小説「ミトミと私の奮戦記。」(了)◇15歳 さよならミトミ

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◇15歳 さよなら ミトミ

 それはある朝 突然にきた。母から電話で、
 「ミトミちゃんが危篤だよ 」
 『嘘だ!でも、なんとなく予想はしてた・・・』
 「すぐ帰るから」

 電車に飛び乗り 『生きていて』とずっと願ってた。
 後はどうやって帰ったのかも覚えてないくらい、頭の中はパニック。


 だが、玄関に着いた途端、いつものカシャ カシャ、ミトミが駆け寄ってくる音と 、
「ワンワンお姉ちゃんお帰りなさい」の声がハッキリ聞こえた。

 「なんだ生きてるんじゃない。お母さんたら脅かさないでよ」
 私はミトミが危篤を脱したと思い、玄関のドア開けながら いつものように
 「ただいま ミトミ~」
 そう声をかけたが、ミトミの姿は無い。

 慌てて居間に入ると母が、
 「さっき息を引き取った・・・」

 ミトミは、ソファで眠っているように横たわっている。
 まだ、信じられず『寝ているだけだ』そう思おうと、ミトミを抱こうとしたら、

 まだ、温かいがぐったりと生きてる感じがしない。そして触れた瞬間から涙が溢れ出した。

 「ミトミ ~・・・生きてるよね・・・寝ているだけだよね。目を開けていつもみたいに飛びついてきてよー・・・」
 ミトミの体にしがみついたら、さらに涙が止まらなくなった。

 来た時は手のひらに乗るくらい小さかったのに、ついこの間まで姉妹のようにじゃれ合っていたのに・・・この現実をまだ、受け止められない。
 小さい頃から滅多に泣かない私が、人目も気にせず声をあげ号泣した。

 どうにもならないと解っていながら、いつものミトミを取り戻したくてさすり、
 「今日は私が、生(ィ)たんぽになるからサ~・・凍えただけだよね」
 「逝かないでミトミ、逝かないで!」
 『ミトミとの時間がこんなに短いなんて、こんな事ならもっと頻繫に帰って来ればよかった。もっとミトミと会っておけば良かった・・・』
 ただ ただ、悲しくて他のことが考えられない。

 食欲がわかず、両親も私の嘆きっぷりに耐えられなかったのか、
 「二階に行って少し休みなさい」
 父母にうながされ自分の部屋に行ったが、飾ってあったおかっぱ姿の二人の写真を見ると・・涙がとめどなく流れ、いつの間にか泣き疲れて寝ていた。
 でも、朝になってもミトミは来ない。
 「尻舐めでいいから起こしに来て・・・」


 身体は正直、腹は減る水分が足りない。
 そこで食事をとるがおかずを見た途端、
 「ミトミ犬のくせに この煮物好きだったナ。もっと食べさせれば良かったかな。イチゴケーキもあげる。私の分食べていいから・・・」

 TVをつけても
 「この番組一緒に見てたナ・・もうホラー見なくていいから。意地悪しないから、戻ってきて!」

 何をしてもミトミを思い出し、辛くてさらに涙が溢れ出た。
 そしてミトミに触れようものなら、どんどん冷たく硬くなり死を実感して嗚咽した。

 父と母は最初はつられていたが、あまりの私の号泣っぷりに呆れ始め、もらい泣きしていた母が嫌味っぽく
 「私達が死んでもこれほど 泣かないんじゃないの?」
 なぜか思わず「うん」と頷いていた私。


 食べながら話しながらも3日3晩泣き続け、目と顔はパンパンになり、
 「そろそろ会社に行かなきゃ・・・」
 少し冷静になり考えられるようになったのか、それが切っ掛けで泣き止んだ。
 私にとってはかけがいの無いものでも、社会では『犬の死ぐらいで何日も休むな』となるだろう。


 うなずいた事は現実となり、大好きな祖母が死んだ時や父が亡くなった時、体に触れ生温かさで”生きてない”のを感じる瞬間悲しむが、あれほど号泣することはなかったので、やっぱりミトミの死で一生分泣き、涙を使い果たしたのだと思う。

 これ程、悲嘆させたミトミっていったい何だったのか?妹?それ以上だったのか?・・・

 最後に私が帰るまで待ってて出迎えてくれたンだ。今でもあの時のことを思い出すと熱いものが込み上げてくる。


 あるドラマの中で犬や猫、飼われていたもの達が亡くなると、天国の前の虹の橋のところで、愛する人達を待っていると言っていた。
 父が今年逝ったから、天国の前でミトミと落ち合えたかな?   
 母は分からないけど、私が逝くまでは待っててくれないだろう。
 笑いながら父とミトミが、天国の門をくぐる姿を思う。

  さよなら お父さんとミトミ。一緒にいてくれてありがとう。

◇追記  悲しいから・・・?

  ミトミの時の私の悲しみを見た母は
  「二度と犬は飼わない! (拾ってきたのはあなたですけどね)」
  その代わりに猫を拾ってきた。
  それは また、次の話・・・  (了)

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