♪(続)FG440・独論ならぬ独綴 その2

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コラム

- 前編の続き -

♪この時期(=1970年代初頭)の国産アコーステックギターは、希望小売価格を問わず、まだまだ黎明期すなわち要改善点の宝庫でした。
国内トップランナーとされる、このメーカーの商品に関しても、それは一緒でした。

これはあくまで、その後時代と共に設計上のさまざまな改良が施された歴史を、こうして振り返るからこそ言えること。
当時は弾き手も製作者側も、このことに気づいてはいなかったのでしょう。
こんな弾き辛い設定の楽器、昔の人は昨今のギタリストよりも、柔軟な対応に優れていたのかもしれませんね。


♪まず筆者がチェックしたのが、調弦の要の1つである糸巻(ペグ)と、張られた弦を支える重要な役割を担う、細い溝が切られたナットと称されるパーツでした。

ペグは全部一旦外し、ツマミの部分もバラし、清掃から再度組み上げました。
届いた直後は複数のペグが共振(=何らかの異常で不要な振動による異音を発している状態)していました。
幸い木ネジの穴が広がってしまっている箇所は少なく、筆者がまずは用いる、爪楊枝の先端を一緒にネジ込む手法で、緩みを改善しました。

ナット溝にも、これは以前の所有者もしくは販売店(←※こちらの可能性大?)の応急処置のつもりか、説明難の物体で、かさ上げされていた箇所がありました。
もちろん異物は正常な鳴りの天敵ですので、糸を用いて綺麗に除去。
こんなことをせずとも、より適正な設定に持っていくのが、筆者の真骨頂。

coconala_full_0821_21_headstock.JPG
★ 調整完了後にパチリ 一目見ただけでは気づかぬ 要改善点がいくつも

同時期の商品は、6弦12フレット上(※下の画像)で、フレット頭頂部と弦の下部の隙間が4mm近く開いている、大変押さえ辛い設定が一般的でした。
ちなみに当時の世界最高峰のフォークギターとされたM社商品も、出荷時の基本設定は3.0~3.2mm。
昨今は2.5mm辺りが一般向きの適正な設定とされているようですから、近年の新商品は出荷時から押さえやすさに配慮されていますね。

しかしながらここで問題となるのが、本体そのものの設計すなわち、出荷時の組み上げ状態。
この時代の国産品は、ここまで弦高を落とし切れない設計でした。

coconala_full_0821_21_genkou.JPG
★ これは経験が求められる作業 久々でしたが上手くいきました

そこで用いられる奥の手の1つが、アリ溝を掘る対応です。
サドル(=弦の張力とピッチを保つための白い棒状のパーツ)を極限まで下げれば、それだけ張力が失われてしまいます。
これを保つべく、画像では確認し辛いですが、ブリッジと呼ばれる濃い色の土台に溝を掘り、テンション(=張力)を確保することにしました。

coconala_full_0821_21_bridge.JPG
★ これも細心の注意が不可欠の木工作業 慎重に

外観は幾分不自然になりますが、楽器としてのポテンシャルを落とさないためには、このギターにはこの方法がベストであろうと判断しました。

なぜかサドルの下側、溝の部分に意味不明な薄い噛ませが複数枚挟んでありましたが、当然これも除去。
こうして約2.6~2.7mmと、近年の商品に準ずる設定を実現できました。
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coconala_full_0821_21_setup.JPG
★ 素人なりにベストを尽くして

詳しい方であれば驚きの調整、控え目に自画自賛です(笑)。


♪ひと通りの作業を完了から、最後に今一度全体をクリーニング。
随所に汚れがこびりついていましたが、丁寧に拭き取り、一皮剥けました。
最後に調整作業でグダグダになった、納品時の古い弦から、愛用の新しい弦に張り替えれば、とりあえずのセットアップ完了です。

coconala_full_0821_21_back.JPG
★ 前編が表側だったので 今回は裏側 綺麗になりました

現在保有する他のすべての機種に関しても、具体的な作業の内容や程度こそ異なりますが、それぞれに同様の手をかけています。
『買ってきて、そのまま弾いて、楽しいな』 は、筆者にはありません。

そんなこんなの作業を通じ、これまたマニアックな視点からですが、
「う、嘘だろ!?」
良い意味で驚きの発見が、ひとつ・ふたつ・みっつ …

- TO BE CONTINUED -


或 頁生(ある ぺじお)


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