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ココナラブログ
逢瀬 その12
記事
小説
ツキノシヅク
2021/02/18 10:53
※(21) 過去に掲載したものを、改正して再投稿。
【短編集(シリーズ)より】
本文
神津は、大切な得意先の会長の申し出を、断るわけにはいかなかったし、
人妻とはいえ、この様な和服美女と、ご一緒できるのならと・・
「
承知いたしました。
」
と、答えてしまっていた。
美鈴は、呆れたと言った表情で、義父と神津を見比べるが
すぐに、神津のそばに歩み寄り、
「
それじゃあ私、神津さんに思いっきりおねだりします。
」
と言って、これ見よがしに神津の腕を取る。
身近に、着物に炊き込んだ香の薫りを感じて、
妻との出会い以後、忘れてしまっていたモノが、
神津の胸の奥で、うずき始めていた。
島崎は、勝手にしろ。と言った風情で、他の客の方に歩いて行く。
神津は、美鈴と共に、会場内を歩きながら気が付いた。
美鈴は、いつも神津の半歩ほど後ろを歩き、
話しかける度に、振り返らねばならない。
水彩画について尋ねると、
「
父がつまらぬことを申し上げてしまい
申し訳ありません。
」
詫びた後、
実父を失った寂しさから
幼い頃から義父のアトリエに入り浸りで
真似事で、絵筆を取っているうちに覚えたのだと言う。
題材はいつも、庭に咲く花々だった…と寂しく笑った。
油絵にすると、毒々しい程の色彩の花々が、
水彩の透明感によって、清楚に描き取られている。
非凡な才能だと思った。
仕事の打ち合わせまでの、時間つぶしの相手役を
押しつけられた形の美鈴が、気の毒だと思う反面・・
人妻とはいえ、久々に美しい女性と時間を共有出来ることが
神津には、妙に嬉しかった。
続
※この話はフィクションです
#ストーリー
ツキノシヅク
絵描き/コミュニケーション×心理学/講師 / 40代前半 / 男性
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