今回取り上げるのは映画「ライオン・キング」に登場する楽曲"Be Prepared"(日本語版では「準備しておけ」)の歌詞。
フランス語版でしか見られないオシャレな歌詞があるんです!
英語の原曲はこちら。
ディズニー公式が歌詞付き動画を作ってくれてます。ありがたいですね。
注目していただきたいのはこの動画でいう17秒~24秒地点、特に21秒からの一節。
But thick as you are, pay attention
My words are a matter of pride
この部分の歌詞は日本語版では、
馬鹿者供 よく聞け!
俺様の言葉を
となっています。上の段はほぼ直訳。下の段はだいぶ意味が薄くなっています。
英語の歌を日本語に翻訳しようとすると発音に必要な音節の関係で文章が短くなり、伝えられる意味が少なくなるのはよくあること。
歌に乗せることを無視して直訳すれば「俺様の言葉は誇りについての言葉だぞ(=俺様は誇りについて語っているのだ)」といったところでしょうか。
ちなみに、ここでのthickは日本語版で馬鹿者と翻訳されている通り、「愚か」の意味で使われています。ODEによれば"of low intelligence; stupid:"の意とのこと。
thickといえば「厚い」の意味が一般的だと思いますが、こういう使い方もあるようです。
閑話休題。今回の目玉はこの歌詞がフランス語版ではどうなっているか、です。
まずは聴いていただきましょう。(歌詞の解説は後でするので、フランス語を聴きなれていない方もぜひ聴いてみてください)
こちらもディズニーフランス公式チャンネルの動画。ただし元から歌詞がついているわけではないのでご自分で字幕機能をオンにしてください。
さて、先の英語歌詞に該当する部分は
Mais bêtes comme vous êtes, faites attention
Rebelle et lion font rébellion
となっています。上段はやはり英語・日本語とほとんど同じ。
bêteには「愚か」の他に「獣」の意味もあるのでその2つを掛けてるのかなとか、英語だとattention(注意)は「pay=払う」ものだけどフランス語では「faire=作る、する」ものだという違いがあるんだなとか、この上段だけでも気になることはありますが今回の本筋では無いのでとりあえずスルー。
面白いのは下段の歌詞 "Rebelle et lion font rébellion"。
直訳すると以下の足し算を表してることになります。
「Rebelle レベル=反乱者」+「lion リヨン=ライオン」=「rébellion
レベリヨン=謀反」
なんてオシャレなんだ!!
兄王に対して謀反を企てるスカー。反乱者でありライオンでもある彼の口から出てくる超オシャレな足し算!
フランス語の音と音を組み合わせもう1つの単語を導くこのセンス!!(レベル+リヨン=レベリヨン)
何よりも凄いのはこの超オシャレな歌詞がどこからともなく現れてるところですね。元となった英語版にはこの歌詞に該当する歌詞がどこにもないわけです。
一体どうやって思いついたんでしょう。本当に凄まじいセンスの塊としか言い様がありません。
フランス語では足し算は今回取り上げた歌詞と同じように"2 et 3 font 5"とする方法の他に、"2 plus 3 font 5"、"2 plus 3 égale 5"などいくつか書き方がある模様。
etは「と、&」の意味、plusは記号の+です。
それぞれ直訳するなら"2 et 3 font 5"は「2と3が5を作る」、"2 plus 3 font 5"は「2+3は5を作る」、"2 plus 3 égale 5"は「2+3は5に等しい」といったところでしょうか。
どれも数式の「2+3=5」を表しています。
なので"Rebelle et lion font rébellion"は「反乱者+ライオン=謀反」となるわけです。