相続登記の義務化と住所変更など

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法律・税務・士業全般
参院本会議で全会一致により可決、成立した法律があります。
所有者不明土地の対策です。
改正不動産登記法、相続土地国庫帰属法です。

今までは相続があっても、登記は任意でした。
そのため、相続登記をしないまま、二次相続、三次相続になっても
ほったらかしのケースがありました。
三次くらいになると、相続人が確定しない、行方不明等の理由で登記できないケースが増えてきます。
登記できないので、売る、貸す等ができなくなります。
個人の問題だけではありません。
公にも影響します。
たとえば、道路の新設です。
用地を買い取り、新たな道路を建設したい場合に問題になります。
所有者が分からないので、買取ができないためです。
または、災害時等に一時的に仮設の住宅などを建設しようとしても、所有者の承諾が得られないことなどがあります。

役所の税務課も困ります。
固定資産税を徴収できないからです。
この現在の問題点を悪用して、わざと登記せずに課税逃れをする人もいます。
完全に不公平です。
さまざまな理由から、法が改正されたり作られました。

相続登記の義務化が始まります。
正当な理由なく、相続登記を怠った場合、行政罰の過料が科されます。
言葉を音読みにすると似ていますが、過料と科料は全く違います。
行政罰が過料です。
ややこしいので、実務上は過料(あやまちりょう)と呼ぶことがあります。
もう一つは科料(とがりょう)、と呼ぶケースもあります。

相続登記の義務化は、不動産実務ではとてもありがたいことです。
所有者が分かりやすくなるからです。
今まではあてになりませんでした。これが大きく改善されると思います。

その代わり、面倒な点もあります。
必ず登記しないと過料が科されること、それと引っ越しが多い人の場合です。
引っ越しと相続登記は関係します。
登記簿上の所有者の現住所が記載されるからです。

自宅程度の所有の場合、相続登記は大きな問題にはならないでしょう。
しかし、頻繁に引っ越しをするケースと、不動産を多数保有している人は
面倒になります。
引っ越しのたびに新住所での住所移転登記をしないといけなくなります。
不動産を多数保有している人で、さらに転勤等で引っ越しが多い人は悲惨です。登記費用だけで随分、支払わないといけなくなるからです。

この程度の問題点については、さすがに参院でも気づいていると思いますが、頻繁に住所移転がある場合等の登記費用の減税等は必要と思います。

土地の場合ではなく、建物の場合で最初の登記時と面積が異なる場合も面倒です。更正しないといけないからです。
以前なら増築が主流だったので、増築登記でした。
ですが、今の時代では家を小さくする減築をする場合もあります。
減った場合も正しく登記し直さないといけません。
火災保険料や課税面積からの税額を正しく知るためです。
地主よりも家主のほうが、この相続登記については気を付けるべきと思います。相続人が把握できるようにしておくことも大切です。

土地の場合は、売却するのであれば境界を確定させるべきです。
特に最近のように細かくなった時代では、確定測量が安心です。

相続の場合、現金ではなく土地や建物で相続する場合、言うまでもなく評価額が重要です。この評価額は実際に売れる価格ではありません。
固定資産税評価額です。
さらに、相続時の評価額の増減も考慮しないといけません。
売れない不動産でも、一定金額以上であれば「現金での納税」が発生します。
現金はない、不動産はある、しかし売れない不動産、というケースはよくあります。売れても実際の価格は低いのに、評価額は高いこともあります。

相続は自分には関係ない、と思っている人も多数います。
実際、相続税対象者ではない、不動産もない、むしろ借金が残っている、ような事例もあります。借金も負の財産です。考えて相続しないといけません。

相続税対象者の敷居が大きく下がりました。
固定資産税評価額がポイントです。
都心部の人であれば、相当数が対象者になります。
納税は現金が基本です。

都心部の普通の物件であれば、物納も可能なことがあります。
この普通の、の条件が厳しいです。
平たく言えば、どんなアホでも換金できるような不動産の場合、しか認められないからです。少しでもややこしい条件がある物件は、物納できません。
軽く考えてはいけない条件になっています。

相続登記の時の書類は、自分で集めて法務局に申請し、自分で行うこともできます。できますが、あまり勧めません。
司法書士が伊達ではないことが、手続きをした人は知っていると思います。
当然ながら、極めて簡単なケースもあります。
その場合は自分でしても良いと思います。

相続登記の時に、全く知らない土地等が出てくることがあります。
これが厄介です。
見たことも聞いたこともない土地、などの場合です。
またはボロすぎて原形をとどめていない建物やすでに取り壊した建物なのに、建物登記だけ残っている場合、です。
今度は滅失登記が必要です。
物理的に壊せば自動的に建物登記が消える、わけではありません。
これを知らない人は非常に多くいます。
個人間で土地売買をし、土地の権利関係が確認しても、まさか建物登記が残っているとは思わない、ことがあります。
新築等をするときに、この滅失していない建物登記が大きく邪魔をしてきます。これは土地家屋調査士に依頼することです。

何を誰に依頼すればよいのか、専門家の名称は知っていても具体的な人を知らない、これが圧倒的に多いと感じます。
その場合、ワンストップで完結できる不動産業者等を知っておくと、とても楽に解決できることがあります。

通常の生活には関係なくても、もし相続があったときに相続人が困らないように、遺言書で物件をすべて記載しておくことが第一です。
遺言書でなくとも、相続人に物件の処分や対策を任せることができる専門家を事前に伝えておくことも大切と思います。転ばぬ先の杖になります。

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