしまったこと。



令和版たけし城は、本家と同じ様に「国境の壁」というアトラクションから始まります。

ここの難易度は易しめで、100人中93人がクリア。



しかしそれに続く「龍神池」で、なんと全員脱落
96410371844.jpg


残った93人全員が岩場から池に落下して敗退。

制作側としても、これは予想外だったことでしょう。

これに焦ったのか、制作側は「果敢に挑戦したり番組を盛り上げた者に対し、アトラクションをクリアしていなくても次に進めるようにする」というルールを後付けしてしまった。

このルールの名前が『敢闘賞』。

参加者が失敗したとき、敢闘賞をもらえるかどうかに明確な基準はありません。
「もう少しでクリアできそうだったから」という、アトラクションの進捗度ではない。

なんとなく盛り上がったからとか、ここで脱落させるのは惜しいとか、そういった制作側の主観によるところが大きい。

その結果93人全員が脱落してしまったのに、そのうち敢闘賞を適用してもらった人だけが次に進めるようになってしまった。

その数17人。

明確な基準や理由がないまま、なんとなくの雰囲気だけで、93人のうち17人だけがクリア扱いに。

しかもそのあと、それとは別に敗者復活戦も実施。
敢闘賞をもらえなかった残りの76人が挑戦することに。

色々とまずい。



まず龍神池の難易度が高すぎたこと、それ自体も良くありません。
93人全員が失敗する難易度は、さすがにやりすぎた。

しかし重要なのはこの後の対応。



まずかった点は主に3つ。

①敢闘賞によってアトラクションの存在意義が失われてしまったこと

参加者がアトラクションに挑戦できるのは一回だけ、失敗したらその時点で即終了。
このシビアさがあるから、観ている側も手に汗を握るんです。

しかし敢闘賞なんてものを出してしまったから、視聴者側からすれば「どうせミスしても敢闘賞で先に進めるんでしょ」という考えが浮かぶように。

本来緊張感をもって見守るところが、一気にしらけてしまった。

アトラクションの否定は、番組そのものの否定に繋がってしまう。


②参加者に対し、制作側が主観で敢闘賞を適用してしまったこと

参加している人は全員一般人。中には芸人やYouTuberなどもいますが、全員が同じ条件の挑戦者。

にもかかわらず、制作側が「おおよそ番組のため」と思われる理由で、次に進める人とそうでない人を選別してしまった。

どうやってその人を選んだのか、または選ばなかったのか。
この過程が一切説明されていません。

観ている側からすれば「全員落ちたのに、なぜか17名だけ進めることになった」という結果だけを知らされたようなもの。

違和感を覚えて当然。


③普通に敗者復活戦を実施してしまったこと

敢闘賞に選ばれなかった残りの挑戦者は、敗者復活戦に参加することに。

敗者復活戦をクリアすれば、敢闘賞に選ばれたものと同じように再度挑戦することが可能になります。

全員失敗したにもかかわらず17人だけが無条件で次に進むことができ、他は敗者復活戦をクリアという条件付きで進めるように。

製作者の主観で17人だけが優遇されたかと思えば、その一方、公平に敗者復活戦を実施するダブルスタンダード。

製作者による一部の優遇と公平さがごっちゃになってしまい、方針がブレブレ。
これでは何をしたいのか分からない。

「最低限番組を進行できる人数はとりあえず確保したい」という下心が、余計な混乱を生むことに。



以上の理由からアトラクションへの緊張感はなくなり、制作側の運営手腕のずさんさが浮き彫りになる事態に。

平均評価2.5の理由を言語化するなら、こんな辺りでしょう。



ではどうすれば良かったのか。

第二関門「龍神池」で全員脱落することは仕方ないにしても、その後のセカンドチャンスは全員に等しく与えるべきだった。

大事なのは視聴者が納得できる客観性・公平性のある手順を踏むこと。



そのためにはまず、全員を敗者復活戦に回す。

そこで番組進行に必要な人数がクリアできればそれで良し。

人数が足りなければ、失敗した者の中から「あと少しでクリアできそうだった」人から順にクリア扱いとする。

もし同じくらい進んでいた人が複数いれば、第一関門「国境の壁」のクリアタイムや、第二関門「龍神池」でどこまで進めていたかで優劣をつける。

これならば誰からみても納得の選び方だし、特定の人だけを特別扱いする必要はありません。



人間、誰しもミスはあります。

今回みたいに「まさか全員が第二関門で脱落するなんて」といった事態もあるでしょう。

しかし大事なのはその後の対応です。

大人数で何か一つのことを進めるとき、一番大事なのは「納得感」です。

良い結果だった人も、そうでなかった人も、そして視聴者も、全員が「このルールで決まったなら仕方ないよね」と思えること。

そのためには客観的で公平なルール作りが欠かせません。

会社や組織で何かを進めるときでも、この考え方は忘れないようにしたいですね。



残念な点はありましたが、たけし城のセットの気合の入れようや演出は本当にすごい。

なんだかんだ言って令和にたけし城を観られるのも嬉しい。

運営に対する期待は持てませんが、そこはそれ。

ひとつのエンタメとして視聴しようと思います。

多分私は龍神池クリアできないだろうな…。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す